広州青年交響楽団 創立10周年ツアー上海演奏会 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

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日時:2021年7月30日19:30~

会場:上海交響楽団音楽庁

指揮:景煌

演奏:広州青年交響楽団

ヴァイオリン:高参

 

曲目:

R.シュトラウス:歌劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」序曲

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64

李海鷹:交響序曲「中国1921」

陳怡/周龍:賽龍奪随想曲

ガーシュウィン:歌劇「ポーギーとベス」

感想:

 広州を拠点にするユースオーケストラの創立10周年を記念するツアーの上海公演の演奏会。

広州交響楽団の下部組織であり、演奏家の育成を目的として設立されたようで、オケの演奏者を見てもほとんど学生のような顔ぶれである。

 指揮者は広州音楽監督の景煌さん(女性)である。

 さて一曲目のマイスタージンガーの演奏だが、ドーンと音が塊のように出てきてしまい、かの曲にイメージするような煌びやかな音の色彩感が塗りつぶされてしまっているような印象。

 もっともこの原因は演奏側というより指揮者の問題である。

 かの指揮者は音にニュアンスをつけたりバランスをとったりするようなことは求めていないようで、楽譜に忠実に、メトロノーム的な正確さを求めて演奏させているように映った。

 当然のことながら、音楽的な歌いはおろそかになり、オケ側の演奏技術不足は感じなかったが、音楽的には物足りない演奏になった。

 2曲目はメンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルト。

 ソリストは、高参さんというヴァイオリニストで見た目から推測すると30代半ばくらいの男性の方である。

 演奏が始まると、派手さや表現力の強さは感じないが、堅実な演奏を聴かせ、それなりの歌いもある。

 オケ側は相変わらずメトローム的な演奏に聴こえるが、ソリストの存在感がその平板さを打ち消して、それなりの演奏の形になっていた。

 まぁソリストのパッションが弱いため、感銘を受けるには至らないが、出来としてはまあまあであった。

 休憩を挟んだ後半の曲は、中国人作曲家の曲で、1921の年号がついており、中国共産党の創立年であり今年の創立100年を記念する曲のようである。

 実際の曲を聴くと、いかにも20世紀の混乱期を表すような、軍隊的なメロディのリズムを細かく刻む曲であった。

 こういった曲だと、この指揮者もオケの演奏も非常に活きるといった感じである。

 ひょっとすると中国の演奏家は、欧米の有名な曲を上手に演奏するより、こういった自国の作曲家の音楽を正確に演奏することが求められているのかもしれない。

 そう考えると、前半の欧米曲のメトロノーム的演奏も合点がいく。

 

後半2曲目の中国人作曲家の曲も、闘争心を煽るようなやや重めの曲である。

 ソ連時代のショスタコーヴィチのような雰囲気があり、打楽器群がバカバカと活躍する。

  こちらも指揮者もオケも結構はまっていた。

 西洋のオケがこの曲を演奏するのかも聴いてみたい気もするが、やはりこの中国的演奏が正解なのかなという気がする。

 

 そして最後が「ポーギーとベス」でガーシュウィンのオペラからの抜粋演奏である。

 この曲については、それなりオケ側が頑張っていたと思うが、前半の現象が再び現れてしまう。

 この曲は本来、アメリカンのジャズの要素や、西部劇的な古い時代の匂いがするメロディなど、聴かせどころがそこここに散りばめられているはずなのだが、そういった雰囲気が伝わってこないのである。

 ひょっとするとこの指揮者はジャズを聴いたり、西部劇雰囲気を全く知らないのではないかと思えるほど、その雰囲気は醸し出されなかった。

 そんな雰囲気の中で演奏が終わる。

 その後、3曲ほどアンコールが行われ、ウエストサイドストーリーのシンフォニックダンス?ではノリノリで演奏していたが、こちらはちょっと興醒めしていた。

 故に会場の拍手が終わる前の早めに会場を後にした。

 中国のオケの物足りなさの理由を知った夜であった。