張亮指揮上海フィルハーモニー管弦楽団 ブルックナー交響曲第1番 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

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日時:2020年1月10日19:30~

会場:上海交響楽団音楽庁コンサートホール

指揮:張亮

演奏:上海フィルハーモニー管弦楽団

曲目:

ベートーベン:「コリオラン」序曲 作品62

シューマン:四つのホルンとオーケストラのための音楽会作品ヘ長調 作品86

(Hrn:日高剛、鈴木優、顧総、鄭嘉瀚)

ブルックナー:交響曲第1番ハ短調

感想:

2020年の年明けて一発目のコンサート。

まあウィーンフィルのニューイヤー・コンサートとかはテレビ中継では見たのだが、ライブはこの日が一発目で、なんとブルックナーの交響曲第1番がメインプログラムになり、普段でも耳にしないこの曲がスタートとは何とも今年という年の特殊性を感じる。

 

 私個人としても、この曲は録音では聴いたことがあってもライブは初めてである。

  オケ側の姿勢も特別で、この珍しい曲を売るのか永久保存するのか分からないが、テレビカメラがなんと7台も入っており、マイクもオケの中のスタンドや残響音を拾うための吊りマイクが何組もセットされていた。

 

 さて、一曲目はベートーベンのコリオラン序曲。

 この日の指揮者の張亮さんは、結構若いが中国人指揮者の中ではかなり柔軟な指揮を見せる指揮者で、前回マーラーの悲劇的でも悪くない指揮を見せていたようにこの日も緩急自在にオーケストラを操縦し、悪くない音楽を聴かせていた。

 まあ音のキレという意味ではもう一段階上のものを求めたい部分はあったが、不満が残るような演奏ではない。

 歌うべきところは歌えており、メリハリの効いた演奏である。

 

 ただ、スタートからゴールまで一貫した流れを生み出せていたのかというと、まだまだそこまでの構築力には至っておらず、今後の演奏に期待したい演というところ。

 

 続いてシューマンの4つのホルンとオーケストラのための協奏曲的な作品。

 ホルン奏者がズラッと、舞台前面に並び、一人はこのオケの首席奏者の中国人、また2人は日本のオケからの日高剛さんと鈴木優さんの客演の男女1人ずつの奏者が演奏した。

 で、曲は華々しくファンファーレ風の演奏からはじまる。

 ただその出だしの演奏は格好よかったものの、それ以後はどうもまとまりがないよう印象だった。

 そもそもホルンという楽器が音色を合わせずらい楽器というのもあるが、それにしても寄せ集めで演奏している感が否めなかった。

 音色を聴く限り、それぞれ個人奏者としてはそれなりの技術をもっているようだがアンサンブルとしては苦しく、却ってそれを支えるオケ側のまとまりが際立つ結果となった。

 恐らくこの曲は、普段から年中一緒に演奏しているような、よほど息の合った4人が集まって初めて成立するような曲であり、このメンバーではちょっと苦しい印象である。

 ちなみに、演奏終了後にアンコールが入ったが(曲名は不明)、まだこちらのほうが音楽としてまとまっていた印象だが、やはり練度不足は否めなかった気がする。

 

 さて、後半はメインのブル1である。

 指揮者がよく勉強しているようで、ブルックナーらしきニュアンスをたっぷり持った弦の刻みでスタートする。

 メリハリのある指揮ぶりは前半同様に続いており、ブルックナーらしきニュアンスを持ったサウンドが繰り広げられる。

 ただ、私自身のブル1の経験値が浅いのもあって、ところどころ聴かれるブルックナーっぽくないイメージの音が、作曲家自身の若さからくるものなのか、指揮者の力量によるものなのかは判別できずにいた。

 この指揮者ならブルックナーの語法を把握していているので、作曲家後期の交響曲もそれなりに良い音楽になるなという印象はあるが、もう少し、個々の弦や管の音色を際立てさせてもよかったのかなという部分もあった。

 また金管が吠えるような部分では音が混濁してしまい、スッキリと整理されていなかったような印象である。

 

 で第1楽章が終わると、スッキリした終曲のため客席から拍手が起きてしまう。

 聴衆の知識不足とこの曲のマイナー度合いからくる反応ではあるが、そのくらい悪くない演奏であったことも確かであった。

 第2楽章のアダージョは、がこの日の前半のプログラムで演奏されたベートーベンやシューマンの時代の匂いが色濃く残る曲調で、この曲が明らかに後期の交響曲に至る前段階の曲だというのがよく分かる。

 ただ聴衆側が集中力を保てないのか、途中で席を動く人とかが多く目につき、こちらもそのたびに集中を中断させられてしまい、音楽を十分楽しむことができなかった。

 

  第3楽章はブルックナーらしきスケルツォだが、くどいくらい同じ力強い旋律が4~5回登場する。

 その分だけアンサンブルは揃ったというか、結構な熱演だったような気がする。

 一応楽章の最後の部分で変化があったが、この交響曲が一部で習作扱いされるのはこのあたりに原因があるのかなという気もする。

 

 そして第4楽章は、9番や8番を彷彿させるような力強い始まり方をするが、メロディの練度という意味ではまだ青いというか、後期の交響曲に見せるような凄みのような世界は流石になかった。

 ただ演奏としては結構まとまっており、それなりに満足度の高い仕上がりだったような気がする。

 またオケ側も各メンバーがかなり気合が入っていた演奏だったようで、終曲後に各パートのメンバー同士が形式的でない握手を交わす姿が随所に見られた。

 他のオケでも終演後に握手を交わしている場面は良く見られるが、結構儀礼的というか形式的に見える場合が多いのだが、この日の握手はやり終えたという充実感の表情が見えており、ハグをしているメンバーもいたのである。

 まあ、それだけ珍しい曲でもあり、結構苦労した曲だったのだろう。

 こちらとしては感動というほどの感想は無かったが、新しい1年に挑戦するという意味の最初のコンサートとしては満足はしており、そう捉えて印象を気持ちに残すことにした。