アジアユースオーケストラwith服部百音 上海公演 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海生活の合間に聴いた音楽や見たスポーツなどの記録を残します。

日時:2019年8月10日19:30~

会場:上海東方芸術中心コンサートホール
指揮:リチャード・ポンチョウス
ヴァイオリン:服部百音(Moné Hattori)
曲目:
リムスキーコルサコフ:スペイン奇想曲
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調
リムスキーコルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

 

 

感想

アジアユースオーケストラ(以下AYO)はアジアの優秀な音楽家を育成するために設けられた非営利団体で、組織は常設だがメンバーは毎年オーディションで選ばれるサマースクールのようなオーケストラ。

 アジアの音楽家育成ということで、授業料は徴収していないようで、各国の文化予算や寄付などから賄われているのではないかと察する。

 

 参加者は中国、香港、台湾、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなど東南アジアから幅広く参加し、世界的な有名なオーケストラ奏者の指導を受けられ、その総仕上げがこのアジアの都市をめぐるコンサートとなるようだ。

 従って、AYOメンバーは毎年ほぼ総入れ替えで同じメンバーはほとんどいないと思われる。

 もちろん日本人も参加しており、メンバー表を見ると2割くらいを占めている。

 

 さて、この夜は巨大台風接近にも関わらず強行されたコンサートとなった。

 この日のプログラムを見るとやはり教育目的を意識したような曲で組まれている印象。

 スペイン奇想曲は様々な楽器のソロが登場する曲で知られるが、各パートの首席となった奏者が次々とソロをとって見せ場を作っており、各パートを可能な限り平等に扱うとともに、ソロを演奏する力求めるといった、まさに教育的な配曲である。

 ホルンがややおっかなびっくり吹いていた印象だが、そのほかは堂々とソロをこなしていた印象で、バランスとかはまだ完ぺきとは言えないものの将来的には期待を感じられる。

 特に個人的にはイングリッシュホルンの音色は気に入って、出番のない時間のしぐさなども本人の真っすぐな性格が表れていて、好感が持てた。

 メンバー表で確認するとオーボエの女性はいずれもEgami Hazuki、Shimizu Kanaとなっていたのでどうやら日本人奏者のようで、イングリッシュホルン奏者はこのどちらかのようである。

 ところで、このAYOのオケは基本編成としては2管編成のようだが、木管などは倍の人数が入っており、まるで4管編成レベルの規模に膨れ上がっており、その分だけ音には迫力がある。

 上述のイングリッシュホルンも通常はオーボエの2番が持ち替えになるのだが、並びとしては3番か4番のような位置で演奏していた。

 このように人数が多いことも手伝って、フォルテッシモの部分では非常に迫力があって若者らしい活力のある演奏になったが、深みを求められるところでは逆にバランスが取れず苦労している様子だった。

 

 で、2曲目はブルッフのヴァイオリンコンチェルトの1番で、日本の服部百音さんがソロを演奏した。

 かの「銀座カンカン娘」や「青い山脈」などを作曲した作曲家服部良一さんのひ孫とのこと。

 まだ20歳になるかならないかで非常に若いが、気品があって力強い演奏はとても引き込まれる。

 派手ではないがきちんとした華もあり、今回はオケ側のサポートがやや不安定に感じたものの(致し方ないが)、堂々とした弾きっぷりでこの曲をしっかりと弾き通せたと思う。

 (実は私の席からだと指揮者に被ってしまい、完全には見えなかったのだが)

 圧巻だったのは、ソロのアンコールの曲で、ちょっと曲名は分からなかったが、彼女の奏でる音に魅了され、全くもってお見事というほかなかった。

 将来が楽しみなヴァイオリニストである。

 

そして、後半はシェヘラザード

欧米とは地理的な距離を置くアジアの青少年奏者が完成させる音楽として、中東アジアのオリエンタルな匂いのするこのシェヘラザードは彼らが国際的に活躍するために大事な曲目ということなのかも知れず選択されたのかも知れない。

 

 さて実際に演奏が始まってみると弦セクションにややばらつきが感じられ、管のソロなどもややバランスを欠いて飛び出しすぎるのではないかと思えるところあったが、音色はそれなりに説得力があった。(ハープは音が硬かったが・・)

 各セクション同士の掛け合いなどは、指揮者が意識したのか意図的にテンポを落としているような雰囲気が見えたが、遅い分だけ却ってリズムを合わせること難しくなっている様子が伺えた。

 まあテンポを上げてノリで乗り切ってしまうことは簡単であろうが、教育的オケならではの対応で今後彼らがいろんな指揮者に遭遇することに備えて、敢えて難しい演奏要求を課していたのかもしれない。

 

 ところで上述のイングリッシュホルン奏者は、この曲では途中まで出番がなく、じっくりと出番を待っていた。

 演奏前には、オーボエ奏者同士で、楽器同士の先っちょをグータッチのごとく、当てて、「頑張ろう」の確認をするような可愛らしい姿も見せていたため、かなり気に入ってしまい注目して見ていたのである。

 こうやって奏者個人に注目して演奏を聴くとこちらも集中力が保てるし、この日は聴衆が台風のおかげで少なかったこともあって(定員の半分?)ということもあって、非常に集中しやすい環境だった。

また演奏側も雑音が少ない分じっくり力が入った気がする。

 ただ、このように各楽章がじっくりと教育的要求で組み立てられた演奏になっていたため、本来指揮者側から求められる全体を通しての統一性は二の次になっていたような気もする。

 とはいえ、全体として活気のあるエネルギッシュな演奏になっており、台風がもたらしたパワーなのかもしれないが元気をもらえたという気がする。

 今後彼らが世界中で活躍することをぜひ期待したい。