キヤベツ
冬の朝の湿った畑の黒い畝に
のびのびと葉を開いたキャベツたち
濃い緑の葉を土の上に広げ
ゆっくりと陽光を浴びる
おそらく結球不良
食卓に上がることはない
君たちをキヤベツと呼ぶこととする
まるで地面に咲いた大輪の緑の花
これが本当の俺たちと言わんばかりに
その葉の上を水玉が滑る
霜が集まりこの上ならば
私たちは立って丸みを帯びれると
キヤベツの葉の上で踊って光って
土に落ちた途端に黒く染みて消えて
中には冬枯れの老いたキヤベツ
葉の先は崩折れ萎れ
茶色く湿って垂れ下がり
穴が空いては風が通り抜け
霜をまといて垂れ下がり
そのキヤベツたちの間を
朝日の平行線が走る
誰もどうしようもなく
畑が最も美しく輝く時
キヤベツの長い影を照らして
人に噛み砕かれなくとも
トラクターの歯に砕かれ
やがて土に還る冬のキヤベツたち
自分たちもわかっている
開いて咲け 春の訪れを聴く日までは