EXTRAな自由 | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

 

セルフ・ライナーノーツ的な楽曲解説の最終回。

アルバムの最後の曲、「Extra Freedom」について書きたいと思います。

 

この曲のタイトルは、僕の会社名です。

 

自分の会社の名前を、曲のつけるアーティストってそんなにいないと思います。

 

社歌!?

 

なんて冷やかされたりもしてますがw、このExtra Freedomは、社名である以前に、僕の座右の名というか行動の指針なんですよね。更に大きな自由、本当の意味での自由を追求したい、探求したいという想いがあるんです。

 

自由は状態のことだと思われがちですが(勿論、身体的自由、発言の自由、思想の自由はとても大切です)、しかし、そうした自由が確保されているにも関わらず、「そんなのは無理だ」とか「やっても意味がない」と考え、発想=自らの可能性に蓋をしてしまう人が世の中には多いと思うんです(僕の勘違いならいいのですが)。いや、僕自身が、そうしたネガティヴで弱気な気持ちに負けてはいけない、自ら自分を囚われの身に追い込むようなことはあってはならないと考ている訳です。つまり、人間らしく生きる権利としての自由に加えて、可能性=更なる自由に僕は賭けてみたいんです。

 

例えば、楽器も弾けない、譜面も読めない人間が曲を書くなんてことができるのか?DJがミュージシャンと一緒にバンドを組んでいいのか?50歳のおじさんにとって、若者にも聴いてもらえる現代的なジャズの表現が可能なのか?等色んなハードルがありました。

 

でも僕は、それらを乗り越えてKYOTO JAZZ SEXTETを結成し、『UNITY』を作りました。やりたいことをやる。これもまた僕にとっては、"自由"そのものなんですよね。

 

ちなみに、この曲、コード進行がPharoah Sandersの「You've Got To Have Freedom」に似ているという指摘もあります。実際に栗原健もちょろっとそのフレーズ吹いてますしね。でも、意識した訳じゃないんです。僕が思いついた2つのホーンのフレーズの後半に、デモ制作の際にマニピュレーターの池田憲一が、「You've Got To Have Freedom」のコードを付けたんです。勿論、Pharoahさんには多大なる影響を受けています。しかも、「You've Got To Have Freedom」は僕がこの世で一番好きな踊れるジャズですし、DJで一体何回かけたか判りません。

 

でも、この曲は単なるスピリチュアル・ジャズではないのです。

2つあるホーンのフレーズの前半に付いているコードは、むしろ「さくらさくら」をモチーフにしているんです。つまり、アルバムのコンセプトでもある"スピリチュアル・ジャズと和ジャズに両翼を拡げるイメージ"を実現する為に日本の伝統的な音楽のエッセンスを敢えて注入したのです。

 

それだけではありません。ジャズをサンプリングしたヒップ・ホップに触発されているんですよ。それはBeatnutsの「Props Over Here」。Donald Byrd&Booker Littleの「Wee Tina」をサンプリングしたヒップ・ホップ界の伝説的名曲は、僕が20代の頃のフェイヴァリット。ジャズをサンプリングしたヒップ・ホップを下敷きにし、そこに和の要素とスピリチュアル・ジャズを重ね合わせることでジャズの現代化を目指したのです。

 

これは、1stアルバム、『MISSION』に収録されたHank Mobleyのカバー、「Up A Step」の発展系でもあります。単なるヒップ・ホップ・ビートの導入というよりも、そのサンプリング・ソースでもあったジャズが、今、どうあるべきなのか?という問いに対する自分なりの答えでもあるのです。

 

かくして、アルバムの最後を前作の延長線上にある曲を配し、更に進化した姿を提示することになったのです。

 

確かに、「Extra Freedom」は、社名の付いた妙な曲でもあります。そして、Pharoah Sandersへのアンサー・ソングでもあります。しかし、同時に、前作から引き継がれる新主流派の現代化とジャズの更なる発展を試みようとした曲でもあるです。その全ての融合が、"Extraな自由"なのです。

 

これで全曲解説は終了です。録音された演奏を楽しんで頂くのが筋とは思いつつも、僕の想いや、その曲の背景を知って頂くことで、それぞれの曲への興味や愛着が少しでも深まればと願っています。50歳で初めて挑んだ"ジャズの作曲"。皆さんにその意気込みが伝わりますように・・・。