『会報 2016年6月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より
日本では労働組合の数も活動も減少しており、かつてのような組織的・大規模な組合運動は見られなくなりましたが、また最近、労働組合法に関係する場面が生じるようになって来ているようです。それは、近年の契約社員、派遣社員、パート労働者などの不安定な雇用環境が大きく影響していると考えられます。今回、労働組合法の基礎知識を解説した記事が会誌で特集されていましたので、その要旨をまとめてみました。
今回は、団体行動についてです。
1.団体行動の意義
憲法は労働者に対し、団体権、団体交渉権と並んで、団体行動権を保障しています。団体行動権とは、団体行動によって企業に圧力をかけることを承認することにより、労働組合が企業と対等な立場に立って団体交渉を行うことを目的にしています。
団体行動権が憲法によって保障されていることにより、3つの法的効果があります。
①刑事免責
労働者の集団的な行動が刑事罰の構成要件に該当するとしても、処罰の対象になりません。
②民事免責
労働者の集団的な行動によって使用者に損害を与えたとしても、使用者に対する損害賠償責任を負いません。
③不利益取扱いの禁止
労働者が正当な団体行動をしたことを理由に、使用者が解雇や懲戒処分などの不利益な取扱いをすることは違法・無効とされています。
2.団体行動の正当性
(1)争議行為
団体行動は“正当性”のあるものが法的保護を受けられるとされています。団体行動の1つに争議行為があります。これは、業務の正常な運営を阻害する行為を言い、ストライキ、サボタージュ、ピケッティングなどがあります。
(2)争議行為の正当性
“正当性”があるものであるか否かは、団体交渉のための圧力行為と言えるかが、主体・目的・手続・態様という4つの点から判断されます
①主体
争議行為は、団体交渉の当事者としてなりうる者が主体となって行うことが必要です。
②目的
団体交渉対象となるべき事項(義務的団体交渉事項)に限定されます。
③手続
いったん団体交渉を開始した上で行われる必要があります。団体交渉前のストライキのように、団体交渉を経ないで行われる争議行為については、正当性は認められません。
④態様
いかなる場合も、暴力の行使を伴う争議行為には正当性は認められません。
ストライキ中の賃金はどうなるか...法はそこまで保障はしていませんので、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、賃金は支払われないというのが原則になっています。確かに、ストライキしながら賃金ももらえるとなると、何をやったことによる賃金か、分からなくなってしまいますね。