『会報 20165月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

日本では労働組合の数も活動も減少しており、かつてのような組織的・大規模な組合運動は見られなくなりましたが、また最近、労働組合法に関係する場面が生じるようになって来ているようです。それは、近年の契約社員、派遣社員、パート労働者などの不安定な雇用環境が大きく影響していると考えられます。今回、労働組合法の基礎知識を解説した記事が会誌で特集されていましたので、その要旨をまとめてみました。

今回は、前回に引き続いて労働協約についてです。

 

1.労働協約の効力拡張

(1)事業場単位の一般的拘束力

事業場の常時使用されている同種の労働者の4分の3以上の労働者が同じ労働協約の適用を受けるに至った場合は、事業場単位での一般的拘束力を認めています。

 ・常時使用される同種の労働者

常時使用される労働者にあたるかについては、実質的に判断すべきものとされています。日雇い労働者の形式をとっていても、反復更新により常時使用されているのと同等の状態であれば、常時使用と見なされます。

同種性の判断基準については、労働協約の趣旨や協約当事者である労働組合の組織等の関連において決定することが相当とされています。

 ・4分の3以上の労働者

この“4分の3以上”とは、労働協約を締結した労働組合の組合員である、本来の適用対象者であると解されています。当該一般的拘束力によって拡張適用を受けた者は含まれません。適用前で4分の3以上を満たす必要があります。

 ・不利益な内容の適用

拡張適用された場合の効力については、労働協約のうち規範的効力に限られます。有利不利を問わず、拡張適用の対象者に及ぶと解されます。しかし、著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは拡張適用しないとされています。

 ・少数組合の組合員

4分の1未満の少数者によって組織される組合員に適用されるかどうかについては、多数組合の団体交渉権と同等に少数組合にも保障されていることなどから、拡張適用は被的する見解が有力のようです。

 

(2)地域的な一般的拘束力

同じ地域において従業する同種の労働者の大部分が同じ労働協約の適用を受けるに至ったときは、厚労大臣または都道府県知事は、他の同種の労働者及び使用者もその労働協約の適用を受けるべきことの決定をすることができるとされています。

 

 

次回は、労働協約の終了についてまとめます。