『月刊社労士 20164月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

障害者の権利擁護に向けた取り組みは国際的に進展して来ており、国際連合においても、 “障害者は権利の主体であって、差別の禁止により障害者の権利を実現する” という考え方が採択されています。わが国でも国際連合の権利条約を批准し、「障害者雇用促進法」と「障害者差別解消法」が定められました。先月はこの2法案の概要を記事にまとめましたが、今回、会報誌でも再度解説の記事が載せられていましたので、義務規定と努力義務規定に整理して、その要旨をまとめてみました。

 

1.障害法の経緯

国際連合においては、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約が採択されています。

わが国では障害者基本法(平成16年改正)において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され、さらに上記の国際連合で採択された条約の趣旨を踏まえて、社会障壁に関する定義を行ない、基本原則を規定しました(平成23年改正)。

障害者差別解消法は、障害者基本法の差別禁止の基本原則を具現化するものです。障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的としています。

また、障害者雇用促進法は雇用に関する分野における障害者の雇用の促進等に関して規定された法律で、障害者差別禁止等に係わる所要の措置が講じられました(平成28年施行)。


①障害者に対する差別の禁止

雇用分野における障害を理由とする差別的取扱いを禁止する。

 

②合理的配慮の提供義務

障害者が職場で働く際の支障を改善する措置を取ることを事業主に義務付ける。ただし、事業主に過重な負担とならないような範囲とする。

 

③苦情処理・紛争解決援助

雇用する障害者からの苦情を自主解決させる努力義務を事業主に課し、都道府県労働局等による紛争解決制度も整備する。

 

 

次回は、障害者雇用促進法の各項目についてまとめます。

 



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