ソチ五輪というより平昌五輪で活躍する選手たち | フィギュアスケート研究本

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すでに始まったソチ五輪への序章 ロシア、米国からメダル候補続出

フィギュア・世界ジュニア女子シングル


2012年3月8日(木)

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左から、銀メダルのゴールド(米国)、優勝したリプニツカヤ(ロシア)、銅メダルのソトニコワ(ロシア)。フィギュア大国の層の厚さを見せつけた【森美和】

 なんとロシアと米国の、ジュニア層の厚いことか――。世界ジュニア選手権(2月27日~3月4日)がベラルーシの首都ミンスクで行われ、ロシアの13歳ユリア・リプニツカヤが優勝。米国の16歳グレイシー・ゴールドが2位。そして昨季女王の15歳アデリナ・ソトニコワ(ロシア)は3位となった。リプニツカヤのマークしたジュニア女子の史上最高点187.05点は、各国の五輪青写真を変化させるのに十分な点数だった。

■「アイロン・ウーマン」の誕生とロシア女子の激戦化

「彼女はアイロン・ウーマン(鉄の女)。どうやったらあんなにミスしないのか、彼女に教えて欲しいものだわ」

 3位になったソトニコワが、すべての要素をノーミスでこなしたリプニツカヤを評して口にした言葉だ。シニアに上がったソトニコワは今季、ジャンプのミスが目立つ。今大会でも、ショート3位になるとショックのためにテレビインタビューを拒否。銅メダリストとなっても笑顔はなく、苦し紛れに答えたのはこんな風に自分を卑下する言葉だった。

 ソトニコワがこんなにも苦しむのは、ロシア女子にとって2014年ソチ五輪の代表選考が、もう実質的に始まっているからだ。自国開催の五輪をめざし、メダル候補級の選手が雨後のたけのこのように登場している。

 昨季世界ジュニア銀メダルのエリザベータ・トゥクタミシェワは、今季のグランプリ(GP)シリーズで2連勝し見事なシニアデビューを飾った。ニコライ・モロゾフに師事するアリーナ・レオノワはGPファイナルで3位。ジュニアのポリーナ・シェレペンはジュニアGPで2連勝。ロシア国内選手権では、ソトニコワが意地の優勝を果たしたものの、今年1月のユース五輪ではトゥクタミシェワが金、ソトニコワが銀。ロシア女子たちは国際大会の場で、壮絶な国内ランキング争いを繰り広げている。

 そこに、さらなる「五輪金メダル候補」として舞い降りたのが、リプニツカヤ。ソトニコワの警戒心も無理はない。五輪出場枠は3枠しかないのだ。

■リプニツカヤ、驚異の180度超え開脚 高難度のジャンプ力を示したソトニコワ

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今季ジュニアで無敗のリプニツカヤ(ロシア)。今大会でもシニアに匹敵する高得点をマークして優勝を飾った【森美和】

リプニツカヤの演技は圧巻だった。「ダブルアクセル+トリプルトゥループ」の流れの良さと安定感は、他の選手と一線を画す。さらに特筆すべきは、子どもの頃に新体操を習っていたという驚異の柔軟性だ。180度以上の開脚が可能で、ビールマンスピンもI字スピンも、体と脚がピタリとくっつき一本の棒になって加速する。それはまるで人間ではない未知の物体で、何人ものジャッジがスピンに最高評価の「+3」をマークした。

「本当に理想的な演技ができました。まさか優勝するなんて思っていなかったので、得点を見てもボーっとしてしまいました。まだ取材を受けるのは慣れていないし緊張します」とシャイな一面を見せながらも、「夢はソチ五輪に出場すること」と言い切った。

 もちろんソトニコワの演技も素晴らしいものだった。ショートでは「トリプルトゥループ+トリプルトゥループ」を、フリーでは難度の最も高い「トリプルルッツ+トリプルループ」を成功させた。スピードも昨季より増して、シニアの滑りへと変化している。

「ミスはあったけれど、私は難度の高いジャンプがちゃんとできるということは証明できました」とソトニコワ。トリプルアクセルの可能性について聞かれると、リプニツカヤとゴールドが「まだ全然」と答えたのに対し、「練習では降りたわ! ちょっと回転不足だけど」とアピールする場面も。ロシアの国内女王には、危機感が見え隠れした。

 2人の影で注目が低かったポリーナ・シェレペンも、ショートはミスがあったものの、フリーは「トリプルルッツ+トリプルトゥループ」と「トリプルサルコウ+トリプルトゥループ」を成功し4位、総合6位につけ、存在感を示した。

■すい星のごとく現れた米国の大本命 パワージャンプで飛躍

さらに大会の台風の目となったのは、米国の16歳、ゴールドだ。ショートでは猛スピードの助走から踏み切るダイナミックな「トリプルフリップ+トリプルトゥループ」を成功し、身体能力の高さを示した。さらに本領発揮となったのはフリー。男子顔負けの雄大な「トリプルルッツ+トリプルトゥループ」は最高評価の「+3」を出したジャッジがいたほどで、「ダブルアクセル+トリプルトゥループ」もほとんどのジャッジが「+2」評価。どちらのジャンプも、バンクーバー五輪のキム・ヨナ級の高評価だ。

 最後までスピードも落ちず、観客の心をグングンと引っ張っていく演技。あっという間の3分40秒でフリー2位につけ、総合171.85点で銀メダルを獲得した。「まさかこんな素晴らしいシーズンになるなんて思いませんでした。本当に今日の演技は、自分を褒めてあげたいです」。

 7歳でスケートを始め、昨季までは国内大会にしか出場していなかった。昨夏の国内大会で好成績を残し、ジュニアGPの派遣が決定。その、人生初の国際大会でいきなり172.69点をマークし優勝したのだ。遅咲きともいえるゴールドは、すでに身長163センチで体が出来上がっている。これから成長してジャンプが崩れるという不安要素は、他の選手に比べると少ないのも魅力だ。

 表彰式。銀メダリストは、先に表彰台に立っている金メダリストにハグを求め称賛するのが習わしだ。しかしゴールドは何もせず2位の台に乗った。銀メダルが不満という行動ではなく、それだけ国際大会に慣れていない証拠だった。

「今まで五輪なんて考えたことなかったけれど、ソチ五輪に出られるなら出たいわ」。怖いもの知らずの16歳が、米国女子の壮絶な五輪枠争いに加わった。

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米国のゴールドはジュニアGP1戦のみの出場だったが、高い能力を見せて銀メダルを獲得した 【森美和】

■それぞれの光を放った日本ジュニア 13歳の宮原が大健闘の4位

 日本は、13歳の宮原知子(関大中・高スケート部)がノーミスの演技で4位(157.78点)。山田満知子の門下生、佐藤未生(グランプリ東海クラブ)は12位。右足をけがしていた庄司理紗(西武東伏見FSC)は20位。それぞれ収穫のある戦いぶりだった。

 最高の演技を見せたのは宮原。フリーでは「トリプルルッツ+トリプルトゥループ」と「ダブルアクセル+トリプルトゥループ」を成功し、技術面の高さを示した。身長143センチと小さいが、今後スピードをもっとつけて演技のダイナミックさが加われば、演技構成点(表現面)の点数も上がる。「すごい選手ばかりの中で4位に入れたのがうれしいです。3回転+3回転をどうしても跳びたかったので気合で頑張りました」と、見事なジュニアデビューのシーズンを締めくくった。

 ジャンプの質で印象を残したのは佐藤だ。ショートはジャンプミスで出遅れたが、フリーはスピードのある「ダブルアクセル+トリプルトゥループ」や、高さのあるトリプルルッツを決め、総要素点(技術面)では7位。総合12位となった。「不安と緊張の中でここまでの演技をできたのが自信。これからは表現力を伸ばしたいです」と笑顔を見せた。

 庄司は、試合2週間前に右足の甲をけがして、歩くことすらつらい状態。フリーはジャンプを簡単なものに変更し「滑り切れるか分からないですが、痛くても試合には出る」と言ってリンクへ。痛みをこらえて3分40秒を滑り終えると、笑顔が漏れた。けがを抱えながらも試合から逃げなかったことは、精神的な自信につながっていくだろう。

 ソチ五輪まであと2年。ジュニア女子にとって大切なのは、今回の順位ではなく、この2年間でどう変化するか。細くて人形のような体のロシア女子たちが驚異的なジャンプを維持し続けるのか、体格の大きさを生かしてパワージャンプを跳ぶアメリカ勢がさらに伸びるのか、またはジワジワと成長している日本ジュニアが追いつくのか。2年後に向けたコマは出そろった。フィギュアスケートが最も盛り上がる2シーズンは、ここからだ。

<了>

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今季ジュニアデビューを果たした宮原知子は強豪ぞろいの中で4位と大健闘【森美和】


今回、ジュニア選手権の女子は、去年に続き、更にびっくりしましたね。

優勝したリプニツカヤ選手しかり、日本の宮原知子選手のジュニアデビューも鮮烈でした。

銀メダルのゴールド選手も印象的でしたよね。

ソチ五輪でメダル候補と期待されているソトニコワ選手も、ライバル続出で、大変な状況です。

それは、他の選手にも言える事なのですが、このジュニアの台頭は、ソチ五輪への序章というよりは、平昌五輪で、まさにメダル争いする世代の気もします。

もちろん、このまま、順調に育てば、ソチ五輪にも出場してくるとは思います。

ロシア国内の五輪出場権争いが、今のシニアも含めて、激化する事は確実だとは思いますが、その中から、見事、自力で五輪出場できなければ、到底、メダル、ましてや金メダルは難しいのではないでしょうか。

日本もただ今、選手層が厚い中での、出場争いをしていますからね。

日本の代表を勝ち取れば、世界でも通用するように、ロシアを制覇したものが、世界を制覇するのは時間の問題かもしれません。

彼女たちには、ぜひ平昌五輪で活躍していただき、かの国の選手を遠い存在にしていただきたいと思います。


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