【夕刊】ウクライナ「裏」報告 | 陣内俊 Prayer Letter -ONLINE-

【夕刊】ウクライナ「裏」報告

 

どうもぼくです。

 

 

一昨日は、活動報告の「裏」を話しました。

結局芸人の三四郎の話になってしまい、

「陣内俊は5月から8月、

 三四郎のメンバーとして活動した」

と誤読した人も、

1000人に1人ぐらいいたかもしれません。

 

 

 

「裏」報告の、ちょっと違うことを話そうと思い、

再び筆を執り、、もといPCを起動しました。

 

 

 

昨日は結局ラジオ聴いてる話しかしなかったので、

今日は海外に行ってきたことの「裏」を話します。

 

 

 

ずいぶん昔ですが、

ウクライナに行ってきたときの話を。

 

 

 

ウクライナのことは、

次のプレヤーレターでも書こうと思ってるのだけど、

今回もっとも印象に残った「裏」の話をひとつ。

 

 

 

キエフ市内の地下鉄の駅で、

お土産屋さんに行ったときのこと。

 

 

 

ちなみにキエフの地下鉄に乗るのは、

けっこう楽しかったです。

 

 

 

めっちゃくちゃ長くて

そして移動速度の速いエスカレーターがあります。

地下鉄大江戸線新宿駅のエスカレーターよりも長い。

 

 

 

そして速度は3倍ぐらい速い。

 

 

 

そして、なんとなく、

いろんなものが「古いまま動いている」感じが、

すごーく味があって良い感じです。

 

 

 

ソ連時代に作られたインフラが、

今も動いているんだなぁということがよく分かる。

 

 

 

日本だと定期的に地震が起こったり、

ひとつの事故で設備が刷新されたりするので、

機械類の寿命が短い。

 

 

家もそうだけど。

 

 

大陸にある地震のない国々では、

古い家や、古い機械、古い鉄道などが、

良い味を出してます。

 

 

で、地下鉄のお土産屋の話。

 

 

そこで見つけたあるものが、

とっても心に残ったのです。

 

 

 

それは、「プーチンのトイレットペーパー」のお土産。

 

 

 

すげーセンス、と思って。

 

 

 

ウクライナとロシアの間には、

とても複雑な歴史があるわけです。

 

 

 

そもそもロシアという国の名前は、

ウクライナ(かつてのキエフ公国)の「ルーシ」に由来し、

もともとロシアはウクライナに出自を持つ。

 

 

しかしソ連時代にウクライナは、「穀物倉庫」として利用される。

そしてウクライナ人の国家意識の団結を恐れたスターリンは、

人工的な飢餓を引き起こし、「虐殺」を行う。

 

 

これは「ホロドモール」と呼ばれ、

1000万人以上が死んだとされる。

ホロコースト、ポルポト派、ルワンダ虐殺と並び、

20世紀の人類最悪の虐殺事件である。

 

 

さらに東西冷戦時には、

工業化で米国に対抗するため、

ソ連は原子力発電所の開発にいそしみ、

その立地はウクライナに押しつけた。

「チェルノブイリ」ですね。

 

 

で、

ソ連邦崩壊後に独立したウクライナだが、

ずっとロシアの傀儡(あやつり人形)政権が幅をきかせ、

国民を苦しめてきた。

 

 

そんな傀儡政権にうんざりした民衆が反逆したデモが、

2014年2月に起こるが、これに対して、

当時のヤヌコヴィッチ大統領は軍隊で応戦し、

100名の一般市民の死者を出す。

 

 

ウクライナ版、天安門事件である。

 

 

で、

そのあとヤヌコヴィッチ大統領は、

怖くなって国外に逃げる。

 

 

後任のポロシェンコ大統領(現職)は、

親欧州派、反ロシアとされているが、

ロシアと何らかのつながりがあるのではないかと、

疑う人も多い。

 

 

どこかでうっすら、

聞いたことのある話だ。

 

 

戦後の日本のエスタブリッシュメントは、

GHQから目をかけられたり、

CIAから資金提供を受け諜報活動を

したりすることと引き替えに、

日本の政治の中心を担ったというのは公然の秘密だ。

 

 

たしか2013年に、

アメリカ政府の情報公開によって、

安倍さんのおじいちゃんの岸信介も、

CIAのエージェントだったことが分かっている。

ぼくはそのページをアメリカ政府のホームページで確認した。

 

 

本当に載っている。

 

 

誰でも見れる。

 

 

 

ぼくはそれだから、

鬼の首をとったごとくに、

「ほら、岸信介は「反」日本だ。

 その孫の安倍晋三もヤバいやつだ」

なんて言うつもりは毛頭ない。

 

 

むしろ岸信介を尊敬する。

 

 

国益と、アメリカの都合の間で、

さぞ苦しんだだろうなぁと思う。

吉田茂、岸信介という二人は、

やはりすごい政治家だったんだと、

最近とみに思う。

 

 

 

沖縄の県知事が、

沖縄県の民意と日本政府の思惑で板挟みになって、

両方からすごい圧力と批判が飛び交い、

本当に苦しそうな顔をして、

何かを話すでしょ。

 

 

前の仲井間知事とか、

観てて泣きそうになった。

 

 

あのころの岸信介や吉田茂というのは、

今の沖縄県知事と構造的にとてもよく似ている。

 

 

いや「相似形」ををなす。

 

 

沖縄県知事にとっての日本政府が、

吉田・岸にとっての米国とGHQであり、

沖縄県知事にとっての沖縄県民と沖縄のメディアは、

吉田・岸にとっての日本国民と日本の新聞だった。

 

 

彼らは自分の愛する日本国民と、

強引な要求を突きつけるアメリカ政府の間で、

ぎりぎりの決断をし続けた人たちだったりする。

 

 

日本のメディアにも民衆にも袋だたきにされ、

それでもぎりぎりのところで、

アメリカに全部もっていかれないように、

老獪に彼らは物事を進めた。

 

 

岸信介の「私には声なき声が聞こえる」という言葉は、

実はけっこう深い。

 

 

その声なき声とは、

結局彼が不平等を是正した日米安保によって、

平和と繁栄を享受した未来の日本人、

つまりぼくたちなのかもしれないのだから。

 

 

ぼくは自民党支持者ではないし、

政治的に彼らにすべて同意するわけではないが、

彼らのその「胆力と眼力」は敬意に値する。

 

 

岸信介の孫の安倍晋三と、

吉田茂の孫の麻生太郎が、

今の日本の政治を引っ張っているというのは、

本当に「因果」なものなのだ。

 

 

CIAの話に戻る。

 

 

アメリカは秘密をたくさん持ってるけど、

良い点は「いつかそれが公開される」というルールが、

設定されていること。

 

 

おりしも岸信介の名前が、

米国のホームページに公開されたのと同じ年に

安倍さんが強行採決した特定秘密保護法案が、

事実上無制限に情報公開を

遅延出来るようになっているのは、

何かの偶然だろうか。

 

 

深読みのしすぎかもしれない。

 

 

ぼくは国家が秘密を持つことが

良くないとは思っていない。

 

 

本当に秘密を持ちたければ、

「秘密があるよ」ということ自体を、

秘密にしておくのが最上のやり方です。

 

 

なので「秘密がこれだけありますよ」と公開するという意味で、

あれは実は、透明性が担保される方向だったりする。

法律の名前から受ける語感や、

多くの人が思っているのとは逆なんだけど。

 

 

ただ、「情報を秘密にしておける期間」を、

政府が恣意的に動かせるのは、

ちょっと良くないな、と思う。

 

 

ちゃんと法律が運用されるように、

市民やメディアはウォッチしなければならない。

国会前でデモをするのも大事だけど、

そういうのも結構大事です。

 

 

、、、話がとてもそれたんだけど、

日本の政治は、事実上アメリカの意のままだったことに、

異論を唱える人はあまりいないだろう。

 

 

もちろん細かいところは交渉するし、

外務省の人も良くやってると思うし、

安倍さんも積極的にアメリカの議会で演説したりして、

良い影響を及ぼしているのだけど、

大筋はいつもアメリカが決めてきた。

 

 

そんなに裏事情に詳しくなくても、

公開情報からそれは「自明」である。

 

 

そもそも自衛隊の前身、

「警察予備隊」からして、

アメリカの都合で作ったんだから。

 

 

朝鮮戦争のときに、

日本の再軍国主義化と、

朝鮮半島の共産主義化を天秤にかけ、

アメリカ国務省は後者のほうがヤバいと読んだ。

 

 

で、アメリカは日本に通達を出す。

「警察予備隊を作ることを許可する。」

 

 

日本は何の申請も出してないのに。

 

 

これは「許可という名のやんわりとした命令」ですね。

 

 

やくざの親分がやおら子分に、

「おい、裏に車を回すことを許可する」

と言ったようなもので、

それに対する正しい反応は唯一、

車を裏に回すことだ。

 

 

同じように日本は、

アメリカの都合で、

警察予備隊を編制した。

それが現在の自衛隊です。

 

 

多くの人が指摘するように、

それからずっと違憲状態ですね。

 

 

この国では違憲かどうかより、

アメリカの意に反するかどうかのほうが、

大切にされる。

 

 

昔からそうなのです。

 

 

、、、その後も日米関係は、

重要な局面では必ずアメリカの意志が通る。

 

 

きっと核武装の問題も、

アメリカが「作ることを許可する(つまり作れ)」

みたいなことを言い出したら、

一気にそうなるんじゃないかと、

ぼくは半ば、絶望的に観ている。

 

 

絶望しているから悲観するのではなく、

絶望しているからこそ、

理想を語ることが大切と思っている。

 

 

 

あ、ウクライナ。

 

 

 

そうそう。

 

 

 

ことほどさように、

日米関係は、「主権があるような属国であるような」

とてもあいまいな状態で今までやってきたわけです。

(ぼくはその「あいまいさ」が駄目と思いません。

 それだから良いこともたくさんある。)

 

 

そこには上に述べたような、

複雑な歴史があるのです。

 

 

ロシアとウクライナの関係というのは、

それをさらに二回転半ぐらい複雑にし、

そして日米よりさらに深いく長い、

歴史的な禍根があるわけです。

 

 

ウクライナとロシアのことを聞くと、

日米関係がさわやかに見えてくるぐらいで。

スッキリしてて良いじゃないか。

 

 

本当に。

 

 

日本は幸せだったなぁ、

ラッキーだったなぁ、

と、ウクライナに行って、

(失礼なようだが)、思ったのです。

 

 

もしアメリカが、

「自由、平等、博愛」といった、

普遍的価値観を(たとえ建前であっても)、

標榜しない、中国やロシアのような、

覇権国であったなら、

日本の歴史はもっともっと、

深く傷つき、屈折し、

蹂躙され、ゆがんでいたでしょう。

 

 

アメリカがロシア的マインドの国だったら、

戦争の後、まず「日本語」をなくしたでしょうね。

 

 

もしくは公共メディアを無くして、

西日本と東日本で、言葉が通じなくする。

 

 

国家的統合をなくすのに最短の道は、

「共通の言語」をなくすことだから。

 

 

そうやって、日本を弱くする。

 

 

弱くすると支配しやすくなるから。

 

 

想像したくないですね。

 

 

 

じっさいにそのようにされたのが、

ウクライナです。

 

 

ウクライナの多くの人は、

ロシア語を話します。

 

 

そしてウクライナ語を話せるのは少数で、

東部の人たちは殆ど話せない。

 

 

ウクライナという国が強靱に立ち上がるための、

国家的統合の「前提」を、ロシアはソ連時代に、

周到に骨抜きにしている。

 

 

だから、

ヤヌコヴィッチ大統領のようなことが、

今でも起こる。

 

 

とっても複雑です。

 

 

複雑な中、

ウクライナの人たちはよく頑張っています。

 

 

ヤヌコヴィッチ大統領の件の直後から、

ロシアはクリミア半島を強引に併合し、

今も東部で軍事的に侵攻を続けている。

 

 

「武力による現状変更はナシにしましょう。」

という、第二次世界大戦後の、

国際社会のルールが、

白昼堂々と破られた。

 

 

「ゲームのルールが変わった」のだ。

 

 

おそらくそういう意味で、

100年後の世界史の教科書に、

2014年は大事な年として記されるだろう。

 

 

「新しい帝国主義の時代が始まった年」

 

 

、、、そんなウクライナの首都、

キエフの地下鉄の駅にあるお土産屋さんで、

見つけたモノが、コレ↓

 

 

 

 

 

 

プーチンの顔がプリントされた、

トイレットペーパー。

 

 

 

この写真はぼくが撮ったのではないです。

このトイレットペーパーは、

買おうと思ったけど、

やめておいた。

 

 

ロシアの諜報員が、

空港でぼくを捕まえて、

シベリヤに抑留されるのを恐れたからだ。

 

 

 

、、、というのは嘘だ。

 

 

残りのウクライナの通貨を、

切らしていたからです。

 

 

両替してでも

買っておけば良かったと、

とても後悔している。

 

 

このトイレットペーパーには、

ウクライナ人の誇りと、怒りと、哀しみと、

ユーモアと、知性が凝縮されているのだ。

 

 

世界情勢に関する新書を読みあさるだけでは、

見えてこない国際社会の皮膚感覚が、

感じられたりするところが、

時々海外に出ることのメリットです。

 

 

以上、ウクライナ「裏」報告でした。