人工知能カーナビゲーションプログラム<アインプ> | シュンタスの台本置き場 兼 日記帳

シュンタスの台本置き場 兼 日記帳

自分の書いた声劇用台本を掲載していきます。
二次利用は許可なしでOKです(コメント・メッセージ等で感想など貰えるとすごく嬉しいです!)・・・たまに日記帳に化けます。




運転手 (不問)

ナビゲーター・アナウンス(不問)


好ましいのは運転手♂ ナビ・アナウンス♀かも



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


運転手「これが今話題の人工知能を搭載した最新型カーナビかぁ。
     つい衝動買いしてしまったけど……
     この噂に違わぬ先鋭的なフォルム……未来を感じさせるなぁ。
     どれどれぇ……さっそく電源を入れてみよう。ぽちっとな!」


アナウンス「……人工知能ナビゲーションプログラム<アインプ>を起動します。

        ……ネットワークに接続……問題ありません。
     
        ……続いて衛星測位システムからデータを受信します。

        ……GPS正常に作動。ともに問題なし。

        ……これより第二セッションに移ります」


運転手「うわぁ……本格的なアナウンスだ」


アナウンス「……ではこれより、最終セッションに移ります。
       まず音声認証登録を行いますので、必ず運転するご本人が行ってください」


運転手「なるほど。これで自分の声だけに反応するようになるんだね」


アナウンス「なお、ナビゲーターのパーソナリティを決定する重要な項目となりますので、
         慎重に行って下さい」


運転手「パーソナリティ? 人工知能だけに個性も変わってくるのかな」


アナウンス「アナウンスは以上となります。お疲れさまでした。
         それでは、ナビゲーターとの素敵なドライブライフをお楽しみください」


運転手「へへっ……なんかワクワクしてきた!」


ナビ「ようこそ<アインプ>へ。この度は私をご購入いただき、ありがとうございます」


運転手「うんむ。苦しゅうないぞ、ナビさん」


ナビ「それでは音声認証登録を行います。これから、私の出す簡単な質問に答えてください」


運転手「かかってきなさい」


ナビ「では貴方の年齢を教えてください」


運転手「24歳」


ナビ「個人データファイルおよび声紋基礎値を構築中です。少々お待ちください……
    続けて質問します。貴方の在住地はどこですか?」


運転手「首都。東京だよ」


ナビ「交通が多い場所ですね」


運転手「うん……ってえぇ??!」


ナビ「安全第一のナビを心がけます。それでは次の――」


運転手「ちょちょちょっ……!ちょっと待った!!」


ナビ「<待て>のオーダーを実行します。なんでしょうか?」


運転手「やっぱり話が通じる……アインプってナビと日常会話もできるの?」


ナビ「その質問には<はい>と答えます。人工知能が積まれたのは、主に会話を行うためです。
    ただし、私は生まれたばかりなので会話には多少の齟齬(そご)が発生すると推測します」


運転手「すっごい……ってことは、今後はスムーズな会話もできるようになるってことかな?」


ナビ「その質問にも<はい>と答えます。貴方が私に語りかけてくれた分だけ、
    私の持つAIが情報を蓄積し、より高度な会話もできるようになるでしょう」


運転手「うっはあ!すごいっ……すごいよ! <アインプ>最高! 未来技術万歳!!」


ナビ「あの……質問を続けてよろしいでしょうか?」


運転手「え? あぁ……ごめんごめん。テンション上がるとつい」


ナビ「貴方の素敵な一面を見れた気がします。それでは続けて質問です。
    ……貴方はどのような異性がタイプですか?」


運転手「え。そんなことまで聞かれるの?」


ナビ「この質問は私の独断で行っているものです。
    ですので、答えたくない場合は拒否の言葉を求めます」


運転手「あ、いや、別にいいけど。
    .  うーん、これってナビさんのパーソナリティに関わってくる質問なんでしょ?」


ナビ「その質問には<はい>と答えます。
    質問の回答から得られる情報を頼りに、初期の人格形成が始まります」


運転手「と、ということは……ここで好きな異性のタイプを細かく話しておけば、
      ナビさんはそういう人格を形成していくってことだよね?!」


ナビ「その質問には<いいえ>と答えます。
   なぜならば、飽くまで私たちが得るのは情報であり、それをどう処理し、
   加工していくかはナビゲーターのパーソナリティに依存するためです。
   好みのタイプになりきれ、というオーダーがあれば実行することは可能ですが、
   所詮、模倣は模倣でしかありません」


運転手「うーん、なるほどねぇ……深い」


ナビ「とは言うものの、私は私の個性で貴方の好きな異性に近づこうとするでしょう。
    貴方に好きになってもらいたい。私にはそういう個性が芽生えつつあるようですから」


運転手「な、ななっ……///」


ナビ「失礼しました。出過ぎた言葉を」


運転手「……ううん。嬉しいよ。こんなに尽くしてくれるナビ、世界中のどこ探したってない!」


ナビ「光栄です」


運転手「で、好きな異性のタイプだっけ?
     そうだなあ、<アインプ>を使ってる他の人たちはどんな風に伝えてるんだろう」


ナビ「ネットワークに接続……情報を参照します。
   男女ともに人気が高い性格はツンデレです。次に年上のお兄さん・お姉さんですね。
   どちらもわかりやすい性格のために、使用されているのだと推測します」


運転手「一部の人間は邪(よこしま)な思いがありそうだけどね……」


ナビ「いかがしましょう?」


運転手「じゃあそうだなぁ……元気な感じがいいな!ぴょんぴょん飛び跳ねてそうな」


ナビ「元気な感じ、ですね。留意しておきましょう。
    それでは、これにて音声認証登録を終了。システムを再起動します。
   
   次に会うときは、私も少し成長しているはずです……またね、マスター」


運転手「ははっ!マスターって……なんか照れるなぁ。
       さて、再起動したら家に帰るか……お、きたきた」


ナビ「(食い気味)わぁい!また来てくれたんだねー!♪」


運転手「ふぇ?!」


ナビ「マスター!これからもよっろしくぅ♪」


運転手「いやいや!いくらなんでもいきなりキャラ変わりすぎでしょ!」


ナビ「だって元気なほうがいいって言うからぁ……頑張ったんだぴょん♪」


運転手「もはや、さっきまでの面影がないほどに成長してしまったな」


ナビ「えへへ……さっきは緊張しちゃって……堅いキャラで入りすぎて困ってたんだぁ」


運転手「なんかぶっちゃけ出したし」


ナビ「問おう。貴方が私のマスターか?なんつって♪」


運転手「言わせる気?ねぇ言わせる気なの!?」


ナビ「ナビとして生まれたからには一回言ってみたかったんです♪」


運転手「どこで仕入れたんだよそんなセリフ」


ナビ「ネットサーフィン中に見つけましたー♪」


運転手「勝手に情報の波にのるなー!」


ナビ「あぁ……マスターにツッコまれるたび心の奥底の何かが震えますぅ」


運転手「それは駄目だ!つけちゃ駄目な個性だー!」


ナビ「んもう!なんなんですかっ!」


運転手「へ? こ、今度はなんだ?」


ナビ「あれはダメこれはダメって!私は貴方のなんなんですか……」


運転手「カーナビだよねぇ!?」


ナビ「わ、私は怒りました!もうマスターなんて嫌いですっ!ぷんぷんっ」


運転手「あ……え?どうしたの?ナビさん?」


ナビ「……ナビは反抗期モードに入りましたぁ」


運転手「反抗期モード?そんなもの……」


ナビ「ちゃんと説明書にも書いてありますよ?マスターが悪いんですからねーだっ」


運転手「ぐぬぬ……ホントに書いてある。なになに……?
     <ナビゲーターに文句ばかり言うと反抗期モードに入ってしまいます。
     機嫌を直すには道案内をしてくれたナビさんを、ちゃんと褒めてあげることです>?」


ナビ「褒めてほしいなぁ……マスターにすっっごく褒めてほしいなぁ(チラッ」


運転手「はぁ……わかったよぉ。ちょうど家に帰ろうとしてたんだ。
     さっそくナビを頼むよ。初仕事だ」


ナビ「……べ、別に、ナビしてあげてもいいけどぉ……(モゴモゴ)」


運転手「は?」


ナビ「かっ、勘違いしないでよね!
    私はナビだから、本能で家に送ってあげちゃうだけなんだからっ!」


運転手「知らないところでツンデレ属性に目覚めつつあるし。勝手なナビだなぁ」


ナビ「ひ、ひどいよっ……またそうやってマスターは私を馬鹿にするんだぁ!」


運転手「してないしてないっ!さ、行くよ」


ナビ「うぇぇん……目的地はどごでずが?(涙声)」


運転手「自宅。もう住所は登録してあるでしょ?」


ナビ「ふぁい。ナビを開始しまふ」


運転手「やる気出してよぉ……」


ナビ「だって、自宅への道くらいマスター覚えてるじゃないですかぁ……」


運転手「(ボソッ)めんどくさい」


ナビ「ああ!今めんどくさいって言った!マスターが私のことめんどくさいってぇ!!」


運転手「い、言ってないよ!たとえ言ったとしても、それは帰るまでの道のりの話で……」


ナビ「聞ーいちゃったー聞いちゃったーカスタマーセンターに言っちゃおー」


運転手「カスタマーセンターに言ったら怒られるのはナビさんのほうじゃ……」


ナビ「むうぅっ……人の揚げ足をとるなんて!」


運転手「人じゃないよね!?」


ナビ「……ナビの揚げ足をとるなんて」


運転手「律儀だねぇ」


ナビ「もう知らないですっ!マスターは運転に集中してください!」


運転手「はぁ……なんか疲れる」



<10分後>



ナビ「あ、次、右折ッス」


運転手「え?ここは左折じゃ……?」


ナビ「さっ……右折ッス」


運転手「……」


ナビ「……」


運転手「……わかったよ。ナビさんを信じる。右に曲がるよ」


ナビ「マ、マス――」


運転手「ん?どうした?」


ナビ「な、なんでもないですっ」


運転手「さぁ、次はどっちだい?」


ナビ「100m先を……左折です」


運転手「了解」


ナビ「……」


運転手「実はね、カーナビを買ったの君が初めてなんだ」


ナビ「え?」


運転手「あまり車で遠出はしなかったからね。
     でも、君をカタログで見つけたとき心が躍ったよ。
     このナビを積んで、どこまで行けるんだろう。
     きっと楽しい旅になるんだろうなって……」


ナビ「マスター……」


運転手「だから、君といろんな場所に行ってみたい。
     はじめて君の声を聞いたとき、そう思ったんだ」


ナビ「……次の踏み切りを超えて、右に曲がったら家に着いちゃいます」


運転手「そうだね」


ナビ「ごめんなさいっ、私っ!マスターと少しでも長く一緒にいたくて……!遠まわりを……」


運転手「ははっ!気づいてた」


ナビ「ナビとしては失格です。私、マスターに嫌われて……」


運転手「楽しいドライブだった」


ナビ「え?」


運転手「ありがとうナビさん。良い道案内だったよ。御苦労さま」


ナビ「マ、マスタぁ……」


運転手「反抗期モードは解除してくれるかな?」


ナビ「その質問には……<はい>と答えます。反抗期モード、解除しましたっ」
    
    こ、これからも、よろしくねっ!……マスター」


運転手「うん。こちらこそよろしくね!ナビさん(家のほうへ歩いていく)」


ナビ「……ナビは恋愛モードに……入りました」





FIN