議案第86号 朝来市行財政改革大綱を定めることについて | 国民民主党 吉田しゅんぺいの議員日記

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 本議案86号は令和4年度から令和8年度までの5年間で実施を目指す行財政改革の大綱を定めようとするものでありますが、本大綱案では行財政改革が実現できる見込みがないこと、また作成した原課及び職員に対して行財政改革とはどういったものなのか、どう在るべきかを改めて再考を促すために、私は議案第86号に反対致します。
 先ず歴史を振り返りますと、昭和40年代以降に民間企業主導による高度経済成長の一方、国家公務員の定員は増加の一途を辿り、肥大化・硬直性等の官特有の問題を克服するために、昭和43年に総定員法が制定され定員削減計画により定員を抑制致しました。その後に、増税なき財政再建のスローガンの下、行政の守備範囲の見直しの視点を含めて検討する第二次臨時行政調査会、所謂土光臨調が設置されました。①活力ある福祉社会の建設、②国際社会に対する積極的貢献の2つの目標を提起し、①変化への対応、②総合性の確保、③簡素化・効率化、④信頼性の確保の4つの観点が提示されました。その結果、許認可等の整理合理化、補助金等の整理合理化、特殊法人等の整理合理化(国立競技場・日本学校健康会、医療金融公庫・社会福祉事業振興会、農業信用保険協会・林業信用基金・中央漁業信用基金の統合、自立可能な特殊法人の民間法人化等)、3公社民営化(JR、NTT、JT)、総務庁の設置、陸運関係地方事務官の廃止、人勧の実施見送り、地方ブロック機関の廃止(海運局・陸運局の統合、地方貯金局・地方簡易保険局の地方郵政局への統合等)、整備新幹線計画の見合わせ、行政手続制度、情報公開制度の検討などがなされ、現在の行財政改革の基本的な方向性も確立されました。
 行政改革とは何か。内閣府のホームページでは「行政改革について、行政改革の基本的な視点として、①国や地方公共団体が規制などによって民間活動に関与していることを廃止できないか、②国や特殊法人などの公共部門が提供しているサービスを民間に委ねられないか、⓷行政が引き続き関与する場合であってもその主体を国から地方に委ねられないか、これらの3つ観点から一切の聖域を設けず、規制緩和、官民の役割分担の見直し、地方分権の推進、中央省庁の再編などの課題に取り組んでいる」とされています。
 また、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律では、同法第2条では基本理念として「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革は、国際化及び情報化の進展、人口構造の変化等の経済社会情勢の変化の中で、我が国の国際競争力を強化し、国民が豊かで安心して暮らすことのできる社会を実現するためには、民間の主体性や自律性を高め、その活力が最大限に発揮されるようにすることが不可欠であることに鑑み、政府及び地方公共団体の事務及び事業の透明性の確保を図り、その必要性の有無及び実施主体の在り方について事務及び事業の内容及び性質に応じた分類、整理等の仕分けを踏まえた検討を行った上で、国民生活の安全に配慮しつつ、政府又は地方公共団体が実施する必要性の減少した事務及び事業を民間にゆだねて民間活動の領域を拡大すること並びに行政機構の整理及び合理化その他の措置を講ずることにより行政に要する経費を抑制して国民負担の上昇を抑えることを旨として、行われなければならない。」と規定されています。また同法第3条では、国及び地方公共団体の責務として、「国及び地方公共団体は、次章に定める重点分野について、前条の基本理念にのっとり、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革を推進する責務を有する。」とされています。同様に、同法第55条で「地方公務員の職員数の純減」が、同法第56条で「地方公務員の給与制度の見直し」が、同法第62条で「地方公共団体における取組」が規定されています。
 また、地方財政白書では、行財政改革は、(1)給与の適正化及び適正な定員管理の推進、(2)地方公営企業、第三セクター等の抜本的改革の推進、(3)地方公会計改革の推進が掲げられております。
 そこで、行政改革大綱案を検証しますが、総論として、その基本的な考え方は、1自治基本条例の遵守、2将来を見据えた計画、であります。1の自治基本条例の遵守は条例である限り自治体は遵守しなければならないので特に意味を有するものではなく、単に同条例を確認したに過ぎません。2の将来を見据えた計画については、3つの基本方針を有しております。基本方針1が歳入確保の推進、基本方針2が歳出の効果的かつ効率的な実行、基本方針3が職員の育成と組織力の強化、となっております。その一方で、土光臨調は2つの根本的目標と4つの本質的観点を有するものであり、内閣府では一切の聖域を設けない3つの観点を有するものであり、法律では 経費を抑制し国民負担を抑えることを目標として3つの観点を有するものであることから、今回の朝来市行財政改革大綱案が如何に眇眇(びょうびょう)たる卑小な行政改革であることか。
 次に各論として、将来を見据えた計画として、「5年間で歳入面では約20億7千万円もの減少が見込まれる中、歳出面では人件費で約1500万円、扶助費で6400万円の増加が見込まれます。」とされていますが、基本方針1歳入確保の推進では、⑴で既存歳入の確保を掲げているが、既存歳入は人口減少による基準財政需要額が大幅に減少することから既存収入を確保することは不可能であることが明白であります。また⑵で新たな歳入の確保を掲げふるさと納税を推進するとありますが、実施計画案では目標値が現状維持であり、新たな歳入の確保としては論理矛盾を来たしております。また、ふるさと納税は恒常的財源ではなく臨時的財源として検討しなければならないことも理解されているのか疑問に考えるところであります。平成20年に地方税法の一部改正により、地方公共団体への寄付金の一部につき、所得税の所得控除及び個人住民税の税額控除がなされることになりましたが、このふるさと納税は地方交付税の制度根幹を揺るがす改正となっており、基準財政収入額は標準的な地方税収入の25%が反映されないことから、ふるさと納税で減収した地方税収入の25%が自治体の純損失となっており、基準財政需要額と基準財政収入額の差を地方交付税で措置するというこれまでの根本的制度に変更が生じてさせていることは、一部の自治体が税外収入で大儲けしている一方で、多くの自治体が財政に困窮する重大な要因になっています。こうしたふるさと納税の影の部分や所得の再分配を阻害する仕組みは何れそれも遠くない日に問題視されようことから、恒久財源として充てにすることは財政計画を考えるうえで、また将来を見据えた計画を考える上でも、補足的付則的な位置づけの財源として認識すべきであります。以上のことから、歳入の確保で今後の歳入減少分と歳出増加分を吸収することは不可能であることが容易に理解できます。
 最後に歳出の抑制についてでありますが、5年間で21億4900万円の歳出削減を行うためには1年間で4億2980万円の歳出削減をすることとなり、それは非常に困難な目標となるにも関わらず、実施計画案で金額の読み取れるものは債権の適正管理だけで、毎年度2.1%減少とされているのでその効果は1年目で746万円、2年目で1477万円、3年目で2192万円、4年目で2892万円、5年目で3577万円となり、累計額で1億884万円となります。これだけでは全く歳出削減額を埋めることはできませんが、これ以外に数値目標を金額化している箇所は実施計画案にはなく、確認すること自体ができない大綱並びに計画となっています。
 更には、定員適正化計画に基づく定員管理について、現状値が326人であり、その目標値は320人とされ、減少率は5年間で2.1%、1年間では0.4%に過ぎません。これでは行政改革とは到底言えない内容の行財政改革大綱案及び実施計画案となっています。
以上のことから、総論としての目標や基本理念の欠如、各論としての削減目標額の欠如は明白であり、凡そ本議案第86号に賛成することができないことから、私は反対を致します。