「結局残業なんて、どこまで真面目なの?」
「相葉くん…先帰っててって言ったのに」
誰もいないオフィスで1人、残業をしていたことろに現れた相葉くん。
「今日1人で家にいたって虚しいだけでしょ?」
「ごめん…せっかくお店予約してくれてたのに…」
「それはいいよ。また今度行こうね。」
「うん、ありがと…」
優しい相葉くんにいつも甘えてしまってるのは分かっているから、
申し訳なくてその優しく笑う目元ににちょっとだけ胸が締め付けられる。
「あとどれくらいかかりそ?」
「い…30分…くらい、かな?」
「そっか。…先帰ってるから、キリのいいとこまでやりなよ。あ、無理はダメだからね?」
「…はい。」
相葉くんを長く待たせられないと思って、1時間と言いかけて30分と言い直した気遣いはバレていたみたいだ。
また気を遣わせしまった…ほんと俺ってダメだな…
呆れるよね、こんな奴。
「…。」
視線を感じて相葉くんを見ると俺のことをじっと見つめている。
「?な、なに?」
「翔ちゃんって顔小さいよね。」
「え?いや、相葉くんの方が小さいでしょ!」
「赤ちゃんの頃からちっちゃかったのかな?」
「へ?どうだろ…?」
「こんな寒い季節にぴったりな色白さんだね。」
「?どうしたの?」
よく分からないことを言い出した相葉くんに困惑していると頭に優しく相葉くんの手のひらが乗る。
「よしよし。」
「え?なに?w」
「元気に育ってくれてありがとう。」
「…相葉くん?」
「頑張り屋さんな翔ちゃんを今日くらいは、たっくさん甘やかしてあげたかったんだけどな」
「いつも、甘やかされてる気が…」
「仕事はもちろん大事だけど、俺には翔ちゃんの方が大事だよ。」
「…俺だって、相葉くんの方が大事だよ。」
相葉くんの優しく撫でてくれる心地よさに目を瞑ったら一瞬で眠ってしまいそうになる。
「翔ちゃんと過ごす毎日が特別で愛おしいんだけど、やっぱり今日はもっと特別でずっと愛おしい。」
「…ありがと」
「もっとたくさん翔ちゃんに甘えて貰える俺になるよ。頼りなくていつも気を遣わせてごめんね?」
「そっそれは俺の方でしょ!相葉くんに甘えてばっかりでいつも気を遣ってもらってて…」
撫でていた手が離れたと思ったら、次は相葉くんの香りに包み込まれるように抱きしめられた。
「翔ちゃん、愛してる。」
「…相葉くん。俺も、愛してる。」
「どのへんを?w」
「えっ!…ぜ、全部?」
「フフ、俺も翔ちゃんの全部が好き。」
ギュッと抱きしめ返したら、相葉くんももっと強く抱きしめる。
「相葉くん…キスして?」
「会社だけどいいの?」
「もう勤務時間外でしょ?」
「真面目だな〜w」
抱きしめる腕が緩まって、相葉くんと視線が交わる。
頬に添えられた温かい手。ゆっくり近づく相葉くんの唇。
触れると柔らかくてなによりも愛おしい。
…あぁ、好きだなぁ
「そんな顔、誰にも見せちゃダメだよ?翔ちゃん。」
「?」
「俺じゃなかったらこの場で食べられてるよ?」
「っ!…相葉くんは食べないの?」
「もちろんいただきます。けど、続きはお家で、ね?待ってるよ、翔ちゃん。」
「…///」
「あ、ケーキは買ってあるから。楽しみにしててバースデーボーイっ」
冗談めかして言った相葉くんはクルッと踵を返して軽い足取りで出て行った。
「フフ、相変わらず楽しい人だなw」
残りの仕事はあと3分の1だけやって帰ることにした。
もう改めて祝わってもらう歳でもないと思っていたけど、
やっぱり早く帰って相葉くんに言ってもらいたい。
今日まだ誰からも言われてないその言葉を。
他の誰でもない相葉くんから言われたい。
世界で一番好きな場所、相葉くんの腕の中で…
俺が生まれた日だと言っても、世間一般的にはただの平日。
なんでもない1日だと思ってた。
でも相葉くんの中では特別な1日で、
そんな相葉くんからの一言で俺にとっても特別になってしまう気がする。
今日も残り3時間。
残業終わりとは思えないほどのスピードで家に帰ったのは当然だと思う。
もうすぐ日付が変わる頃。
相葉くんの腕の中で疲れた身体は癒されていく。
「ねぇ、相葉くん…」
繋がったままの場所は何度果てても熱を持っているままだ。
「ん、なに?翔ちゃん。」
「相葉くんと来年もこうしていたい。」
「当たり前じゃん。」
「良かった。」
「一生離してなんかあげないからね?w」
「フフ、うん。そうして。」
「翔ちゃん、誕生日おめでとう。生まれて来てくれて、俺と出会ってくれてありがとう。」
「…ありがと、相葉くん。」
やっぱり今日は俺にとっても特別な1日。