数年前、この本を2回ほどさらさらと流し読みしたことがある。思いがけないところにこの一冊がポツンと置いてあった。ちょっと「これを読みたい」という本があるわけでもなかったので、もう一度、読み直してみることにした。

 

北村薫という作家は、男性なのか、女性なのか。ということで、Wikipediaをググってみると、男性である。この本の主人公は女性編集者。なので、著者は女性かと思っていたのだ。

 

本の帯

40歳目前、文芸誌の副編集長をしている“わたし”。ひたむきに仕事をしてきたが、生来の負けず嫌いと不器用さゆえか、心を擦り減らすことも多い。一緒に住んでいた男とは、3年前に別れた。そんな人生の不調が重なったときに、わたしの心を開いてくれるもの――山歩きと出逢った四季折々の山の美しさ、怖ろしさ。様々な人との一期一会。いくつもの偶然の巡り合いを経て、心は次第にほどけていく。だが少しずつ、けれど確実に自分を取り巻く環境が変化していくなかで、わたしは思いもよらない報せを耳にして・・・。

 

 

『九月の五日間』は、“わたし”が北アルプス表銀座(槍ヶ岳・燕岳・大天井岳)を歩く姿が描かれる。

簡潔にしてわかりやすい。

内容は濃い。

そしてリアルに感じる。

槍ヶ岳登頂の場面は、読んでいる自分もまたハラハラである。表銀座を歩いたこともないのだけど、実体験したかのような錯覚を覚える。

 

たぶん3回目の読み直しになるけど、面白い。

 

『二月の三日間』は、裏磐梯の雪山ツアー。

このなかに何もやらないツアーというのが出てくる。何もやらないツアーというのは、登山口から歩いて、せいぜい30分くらいの雪原で、お手軽なテント泊をする。それぞれ、いいワインと、いい肉一枚と、好きな文庫本一冊持って集まる。そこで肉焼いてワイン酌み交わしたら、あとは何をするも自由。ぽかんと空見上げたり、本を読んだりして過ごす。

 

ああ、いいなぁと思う。これってキャンプのことだ。うむ、やっぱりそんな時間の過ごし方をしてみたいなぁ。

 

『十月の五日間』

小編の表紙にイラストマップが描いてある。矢印を見ると、上高地の河童橋から徳沢、横尾、蝶ケ岳ヒュッテ、蝶ケ岳、蝶槍、常念岳、大天井岳、燕山荘、中房温泉に至るコース。

 

これは、最初の『九月の五日間』の逆コース。ふ~む。いかなる山旅になるのか。

 

そんな風に読み返していると、まるでブログのようだと思う。1日の行状記だからであり、日記のようだとも思う。同じようなものかもしれないが、自分の思いが綴られているからだろう。なによりもとても読み易い。

 

ま、さすがに作家さんというのは文章の名人ではある。