俳句のド素人のがねが堂々と記事にするのははばかられるのであるが、以下は悠人さんのblog句会7月において、がねが選んだ句である。
特撰
13 濃紫陽花近づきてきし下駄の音/ねこじゃらし
濃い色の紫陽花が咲いている静かな場所。下駄の音が近づいてきた。待ち合わせをしているのか。和服を着た女性であろうか。下駄の音が自分の胸の鼓動のように大きくなる。妄想か。
21 怨みごと書いては捨つる羽蟻の夜/悠人
羽蟻が飛ぶ夜は不穏、不安な心理にさせる。そんな夜、恋しい人に怨み言を書いては捨てる。もどかしい気持ちが募る。
29 二機三機花樗よりF-15/マミーエリ
見上げるように立つ栴檀の花が満開である。防衛訓練であろうか、戦闘機F-15が二機三機と飛んで行く。沖縄基地と薄紫の花樗の映像がくっきりと脳裏に結ばれる。
併選
9 夕焼けへ魚跳ぬノの字くの字かな/マミーエリ
赤い夕陽に染まる海。魚が飛び跳ねる。クリスチャン・リース・ラッセンの絵画が目に浮かぶ。美しい。
15 梅雨晴間けふのスカート花模様/sona
久しぶりに晴れた。気分も明るく外出する。そうだ、花模様のスカートにしよう。梅雨晴間が明るく爽やか。
20 太きゴム顔貌を成し朝曇/石川曾良
旱が続く。陸と海の空気が触れる朝、靄になる。連日の日照りでゴムが熱で溶けて顔に見える。サルバトーレ・ダリの絵画のよう。
次選
31 足跡の波に消されし雲の峰/ねこじゃらし
海水浴を楽しんでいると、足跡が波に消されていく。青い海、青い空。そして入道雲がむくむくと湧き上がる。
33 夕焼に押し戻される汽笛かな/ひょうたん機
汽笛が鳴る。それを押し戻してしまいそうに圧倒する夕焼けの色であることよ。
46 朝方のかなかな昨日の声で鳴き/モニカ
地表に生まれ出て短い命の蜩。昨日聞いた蜩と今朝の蜩は同じ声。蝉は命をつないだのだ。
50 夏霧へ吸い込まれゆく橋の果て/みなみ
橋のたもとにいると、夏霧が流れ込んできた。橋の先の方が霧に吸込まれていく映像が結ばれる。
ついでに自句について
18 夏蝶にシャッター切れば花のみぞ/がね
元気よく飛び回る夏の蝶が蜜を吸うためにアザミの花に止まった。チャンスだとシャッターを押すと、その瞬間、蝶は消えた。
25 サングラス覚へありやと問ふ君は/がね
「アタシのこと覚えてる?」
「うん」
サングラスをかけていようがいまいが、一瞬で分かった。
54 雨だれのシンコペーション藍浴衣/がね
雨だれのリズミカルな音がスキップするようにリズムを先取りする。
藍浴衣は誰?
それはね、亡き母
異人たちの夏みたいだけど…。