俳句を始めて半年経過したに過ぎない者が選句などとおこがましく、かつ、僭越であるが、何事も勉強であり経験でもある。選句も実力だなどと言われるが、6月blog句会がねの選句を臆することなく公表しよう。なお、敬称省略。

 

 

1 星涼しシーラカンスの睡りをり まるちゃん2323(6点句)

深海魚が睡るほど深く沈潜した静寂。星を見る夜の涼しさ。

 

10 梅天の雲に連なり火葬煙  けいやん(5点句)

火葬の煙が梅雨の雲に連なる景。梅雨空の重く湿った質感が亡くなった人を送る人々の沈んだ気持ちと重なる。

 

16 ゆるり巻きしかと引きたり単帯  マミーエリ(6点句)

女性ならではの句である。着物を着ない男性の与り知らぬ情景。即物的でなまめかしい。

 

18 六月の此岸でおとうと泣いてをり  モニカ(3点句)

彼岸に行ってしまわれた身近で大切な方を惜しまずにはいられない。「おとうと泣いてをり」が実景であるが、弟と共に人知れず泣いているのは作者なのだ。

 

30 朴の花日当たる中に見ゆるなり  なか(1点句)

6月中旬、大山蓮華に会うため宮崎県の祖母山に登った。北谷登山口に朴葉があったが、花は咲いていなかった。朴の花に日が当たる中で見えたなら、輝く白い花に魅入られたことだろう。

 

36 シャム猫のつまさきあるき南風  モニカ(5点句)

おしゃれ。南佳孝「モンローウォーク」が聞こえてきた。

 

38 田植え唄尻の窪みの揃ひたり  まるちゃん2323(6点句)

句を読んだ瞬間、「尻の窪み」に生々しいインパクトがあって特撰だと決めた。しかし、がねが下品な奴だと思われたらどうしようと心配になり、並選にした。それでもなんか可笑しい句だなぁ。

 

45 降りしきることのあわれさ虎が雨  なか(2点句)

虎が雨という季語を知らなかったので調べてみた。梅雨の雨が降りしきることのあわれさがしみじみと感じられる。

 

58 ふるさとや入れば出口早苗風  ゆみこ(2点句)

この句から様々なことがイメージされた。故郷に対する人の思いは様々であり、中には複雑な事情を抱えている場合もあるだろう。「入れば出口」であるから狭い村だろうか。それとも「入れば出口」は故郷に対する作者の距離感かも知れない。久しぶりに懐かしい故郷に足を踏み入れたのだけど、すぐに気持ちが塞がってしまった。今、田植えが始まろうとして、風が吹いている。

 

以上9句選。

 

次選句

2 紫陽花に下げ札「いまは居留守なり」  ウロ(4点句)

4 明易し先ずは水槽覗くなり  重太郎(2点句)

6 一通のメール待ちをり五月雨るる  悠人(7点句)

8 蝸牛地平線へと歩みをり  ねこじゃらし(2点句)

9 梅雨の月朽ちた小舟のもどりをり  ゆみこ(5点句)

19 @マークほどのででむし生まれたり  さるぼぼ(5点句)

21 蝸牛水門の錆擦りたり  葉音(5点句)

24 花木槿ラヂオの電波乱れをり  重太郎(5点句)

39 昼顔の這いつくばつて生きるなり  葉音(3点句)

40 手花火を終え満開の星夜なり  あ~すけ(6点句)

42 梅雨寒の地下水脈に届きたり  ひょうたん機(4点句)

56 時の記念日貝殻骨のうずくなり  モニカ(4点句)

 

初心者のがね如きが「何を偉そうに」と不快に思われる方があるやも知れないが、勇気を振り絞ってのことであるので、もしそうであれば平にご容赦願いたい。

 

 

長くなって恐縮だが、がねの句についても記しておこう。

 

13 溝浚へ見かけぬ人も集ふなり がね(3点句)

毎年6月第一日曜日は地区一斉清掃日の溝浚え。地域住民は顔見知りである。見知らぬ人といえば新しく嫁に来た人か、引っ越してきた人しかいない。今年は熊本地震直後に死去した人の家がリフォームされ売りに出されて、引っ越してきた新しい住民がいた。隣近所が一堂に会するのは年に一度だけ。

 

22 青葉木莬城に向かひて鳴いてをり がね(1点句)

熊本城公園管理事務所の林に青葉木莬が巣くっている。鳥たちに熊本地震の傷跡など関係ない。いつものように鳴いている。それが救いなのだ。

 

49 山頂の半ば崩れて青芒 がね(2点句)

阿蘇五岳の一つ、烏帽子岳の景。山頂へはロープが張られて立ち入り禁止措置がとられている。山頂を眺めるだけである。かつての山頂は足で踏み固められていたが、いつの間にか青芒の原になってしまった。

 

がねの句については、自分自身でいかにも稚拙だと思う。しかし、備忘録として記録できたよかった。

 

 

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