花の店 安西均 かなしみの夜の とある街角をほのかに染めて 花屋には花がいっぱい 賑やかなことばのやうに いいことだ 憂ひつつ花をもとめるのは その花を頬ゑみつつ人にあたへるのはなほいい けれどそれにもまして あたふべき花を探さず 多くの心を捨てて花を見てゐるのは最もよい 花屋では私の言葉もとりどりだ 賑やかな花のやうに 夜の街角を曲がるとふたたび私のこころはひとつだ かなしみのなかで何でも見える心だけが