安倍政権に代わる頃から随分と株価が上がってますね(&円安も進行)。別に特に何もやってないはずなのに、一体何なんだ?と不思議に思っている人達も多いです。


机上の理屈では、さほど不思議なことではありません。次のリンク先は、主要国の実質金利の推移 です。日本は金利が低い(ゼロに近い)というイメージが1999年の日銀のゼロ金利政策以来ずっとありますが、2008年秋のリーマンショック以降に状況が急激に変化し、2009年の5月頃になると、日本の金利は先進国で実質的にもっとも高くなっていったのです。


金利の高い通貨は当然人気が出て、つまり通貨価値が高いと判断されますから、記録的な円高になったわけですね。


ちなみに我々が通常認識している金利は、名目金利と呼ばれます。実質金利とは、物価の上昇/下落を加味した数字になります。例えば、銀行の金利が年1%、物価上昇率が年マイナス1%だとすると、実質金利は2%です。銀行の金利が年10%、物価上昇率が年15%だとすると、実質金利はマイナス5%です。外貨への投資は、実質金利を見て判断されることが多いです。


で、安倍さんは、物価上昇率2%を目指す!とやったわけですね。これ要するに、他の先進国並みの実質金利にするぞということなんです。


実はリーマンショックが話題になってすぐの頃(2008年10月だったか)、英国の日経新聞ともいえるフィナンシャルタイムズが、日本は今の安倍さんが唱えるような金融政策(=大胆な金融緩和策)をやれ!と進言していて、英米の著名経済紙に触れている人達からすれば、安倍さんが現在やろうとしていることは、日本がやるべきこととして共通認識のようになっていました。だから海外の投資家は、好意的に評価しているわけです。


ただ当時の麻生政権や以降の民主党政権は、大胆な金融緩和をやらなかった。だから他の先進国がリーマンショック以降、実質金利を下げる中、日本だけ高水準の実質金利を維持し続けて円高を続けるという、よくわからないことになっていたわけです。


じゃ我々一般の市民にとって、安倍政権の金融緩和策がハッピーなことなのかというと、これまた別の話。物価上昇率2%で金利は0%となると、実質金利マイナス2%になります。安倍さんは物価を上げるとは言ってますが、金利を上げるとは一言も言ってませんからね。


実質金利マイナス2%ということは、銀行に預貯金しているだけでは、資産価値は下がるということを意味します。これまでは銀行や郵便局に預けておくだけで、預貯金の価値は下がらなかったんですよ。が、安倍さんの政策は、下げると言っているわけです。


金利というのは、お金の取引が動くスピードと実は同じでして、金利が上がればスピードが鈍り、下がればスピードが上昇します。日本は1999年のゼロ金利政策以来、スピード上昇の手段を失ったと思われてましたが、今回のアベノミクスでは10数年ぶりに再びスピードを上昇させると宣言したわけです。だから株価が上がったわけですね。


例えば、己の資産価値を減らしたくない人達が投資に走って、2%以上の運用益を確保しようと奔走するようになる、というわけです。


そして実質金利を下げる!と安倍さんが宣言したということは、日本の通貨価値は先進国並みの水準まで下がるいうことですから、円安にもなったということです。


バブルになるかどうかはまた別の話。日銀が大量に供給するお金は、低経済成長の日本国内に廻るというよりも、より経済成長が見込める新興国への投資に流れていきますから、むしろ新興国の方がバブルになる可能性が高いでしょう。日本だけじゃなく、米国と欧州のお金も、大量に新興国に流れていきますからね。


例えば中国というのは、国内の経済成長著しい国というよりも、米欧日の投資家によって無理矢理経済成長させられている国、という側面が実はあるわけです。