日本全国に社宅や公営団地が多くある。

都会ではマンションのようなそれもあるが、地方では社宅や公営団地は5階建てや4階建てで、それがいい。

上から下まで、左から右まで、全体を眺められるからだ。


横の面を見ると、そこに建造年が表示されていたりする。

1970年代だったりすると、垂涎ものだ。

実際の家賃はいくらなのか?

水回りは大丈夫なのか?

どんな人が住んでいるのか?


興味津々である。


地区の自治会の役員になり、地区の県営住宅を訪ねて回ることがあった。


インターホンを押して、住民が出てくるまでの期待感と言ったら


いったいどんな仙人が出てくるのかと期待した。

出てくるのを待っている間に天井にハトの巣を発見した!

ハトが一羽飛んでいった!

ここに居たんだ!

県営住宅の4階の踊り場に!


出てきた住民は、人の良さそうな上品なご婦人だった。

奥には人の良さそうなご主人がいた。


満足して、階下に降りて行った。


帰り際に、振り返って、

その県営住宅の全体を見てみた。


灯りのついている部屋、

ついていない部屋。


ご飯の香りのする部屋、

魚の香りのする部屋、

野菜炒めの香りのする部屋、

味噌汁の香りがする。


何か泣けてくる。

古い県営住宅いいです。


誰かの生活があって、

香りがあって、

何か楽しいので。