第1 設問1

 1 小問1

  まず供述の信用性の判断基準としては、供述内容の合理性、供述態度、他の客観的証拠との合致で判断する。もっともBはAの共犯者であり共犯者供述は巻き込み責任転嫁、罪の軽減といった危険がある以上共犯者の供述の信用性については慎重に判断しなければならない。

  ここでBの供述内容の合理性について検討する。

  まずBの供述についてBが宅配業者を装ってV宅に入り刃物で脅して現金とキャッシュカードを奪った部分、暗証番号を聞き出した部分は証拠①と合致する。次に車がB所有であることも証拠⑤と合致している。次にVから奪った額が500万円というのも証拠①と合致している。したがってBの供述内容にはそれなりの合理性がある。

  次にBの供述態度について検討する。

  Bは、Vから奪った500万円をAとBで分けており分け前はAの方が多い。Aが300万もらった事実は犯行日の翌日300万もの大金を一気に返済していること(証拠⑯)から事実であると考えられる。Aの方が分け前が多い理由として考えられるのはBは昔先輩であるAにお世話になったことへの配慮でありBがAを陥れる可能性が低く巻き込みの危険が低い。したがってBの供述態度は誠実である。

  これを踏まえてBの供述の内、A供述部分の信用性について検討する。

  まず、AがBに「家に金をためているばあさんがいるらしい。一緒にその金を奪わないか」と犯行を持ち掛けているがかかる事実はAに不利な事実であるが前述通りBがAを陥れる可能性は低く、また3月1日の午後8時にAとBで電話のやりとりがあること(証拠⑪)、A宅にV名義のキャッシュカードがあること(証拠⑫)からAはBに犯行を持ち掛けたと推認できる以上信用性がある。

  次に、Aの「親父のだから落としたりするなよ」部分についての信用性についてAがナイフをBに渡した事実についてはサバイバルナイフがAの親父のと一致しており(証拠⑬)、Aの親父はAに貸していないうえ、A方からナイフが発見されており(証拠⑫)AがBにサバイバルナイフを渡した事実の信用性は認められる。

 次に、Aが「カードで金を下ろしてくる」と言った事実については犯行時刻の30分以上後でATM前にAが立っていたとみられる防犯カメラ映像があり(証拠⑦)、キャッシュカードをAが所持しており信用性が認められる。

 次に、Aの「もう使えなかった」といった事実についてはキャッシュカードの利用停止になっているという事実(証拠⑥)があり、引き出す時間帯もおよそ一致している。したがって信用性が認められる。

 以上から検察官は、Aが被告事件に関与したとの供述に高度の信用性が認められると考えた。

 2 小問2

  (1)まず共謀共同正犯が成立するためには、共謀 共謀に基づく実行行為 正犯意思があることが必要である。共謀があると認められるためには犯罪の骨格としての認識の意思連絡および正犯意思があることが必要である。

  本問では、AがBに犯行を持ち掛けておりかかる供述部分に信用性が認められBは承諾しており共謀が成立する。そして共犯者であるBがV宅を襲うという実行行為に出ており共謀に基づく実行行為がある。そしてBは自己の犯罪を実現する意思があり正犯意思がある。

  (2)かかる事実からAに共謀共同正犯が成立すると検察官は考えた。

第2 設問2

 本件で、弁護人はAとBの共謀の事実はないと無罪を主張している。一方で検察官は証明予定事実として共謀の事実を提出していない。公判前整理手続の趣旨としては、充実した公判審理を継続的計画的迅速に行う(316条の2)という点にありかかる趣旨からは争点を明確にする必要があるので検察官に対し、316の21の追加証明事実の提出を求めたと考えられる。

第3 設問3

 検察官は下線部ウでは接見禁止請求をしているがそれはAがBと接見することでBへの働きかけにより罪証隠滅の危険があると考えたからである。これに対し下線部エでは請求をしていないがそれは第二回公判期日において証拠調べは終わっている以上、罪証隠滅の恐れがないと考えたからである。

第4 設問4

 1 小問1

  (1) やむを得ない事由があるか

    本問で、316条の32の上記要件を満たすか。同条の趣旨が迅速な裁判(憲法37条2項)にあることからできる限り早期に審理を終結する必要がある以上証拠調べを制限する趣旨である。そこでやむを得ない事由については厳格に判断する。取り調べ請求につき予想外のことが起こり以前に請求することが不可能ないし著しく困難といえる場合にやむを得ない事由という要件を満たす。

    本問では、Bは証人尋問では覚えていないを繰り返すだけであり取り調べ段階では誠実に話している以上誠実に話すことが期待されており予想外のことが起こっている。そして以前に提出することはしなくても大丈夫だと考えられる以上提出するという判断をするのは困難だったといえる。したがって同要件を満たしやむを得ない事由があったといえる。

  (2) 証拠能力が認められると考えた理由

    まず、調書は公判廷外の供述を内容とする証拠で共謀の有無を立証するために収集提出される証拠といえるので伝聞証拠に当たる。次にBの供述部分につきAの供述部分が含まれており再伝聞に当たる。そして324条1項、321条1項3号の要件を検討する。まず共犯者BはAとの関係で被告人以外の者である。そして絶対的特信情況が認められるか問題となるがBの供述態度は真摯でAを陥れる意図はなかったと考えられ特に信用すべき状況にあったといえる。

   したがって証拠能力が認められると考えた。

 2 小問2

  まず同意とは証拠調べに対するものではなく伝聞証拠に対してのものである。

  次に異議とは309条3項により証拠調べに対するものであるから検察官は異議なしと述べた。          以上

 

最後小問2は過去問であったよな…勿体ない