療育園に大きなヘッドガードをつけた男の子がいる。

よく遊び場で一緒になるのだけど、
その子は多動なのか、足がうまく立てないのか、転がりそうな勢いで動き、常に1人の先生がその子をつかんで、押さえている。
押さえていないと、誰にでも突進し、壁にぶつかってしまうのだろう。

ヘッドガードが外せる状態ではない。
ヘッドガードがないと、彼は頭を強打してしまうだろう。

私も何度か背中からぶつかられたりして、びっくりして振り返ったことがあるが、ひっくり返った彼のヘッドガードの奥の瞳はいつも笑っていて、彼が陽気な性格だということが分かる。

私はなんとなく彼の好意を感じる。
彼は私を見つけると、必死でぶつかってきて、焦点の合わない瞳で笑う。

私は彼にいつも、おはよう!とか、じゃあね!とか声をかけているので、彼が私のことは覚えてくれてるんではないかと自惚れている。

彼は家でもあんなに動き回っているのだろうか。
それとも療育園では興奮しているだけであって、家ではもっと大人しいのだろうか。

私はあまり人に頭が下がるということがないのだけど、彼の母親は文句なしに偉いと思う。

彼は家ではヘッドガードを外せているのだろうか。
彼は可愛い顔をしている。

母親は彼が寝た後に、そっとヘッドガードを外すのだろうか。
寝ている彼の顔を、月明かりのなか、ようやくじっくりと静かに眺めているのだろうか。