満男さんへ

僕は入団してから全選手をライバルとしか見ることができませんでした。もちろん満男さんもそうでした。とにかく試合に出たかったからです。試合に出る前は手強いライバルでした。試合に出る機会が増えて、満男さんと一緒にプレーする時間が増えていく僕に言ってくれる言葉はいつも同じでした。

「ガンガン攻めろ、仕掛けろ。取られたら全部、俺が取り返す。だから後ろは気にせず、仕掛け続けろ」

前線の選手で、そんな背中を押される言葉はこれ以上ありません。

満男さんは、ピッチ上では常に不満そうでした。それは良いプレーがあっても、もっともっと良いプレーを追求する意識、気持ちがあるからです。どんなプレーにも満足がない。次から次へと変化、追求、要求を持ちながらプレーしていました。それは満男さんに言われても教えられてもいません。僕が彼のプレーや姿勢、態度を、練習で試合で見て、体感して感じたものでした。

僕は満男さんに自然と引き寄せられていました。私生活でも気さくでフレンドリーでイタズラ好きな一面のある人です。ファンやサポーターの皆さんには、少し冷たくて愛想悪いと思われている方もいると思いますが、あるファンの方が満男さんに対して失礼なことをしてから、対応が悪くなったと聞いたことがあります。それは僕がプロになる前の話です。

2011年、東日本大震災が起きた時、いち早く何かしなきゃ、何かしようと動いたのが、満男さんです。彼はそういう人間です。人のために、チームメイトのために。自分よりも人のために行動できる人間です。自分の損得や感情より、人が喜んだり幸せと感じることに対し、何のためらいもなく行動できる人です。僕もそんな存在になっていきたいです。彼の活動は2011年だけじゃなく、今現在、そして2019年にも続いていきます。

今年のルヴァンカップ準決勝第1戦で僕がPKを外した時、僕のところに寄ってきてくれて、「俺も何回も大舞台で外してきたから、大丈夫だ」と言ってくれました。準決勝第2戦で「絶対、点を取って勝とう」と、もっと思わせてくれました。そして点を取ることができました。決勝には行けませんでしたが、満男さんのおかげで心はグンと楽になったのを覚えてます。満男さんの言葉は本当に説得力があるし、自然とやれそうな感覚にさせてくれます。

僕は取材を受ける時、「鹿島アントラーズとはどんなチームですか?」、「なぜ常勝軍団と呼ばれるのですか?」と質問されます。僕は即答で、「鹿島アントラーズ=小笠原満男」と答えます。これは毎回です。もちろん本山雅志、曽ケ端準、中田浩二でもあるとも答えます。でもやっぱり、満男さん感が強くて、小笠原アントラーズに改名して欲しいくらいだと僕は思っています(笑)。

そのくらい、満男さんが鹿島アントラーズにもたらしたものは偉大なのです。日本サッカー界全体が、満男さんがどんな選手かわかっている。そんな存在です。そんな人、日本にいません。すごいです。はい。無理です。凄すぎです。優勝しすぎです。勝ちすぎです。うまくて勝てる選手は、満男さん以外いません。

本当にお疲れ様。ありがとうございました。

好き。

土居聖真より