とても爽やかな気分で地元の人たちとお別れしてきました。


沖縄県の八重山諸島にある小浜島。NHKの朝ドラ

「ちゅらさん」で一躍有名になった島。

「マンタが回遊する海」として西表島との間にある海域

「ヨナラ水道」を一目見たい人もやってきます。

島には古くからあるリゾート施設もあり石垣島から高速船で

やってきて泊まる人は結構多い。


「職彩工房たくみ」の加工室から

この来訪者の多さは、島の西端にある小さな漁村集落・

細崎(くばさき)にも無縁でなく、このシーズンは年配の団体

ツアーのお客が毎日、ヨナラ水道見物に小型バスでやってきます。


日々やってくるお客に自分たちの魚を使った加工品を出せないか?

ちょっと頑張ってみようと考えた細崎地区の漁家有志で

「細崎ま~る新鮮隊」は発足しました。


今回は風土倶楽部(http://www.fudoclub.com/ )の朝田くに子さん

のお誘いで、ここの加工品開発に短期間ながら一緒に関わること

になりました。


小浜島への訪問が決まってから、私のところでは、カキやユズ

やカニの仕事に関わる日々の中、休みの日や夜間にゴソゴソと

ブダイやイスズミなど小浜島から送られた冷凍魚を使った試験加工

をちょこちょこ進めておりました。

地元の要望は「魚のできたて加工品をバスから降りて休憩する

お客さんに提供したい」・・・・。


魚の加工は、魚の肉質に大きく影響されます。また、魚肉の

温度管理にも左右されます。ブダイやイスズミといった「瀬もの魚」

というか岩礁地帯につく魚は食性のため季節によって味の差が大きく、

魚屋さん、加工屋さんは敬遠しがち。


しかし、過去に鹿児島の阿久根市などで水産加工品の商品開発

に関わってきたこともあり、その時を思い起こして、今回の魚たちも

下処理によって立派に使えるのではと考えていました。



「職彩工房たくみ」の加工室から
瀬もの魚の魚肉。加工に合うかどうか漁師には重要事。

島を訪れた日、「細崎ま~る新鮮隊」の隊長 比嘉誠さん

が迎えにきて私たち2人を車に乗せて細崎集落へ連れて

行ってくれます。

その車中の話で、人口600人の島で漁家が7軒のみ、比嘉さん

自身を含めて20代の2名が後継者であるということを聞きました。


この比嘉さんと会の副隊長である大城洋一さんが20代。

そして漁業集落の女性メンバーが加工や販売の活動を支え、

これに近所のゲストハウスのオーナー女性、Iターンで島に

定着した人たちなど様々な仲間がこの若手2人を支える形で

わいわいやっています。


試験加工そのものは、魚の温度管理と加工手順を作業しながら

確認し、調味料の配合手順などを伝えて進め、思ったよりも美味

しいものができました。


作業は真剣そのものですが、島コトバも交えてとっても賑やか。

そして質問攻め。

「職彩工房たくみ」の       加工室から  「職彩工房たくみ」の       加工室から

「昔、おばあがこんな風に手作業していたのを見ていたよ。

 久々に思い出した」


「今日の魚にはオジサンが入っているけど、オジサン臭く

 ならないですか?」

 ※)オジサン・・・ヒメジ科。れっきとした和名。ヒゲが生えている。美味。


「魚を冷やすのには氷を直接あてていいのですか?

 間接で冷やすのですか?」


「少し弱ったトカジャ、タマンは使えるでしょうか?」

 ※)トカジャーはニザダイ、タマンはフエフキダイ。

   南の海ではおなじみの魚。


現地で実際に魚肉を手にして感じたのは、ここの皆さんは

魚を大切に扱っていること。

丁寧に下ごしらえされていて、瀬もの魚にありがちな臭みが

ほとんど感じられない。

刺し網漁で捕獲した魚は数が限られるだけに、貴重な獲物を

無駄にしないという意識がしっかり根付いているように思いました。


それだけに、この日の夜、公民館に集まって交流会

(車座で座って楽しむ飲み会)の時に「沖縄本島の市場に出荷したら、

納品書や支払書でなく、請求書を送ってきたことがある」

と若者2人がポソリと話したことは忘れられない・・・・。


「職彩工房たくみ」の       加工室から  

晩に公民館に集まって交流会。三線もあれば、真剣話も出る。


沖縄本島から遠く離れた八重山の漁業者にとっては、

どんなに良い鮮度状態で送っても当日の市場には間に

合わないという距離的なハンデが大きい。よほど需要が

あって本島近海が荒天で値が高いといった時以外には

魚の値は安くなりがち。


魚をせっかく送っても、安すぎて、値がつかず、市場で要した

氷代や手数料で結局損をしてしまった・・・。

「請求書が送られて・・・」は、そのことを意味しています。

こんな話、信じられます・・・?でも実話です。


話を聞いて、うちのスタッフのmakiちゃんの故郷 島根の

隠岐島の話を思い出した。

彼女のお父さんも現役の漁業者だが、島の漁業にとって

地理的なハンデは小浜島と同様に大きい。

鮮度抜群の隠岐の魚介を朝獲れで出荷しても、当日の朝、

境港の魚市場には間に合わない。

境港の保冷庫預かりで翌日の市場に回る魚介は多いという。

隠岐の海士町でCASを導入して直販で活路を見出そうとした

地元の人たちの想いは分かる気がする。


「だから、地元で魚を使って加工したり、体験型漁業で都会の

 子ども達に島の漁業のことを教えたり

といった取り組みにすごく関心があるんです」と若手2人。

先日も2人で静岡県に漁業体験や民泊などの勉強のため

出向いています。


水産加工も体験型漁業もいろいろ勉強していくことが沢山

ありますが、君たちにはそうした新たな取り組みで漁業の良さを

もう一度、来訪者にも魚を食べる人にも伝えて欲しい、

私はそう思いました。


加工品としては当初、「できたてをバスを降りてきたお客に」が

目標でしたが、地魚をいかした加工品を出荷輸送できる形状に

していくこと、さらには日持ちできる加工品の試作までも

踏み込んで実施することになり、いくつか課題を残しながらも

試食の結果には皆さん大体満足のようでした。

「職彩工房たくみ」の       加工室から  「職彩工房たくみ」の       加工室から

私たちが島を離れる前、比嘉さん、大城さんの

隊長、副隊長の写真を撮ってみました。

2人とも爽やかなイケメン。そして、島が大好きで、

島の魚も大好き。

マリンスポーツを楽しみ、三線も弾く・・・・。比嘉さんに

至っては実家の民宿も手伝う。

漁業後継者ということだけでなく、将来が楽しみな島の

若手たちです。


「職彩工房たくみ」の       加工室から

左が比嘉誠さん、右が大城洋一さん


そして、彼らを支える女性メンバーの勉強熱心なこと。

試験加工の成果がめざましかったのはひとえにあなた達の

探求心と頑張りのおかげです。

おばあの知恵が生きたことが見事に立証されましたね!


「職彩工房たくみ」の       加工室から

お別れの時、姿が見えなくなるまで手を振って見送って

くれた皆さんの姿が忘れられない。


また来よう、この島に。


(補足)

福岡に帰ってから、大城隊長からメールが届き、公民館の

交流会で朝田さんと一緒に開設を強く勧めた「ブログの作成」

をアメブロで開設したそうです。(「今日のオジサン」でも何でも

良いから、とかいって2人がかりで言い含めた)

ブログタイトルは「小浜の絶滅危惧種」(最大の危惧種は漁師だよ、

と私たちが言ってたので)。

気合いを入れて、夜中0時に開設したそうな!

こわ~。


皆さん、そちらのブログものぞいて見て下さい。