ムッソリーニの妻
ううう、、でも「小さな村の小さなダンサー(Mao's last dancer)」も一年近くかけて日本公開になったんだから、今度も記録のために書いておこう。。
第62回カンヌ国際映画祭のコンペ作品でもあったから、日本でもアート系劇場でとりあげてもおかしくないし(この時の「同期」はイングロリアス・バスターズとかブライト・スターとか^^)。

その映画とは『Vincere (ヴィンチェレ 勝利を)
2009年 イタリア・フランス制作
イタリアに独裁政権を築いたベニート・ムッソリーニに対して、彼の正妻であることを求め続けた女性イーダの半生を、巨匠ベロッキオが緊迫感に満ちた映像でたどる。熱心な社会主義者だったが、ファシストに転向するムッソリーニ。彼に惚れていたイーダは、全財産を投げ打って支援し、身も捧げ長男を産む。しかし、他に正妻と長女がいたムッソリーニは、イーダを遠ざけていくのだった。
(イタリア映画祭2010より)
ヒットラーやナチスに関する映画はよく目にしても、ムッソリーニはあまり知りません。
1998年フランコ・ゼフィレリ監督の「ムッソリーニとお茶を」を見たくらいかなぁ。
伝記ものの映画、好きなんです。
おもしろく史実を知れて、勉強になるから。
それなのに事実無根の内容があまりにも多い「伝記もの」映画を見るとかなりがっかりします。
例えば「敬愛なるベートーヴェン」(2009/07/21レビュー投稿)とか、「ラフマニノフ ある愛の調べ」2008/05/04レビュー投稿)とか。
ムッソリーニは「女性関係は派手で、関係を持った女性は数百人に上る」そうなんですが、この映画の主人公、ムッソリーニの最初の妻であったというイーダ・ダルセルの悲劇の人生は長い間知られていなかったそうです。
おもしろそう!でしょ。

まず驚くのは、この映画が普通のコンベンショナルな作りではないこと。
ファシズムと深い関係にあった前衛芸術運動である「未来派」を意識した演出なんだそうです。
映画の中に文字が挿入されたり、白黒のドキュメンタリー映像がつかわれたり、オペラの舞台をみているように芝居がかっていたり。
現代美術のようなアートな映像をおもしろいと思えるようになったら、こっちのもの^^話にどんどん引きこまれていきます。
イーダ役の女優さん、ジョヴァンナ・メッゾジョルノは熱演で、本当にもういいじゃないの、あんなオヤジ!、とか、女は引き際も肝心なんだなぁ、、でも若い無一文の頃のムッソリーニをささえて彼の理想を支持した彼女にとって、彼をあきらめるということは自分を否定することと同じだったんだろうなぁ、とか、彼女自身もムッソリーニの野心を共有してたのかなぁ、とかいろいろ考えてしまいました。
そういう気になるのもムッソリーニ役の男前の俳優さん、フィリッポ・ティーミがムッソリーニが年をとってからは本物のニュース映像にとってかわられて(かなりギャップが、、)、フィリッポの方は一人二役で今度は息子役を演じているんですよ。
やっぱりどんなにオヤジでもパワフルでカリスマ性をもった男性に女は魅かれてしまうものなんでしょうかねぇ ^^;
本物のムッソリーニの演説
でもこのフィリッポ・ティーミ、息子役になってからが本当にすごかったです。
彼は自分がムッソリーニの嫡子であると主張を続けて、最後には母親と同じように精神病院にいれられて、27才で生涯を閉じるのですが、その狂気の描写が真にせまっています。
一番の被害者はこの息子なんですよね。なんという悲劇。
サウンドにはフィリップ・グラスの音楽も使われていて、これがはまります!
フィリップ・グラスってこういうの。
とても興味深い映画でした。
堂々星よっつです。
日本でも公開されるかなぁ~。
追記(2011年10月8日):その後日本でも公開されました。
レビューはこちら(2011/03/18投稿)