私は行政書士という仕事をしています。念のため同業の皆様へ業務連絡。
以下は、私たちのアイドルのあの猫ちゃんの話ではありません。
妖精にならないか、とスカウトがきました。
面白そう!なります!
話はすぐ決まりました。ゆるキャラの着ぐるみです。
158センチ。
ごく平凡な身長の私ですが、ホームページ上で公表されている【妖精貸出規程】と【妖精マニュアル】を精読すると、妖精としてはやや大柄なようです。
あまり背が高いと、はみ出る、と。
はみ出る!?何が?
はみ出ませんよ!妖精は、中まで全部、妖精です。
妖精になると決めたからには、さあ準備。
筋トレで体力づくり。当日の持ち物を支度。
長袖のTシャツ、レギンス、靴下、手袋。顔と首と髪を覆うタオル。
全身、肌の露出は禁止です。化粧もだめ。
妖精の内側が汗で汚れちゃ、あっ!
中までが全部、妖精ですってば!危うく口が滑るところでした。
妖精当日。
にわか筋肉で一時的に屈強になった私は、集合時間よりだいぶ早く来て、誰にも挨拶せず、伏目でスルリと控室に入ります。
妖精の秘密を知られてはいけませんからね。
さて、妖精には水分補給が大切です。
アレは暑いからね。熱中症には気をつ、
おっと!なんでもありません。
ところが、控室にはトイレはない。水分を摂り過ぎると途中で困っ、
ああ、妖精ってラクじゃないわね。
にわか妖精は【妖精マニュアル】を見ながら、ポーズやお手ふりを練習。
何をしても、可愛い、可愛い。
アシスタントさんのエスコートで、妖精はヨチヨチとステージに向かいます。
万雷の拍手で迎えられ、スポットライト!
会場のたくさんの「おともだち」に名前を呼ばれて手を振り、いっしょに写真を撮るのです。
妖精、皆のアイドル!胸がきゅんとします。
さて大忙し!
私まで、誰からも見えてやしないのにニコニコ!
大丈夫、どの角度も、どの瞬間も、最高に可愛いのです。
半目になったり、変な顔に写る心配、ゼロ!
こんなにモテモテの時間は、人生でもう二度と訪れません。
じつは、この会の開催までは紆余曲折があったそうです。
主催の団体で、妖精をこの会に呼ぶ企画に反対も多かったとな。
着ぐるみは、大人ばかりの会にふさわしいのか。
余興は、格調高い芸能にすべきではないか。
予算も人手も準備期間も足らず、絞り出した「着ぐるみ企画」は賛否両論。
プロの着ぐるみアクターすら呼べませんでした。
反対するなら、対案を出してくださいよ!打合せは紛糾したそうです。
でも、反対派もステージに上がって、妖精と写真撮影をしてくれたそうです。
さあ、こっち見て!はい、もう1回!スマホのシャッター音がします。
なんとなく、「おとなの事情」は収拾したようです。
会は平和に進行し、親睦は深まり、会の目的は達せられたようです。
もし、あなたのイベントに華を添えたかったら、妖精をご招待するのもオススメです。
短時間で、はしゃいだ雰囲気が出て、おしゃべりが滑らかになるようです。
ステージに写真を撮りに動いたのをきっかけに、お客様どうしの交流が生まれた効果もあったようです。
妖精のお手柄だね!妖精、ひそかにドヤ顔です。
妖精は、おともだちにお手々を振って、妖精の国に帰りました。
私もスーパー銭湯で汗を流して、家に帰りました。