デザイナー三澤慶一さんの美しいデザインにより、「から騒ぎ」のチラシがついにできあがりました!
3月は下記の公演に折り込みチラシが入りますので、お出かけの際は是非ピックアップしてください。
* 東京芸術劇場『おそるべき親たち』
* 世田谷パブリックシアター『神なき国の騎士』
* 吉祥寺シアター、ティーファクトリー『荒野のリア』
公演詳細とチケットは下記へ
http://www.confetti-web.com/detail.aspx?tid=120402
東京大学教養学部の学部報4月号に掲載する原稿を以下のように入稿しました。学内向けの文章ですが、企画意図がおわかり頂けると思います。
新訳・新演出により、本物のシェイクスピアの感動を駒場で!
人殺し(1564)の芝居をいろいろ(1616)書いたシェイクスピア(1564~1616)は今年で生誕450周年だ。これを記念してシェイクスピアの喜劇『から騒ぎ』を駒場キャンパスの21KOMCEE MMホールにて上演する。
駒場で演劇論の授業をすると、答案に「『ハムレット』という小説は……」などと書いてくる学生がいて頭を抱えることがあるが、戯曲は小説ではない。戯曲の言葉は、役者によって発声されて観客へ伝えられることを前提としている。ゆえにシェイクスピアの戯曲を真に理解するためには、ただ読むだけではなく、実際の上演を観る必要がある。
ところが、日本でも本場イギリスでも、現在のシェイクスピアの上演形態はシェイクスピアが生きていたエリザベス朝時代のものとは大きく変わってしまっている。イギリス演劇において、1660年に緞帳(カーテン)が舞台の前におりて舞台装置の転換が行われるようになって以来、西洋演劇の新たな伝統が始まったのだが、シェイクスピアの時代には、緞帳で舞台空間と客席が区切られることはなく、役者は観客に囲まれたなかで演技をしていたのだ。
現在ある劇場は、たいてい演技空間とは別に観客席がある。舞台の前にあるプロセニアム(額縁)によって、そこからこちらは観客席で、あちらは演技空間という仕切りがあるわけだが、シェイクスピアが使用したグローブ座は「張り出し舞台」(スラスト・ステージ)といって、立ち見の観客のなかへ突き出していた。役者は観客と空間を共有していたのである。なんとかしてこうした状況を再現したい――そう考えると、普通の劇場は使えない。そこで、駒場のMMホールなのである。
MMホールのなにもない空間で、観客と一緒に椅子にすわっていた役者が立ちあがって、観客に囲まれながら演技を行うという演出を企んでいる。これはピーター・ブルックのいう「なにもない空間」のみならず、グロトフスキーの持たざる演劇の実験性にも通じる試みとなるだろう。
「なにもない空間」に最もふさわしいシェイクスピア作品はなにかを考えたとき、「その場に立ち会うこと」の現場性が最も重要になる『から騒ぎ』がふさわしいと考えた。この芝居のテーマの一つは誤解であり、会話を立ち聞きすることで真実が明らかになったり、誤解が生じたりする。観客に、登場人物と同じ空間で登場人物と一緒に立ち聞きを経験してもらうことにより、その現場性が明確になれば、この作品の真の面白さが見えてくるだろう。
戯曲の筋は以下の通り。
若く美しい娘ビアトリスは、軍人ベネディックと会えば必ず毒舌合戦を繰り広げる犬猿の仲。この二人を結婚させてしまえと、陽気ないたずらが仕掛けられる。一方、ビアトリスの従妹ヒアローの結婚式の最中に大事件が……。
空間は学内のホールを用いるが、演技は超一流であることが望ましい。そこで今の私に可能な限りな最高のキャストを集めた。ビアトリスに鳳蘭さんの次女である文学座の荘田由紀さん、ベネディックにアメリカのカリフォルニア州立大学演劇科を卒業してステラー・アドラー演劇研究所にてメソッドを習得した髙橋洋介さん、ヒアローの父に元早稲田小劇場(私自身学生時代に大いに関係していた劇団)の小田豊さん、その弟役にタテヨコ企画の西山竜一さん、そして私が講師を務めている新国立劇場演劇研修所の卒業生たちが多数出演する。さらに作曲=後藤浩明さん、ヴァイオリン=下田詩織さん、パーカッション=井上仁美さん、照明=富山貴之さん、演出助手に駒場・表象文化論の卒業生の岸本佳子さんと、スタッフも充実している。
これは実践的なシェイクスピア上演研究でもあるが、観客にシェイクスピア上演の面白さを知ってもらい、感動してもらって初めてこの企画は成功したことになる。観客がどれだけ入っても赤字となるこうした学内企画を再び繰り返すつもりはない。ぜひ真のシェイクスピア公演を今回経験していただきたい。
以上が記事です。
同僚の安西信一が急死した。とても悲しい。同い年だよ。去年「ももクロの美学」を出したばっかりじゃないか。ばかやろう、先に逝きやがって。「おまえもいつ逝くかわからないぜ」と言われた気がする。彼の父親はシェイクスピア学者の安西徹雄先生で、演劇集団円の演出もしていた。亡くなったのは2008年。ついこのあいだだ。安西徹雄先生の真似をするわけじゃないが、及ばずながら学者兼演出家の一歩を踏み出そうとするときに、死をつきつけられてしまった。こうなったら死ぬ気でやるよ、この公演。
蜷川さんから「ばかやろう、日曜演出家、ひっこんでろ」と叱られるのは重々承知のうえで、あえてやります。学者の手すさびじゃありません。いつ死ぬかわからぬ人生で、これこそが「から騒ぎ」だというところを見せます。正攻法で。
河合祥一郎新訳・演出による
「から騒ぎ」公演日程
2014/4/27(日)-4/29(火・祝) 全5回公演
4月27日(日) 13:00- 18:30-
4月28日(月) 19:00-
4月29日(火・祝)13:00★ 18:30-
開場は30分前。マチネにアフタートークあり
★の回のゲストは松岡和子さん
3月は下記の公演に折り込みチラシが入りますので、お出かけの際は是非ピックアップしてください。
* 東京芸術劇場『おそるべき親たち』
* 世田谷パブリックシアター『神なき国の騎士』
* 吉祥寺シアター、ティーファクトリー『荒野のリア』
公演詳細とチケットは下記へ
http://www.confetti-web.com/detail.aspx?tid=120402
東京大学教養学部の学部報4月号に掲載する原稿を以下のように入稿しました。学内向けの文章ですが、企画意図がおわかり頂けると思います。
新訳・新演出により、本物のシェイクスピアの感動を駒場で!
人殺し(1564)の芝居をいろいろ(1616)書いたシェイクスピア(1564~1616)は今年で生誕450周年だ。これを記念してシェイクスピアの喜劇『から騒ぎ』を駒場キャンパスの21KOMCEE MMホールにて上演する。
駒場で演劇論の授業をすると、答案に「『ハムレット』という小説は……」などと書いてくる学生がいて頭を抱えることがあるが、戯曲は小説ではない。戯曲の言葉は、役者によって発声されて観客へ伝えられることを前提としている。ゆえにシェイクスピアの戯曲を真に理解するためには、ただ読むだけではなく、実際の上演を観る必要がある。
ところが、日本でも本場イギリスでも、現在のシェイクスピアの上演形態はシェイクスピアが生きていたエリザベス朝時代のものとは大きく変わってしまっている。イギリス演劇において、1660年に緞帳(カーテン)が舞台の前におりて舞台装置の転換が行われるようになって以来、西洋演劇の新たな伝統が始まったのだが、シェイクスピアの時代には、緞帳で舞台空間と客席が区切られることはなく、役者は観客に囲まれたなかで演技をしていたのだ。
現在ある劇場は、たいてい演技空間とは別に観客席がある。舞台の前にあるプロセニアム(額縁)によって、そこからこちらは観客席で、あちらは演技空間という仕切りがあるわけだが、シェイクスピアが使用したグローブ座は「張り出し舞台」(スラスト・ステージ)といって、立ち見の観客のなかへ突き出していた。役者は観客と空間を共有していたのである。なんとかしてこうした状況を再現したい――そう考えると、普通の劇場は使えない。そこで、駒場のMMホールなのである。
MMホールのなにもない空間で、観客と一緒に椅子にすわっていた役者が立ちあがって、観客に囲まれながら演技を行うという演出を企んでいる。これはピーター・ブルックのいう「なにもない空間」のみならず、グロトフスキーの持たざる演劇の実験性にも通じる試みとなるだろう。
「なにもない空間」に最もふさわしいシェイクスピア作品はなにかを考えたとき、「その場に立ち会うこと」の現場性が最も重要になる『から騒ぎ』がふさわしいと考えた。この芝居のテーマの一つは誤解であり、会話を立ち聞きすることで真実が明らかになったり、誤解が生じたりする。観客に、登場人物と同じ空間で登場人物と一緒に立ち聞きを経験してもらうことにより、その現場性が明確になれば、この作品の真の面白さが見えてくるだろう。
戯曲の筋は以下の通り。
若く美しい娘ビアトリスは、軍人ベネディックと会えば必ず毒舌合戦を繰り広げる犬猿の仲。この二人を結婚させてしまえと、陽気ないたずらが仕掛けられる。一方、ビアトリスの従妹ヒアローの結婚式の最中に大事件が……。
空間は学内のホールを用いるが、演技は超一流であることが望ましい。そこで今の私に可能な限りな最高のキャストを集めた。ビアトリスに鳳蘭さんの次女である文学座の荘田由紀さん、ベネディックにアメリカのカリフォルニア州立大学演劇科を卒業してステラー・アドラー演劇研究所にてメソッドを習得した髙橋洋介さん、ヒアローの父に元早稲田小劇場(私自身学生時代に大いに関係していた劇団)の小田豊さん、その弟役にタテヨコ企画の西山竜一さん、そして私が講師を務めている新国立劇場演劇研修所の卒業生たちが多数出演する。さらに作曲=後藤浩明さん、ヴァイオリン=下田詩織さん、パーカッション=井上仁美さん、照明=富山貴之さん、演出助手に駒場・表象文化論の卒業生の岸本佳子さんと、スタッフも充実している。
これは実践的なシェイクスピア上演研究でもあるが、観客にシェイクスピア上演の面白さを知ってもらい、感動してもらって初めてこの企画は成功したことになる。観客がどれだけ入っても赤字となるこうした学内企画を再び繰り返すつもりはない。ぜひ真のシェイクスピア公演を今回経験していただきたい。
以上が記事です。
同僚の安西信一が急死した。とても悲しい。同い年だよ。去年「ももクロの美学」を出したばっかりじゃないか。ばかやろう、先に逝きやがって。「おまえもいつ逝くかわからないぜ」と言われた気がする。彼の父親はシェイクスピア学者の安西徹雄先生で、演劇集団円の演出もしていた。亡くなったのは2008年。ついこのあいだだ。安西徹雄先生の真似をするわけじゃないが、及ばずながら学者兼演出家の一歩を踏み出そうとするときに、死をつきつけられてしまった。こうなったら死ぬ気でやるよ、この公演。
蜷川さんから「ばかやろう、日曜演出家、ひっこんでろ」と叱られるのは重々承知のうえで、あえてやります。学者の手すさびじゃありません。いつ死ぬかわからぬ人生で、これこそが「から騒ぎ」だというところを見せます。正攻法で。
河合祥一郎新訳・演出による
「から騒ぎ」公演日程
2014/4/27(日)-4/29(火・祝) 全5回公演
4月27日(日) 13:00- 18:30-
4月28日(月) 19:00-
4月29日(火・祝)13:00★ 18:30-
開場は30分前。マチネにアフタートークあり
★の回のゲストは松岡和子さん

