異変が起きている。といっても俺が突然ブラット・ピットばりの二枚目になった!とか家人がアンジェリーナ・ジョリードキドキみたいに整形した、という類のものではない。俺の仕事場である金武湾の海が、今年はちょっとおかしいのである。まず、先日もご紹介したようにサメが異常に多い。潜る漁場によっては一日タンク3本の漁で、毎回サメに付きまとわれたりする。俺が海中で遭遇するサメの種類はナカー(メジロザメ)やマーブカー(レモンザメ)などであるが、刺し網のオジーが操業中に船から目撃したのは、5メートル以上はあるイッチョー(イタチザメ)らしい。こいつはヤバイ。海の中で出会ったら失禁してしまいそうである。それから我が組合の定置網にキハダマグロが頻繁に入るようになった。日頃小魚に慣れている、心臓に異常がある定置の親分は大喜びで日々の酒量が大幅に増え、ニトログリセリンを手放せない始末。更に、水深5メートル程の場所に仕掛けた刺し網に75キロのカジキマグロが掛かるなど、今年の異変を数えればキリが無い。これは何かの前触れか、はたまた驕りたかぶった人間どもへの神の啓示なのか。とにかく今年の冬は注意を怠る事無く、万難を配し操業をしたいと思う。自分の周りを徘徊するイッチョーが突然襲ってきたら、まず鼻面に水中銃を一発お見舞いしたほうが良いのか、海亀のように海底に寝転んでやり過ごしたほうが良いのか、シュミレーションも怠り無く、心の準備は出来ている。願わくば杞憂に終わる事を切に願うのである。あな、おそろしや。