読みの技法(大局観と形勢判断について) | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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オールラウンドプレイヤーを目指す序盤研究ブログです。最近は棋書 感想・レビューのコーナーで、棋書の評価付けもしています。

前回の記事

「大局観とか、何故その手を指したのかとか、そういう部分を書いてほしいんだ。」

というような事を言われた、という事を書いたですけど、

私自身は、独自の形勢判断・独自の決断を下しているという事はありません。

ごくごく平凡に、普通の事を積み重ねていると思っています。


とは言え「普通って何だ?」って疑問はあると思うので、

今回はその辺の事について。


■形勢判断について


形勢判断に必要な要素は、


1,駒の損得

2,駒の効率

3,玉の安全度

4,手番


の4つです。


これら4つは序盤・中盤・終盤によって、その価値を変えていくのですが、

面白い事に、序盤と終盤では「価値の逆転現象」が起きているのです。


形勢判断・価値判断表
順位・優劣 序盤 終盤
1位 駒の損得 手番
2位 駒の効率 玉の安全度
3位 玉の安全度 駒の効率
4位 手番 駒の損得

表を見て分かる通り、

序盤で最も重要だったものは、終盤で一番不要になり、

序盤で最も不要だったものが、終盤で一番重要になっています。

(というより順位自体がまるっきり正反対になっている、と言った方が良いですね)


この中でわかりやすいのは手番と駒の損得についてでしょう。


駒をたくさん持っていても、詰まされたら負けなのだから、終盤では駒の損得は価値が低く、

初手の段階で先手が必勝という事はありえないので、序盤では手番の価値は低いのです。

そして、4要素の内の3要素、


1,駒の損得

2,駒の効率

3,玉の安全度


については、それぞれに優劣がついた場合の基本的な考え方というものがあります。


要素に損得が生じた場合の考え方
要素
駒の損得 ゆっくり 急ぐ
駒の効率 急ぐ ゆっくり
玉の安全度 急ぐ ゆっくり

■駒得をした場合に、何故ゆっくりした指した方をするのか・・・


銀一枚得したと仮定して、絶対に、必ず銀一枚の価値が高い状態というのは

初形で銀を得している状態でしょう。

多少なりとも局面が動いていると、銀一枚の価値と言うのは減ってしまうのです。

(駒の効率や玉の堅さに差が生じていると、銀一枚分の損をカバーされてしまうかもしれません)


もちろん初形に戻すことは不可能ですが、

局面の速度を落として、駒得の価値が増す局面を作ってあげるのが大事です。


逆に、駒を損した場合は急がなくてはいけません。

例えば横歩取りは、後手が一歩損するところからスタートしますが、

そのまま後手が持久戦にしてしまうと、必ず一歩損は響いてきます。

この場合、後手は何らかの手段で局面が動いていくように仕向けていく必要があります。


■駒の効率が優る場合に、何故急いだ指し方をするのか・・・


駒の効率というものを、手得・手損で考えてみると分かりやすいと思います。


初手から一方的に10手指し、10手対0手の局面を作り上げれば大差になるでしょう。

しかし、そこからお互いに50手指し、60手対50手の局面になると、どうでしょうか。

最初に指した10手の価値は、かなり目減りしている感じがします。


駒の効率は、手が進むにつれて価値が減りますので、

駒の働きで良くなった場合は、そのまま押し切るのが理想的になります。


逆に、駒の働きが悪い場合は、局面を長引かせる事が重要です。


■玉の安全度が相手より優る場合に、何故急いだ指し方をするのか・・・


これは終盤戦を考えればわかります。


終盤で「玉の安全度」の価値が高い事は、誰しもが理解できるところですが、

つまり玉形が堅いほど詰まされ難く、強い戦いがしやすいという事です。


相手玉が自玉より弱いと判断すれば、急いだ指し方をして、

一手を争う終盤戦に持ち込んだ方が有利に戦えるという事です。



ただし、上に書いた青太文字の見出しの内容は、

本記事一番上の表、形勢判断・価値判断表によって評価が変わる場合があります。


原理原則としては、

序盤では、序盤で重要なものを。

終盤では、終盤で重要なものを。

それぞれ考えていく事が大事です。



では次に、中盤での形勢判断について考えていきます。


中盤は、序盤と終盤の「価値の逆転現象」が起こる真っ只中ですから、

形勢判断が一番難しいです。


中盤で考えなくてはいけない事は、

「駒の効率」と「玉の安全度」によって、一局の方針をシッカリ立てていく事です。


ではどのように方針を立てていくのか。

まずは「駒の効率」について見ていきましょう。


駒の効率の方向性による、一局の方針
駒の効率の方向性 一局の方針
攻め・スピード型 急ぐ
受け・バランス型 ゆっくり


■攻め・スピード型の場合


攻め・スピード型の代表に、棒銀や振り飛車に対する急戦などが考えられます。


こうした急戦策では、

仕掛ける前に間合いをはかったり、駆け引きをしたりっていう事はあるんですが、

基本的に、攻め始まったら途切れないように指す事が要求されます。


よって、一局の方針は「急ぐ事」になります。


逆に言えば、攻めが途切れた段階で、作戦はほぼ失敗と言えるでしょう。

(戦略的に攻めを一時休止している場合は別ですが。)


■受け・バランス型の場合


受ける側の基本姿勢は、自玉が終盤を迎えない事です。

また、自玉が終盤を迎える頃には、相手玉も危険な状態にしている事が大切です。

※稀に受け潰して勝てる場合もありますが、

それは相手が攻める準備を怠った場合です。見極めましょう。


相手が正しく攻めの陣形を作って、勢い良く攻めてくる場合は、

局面を緩やかにして、自分の反撃が間に合う態勢作りが必要です。


よって、一局の方針は「ゆっくり指す事」になります。


また、右玉に代表されるようなバランス型の将棋では、

駒を全体的に使っていく事が要求され、理想の態勢までに手数が掛かります。


これもやはり一局の方針は「ゆっくり指す事」になります。



では次に、玉の安全度について見ていきましょう。


玉の安全度の方向性による、一局の方針
玉の安全度の方向性 一局の方針
堅い 急ぐ
厚い ゆっくり


玉が安全、と一言で言っても、

「堅くて安全」という場合と、「厚みがあって安全」という場合があります。


「堅い」と「厚い」の違いは

堅い・・・密集

厚い・・・立体

と、なります。


実戦でのイメージは

堅い・・・玉が攻められても、大丈夫

厚い・・・玉が攻められにくいから、大丈夫

となるでしょう。


当然、

「堅い」の場合は、自陣に侵入されても大丈夫ですし、

「厚い」の場合は、自陣に侵入されないように注意する事になります。


よって、

「堅い」の場合は急ぐ事が可能になり、

「厚い」の場合はゆっくり指す必要があります。


■駒の効率と玉の安全度を複合的に考える


駒の効率と玉の安全度を見てきましたが、

実戦では複合的に考えていく事になります。


細かい話は、後に触れる「大局観」の項目で書くとして、

ここではそれぞれの項目同士の相性を見てもらいます。


駒の効率と、玉の安全度の方向性の組み合わせ
駒の効率+玉の安全度 一局の方針
攻め・スピード型+堅い 急ぐ
受け・バランス型+厚い ゆっくり


一概に、この組み合わせが良いという意味ではありません。


厚みのある攻めの陣形も理想形になりますし、

受けに回っているなら玉が堅い方が安心です。


ただし、一局の方向性が揃っているという意味では、

こうした組み合わせを知っているのも良いでしょう。


お互いがお互いを引き立てやすい、スペシャルコンビになります。


他の組み合わせを前述の例で示すと、

厚みのある攻めの陣形・・・ゆっくり押し上げるように攻める

玉が堅くて受けている場合・・・どこかで厳しい反撃をする

というように、

攻めてるけどゆっくり、とか、

受けているけど厳しく、とか、

一局の方針が変わるケースが出てきます。



■大局観について


ここからは、大局観について触れていきましょう。


と言っても、例が数限りないですし、

私程度では説明しきれないんですけど・・・


とりあえず、先ほど「難しい」と書いた、中盤での形勢判断に基づいて、

大局観というものを考えていきましょう。


テーマ1 居飛車急戦 対 四間飛車
将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

一局を通じた方針と大局観
進行度 居飛車 振り飛車
序盤

攻め・スピード型

受け・バランス型+堅い
中盤

攻め始まったら途切れないように

自分の反撃が間に合う態勢作りが必要
終盤

玉形が弱いので、

緩やかに終盤を迎えたい。

自陣に侵入されても大丈夫

強く戦いたい。

大局観

攻めが主体ではあるが、

終盤に向けて速度を落とすべし。

一手争いで勝てそうなら、

踏み込む事にはなるが、

一定の戦果が挙がったら、

自玉の安全度をカラめにチェック。

自玉は堅いので、

相手の攻めに乗って

速度を上げ、終盤に臨みたい。

反撃の余地を残して戦えば、

チャンスがある。


ケース2 居飛車穴熊 対 四間飛車美濃
将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

一局を通じた方針と大局観
進行度 居飛車 振り飛車
序盤

堅い

受け・バランス型
中盤

攻め始まったら途切れないように

自分の反撃が間に合う態勢作りが必要
終盤

自陣に侵入されても大丈夫

強く戦いたい。

玉形が弱いので、

緩やかに終盤を迎えたい。

大局観

攻めが継続出来れば、

攻め・スピード型+堅い

というスペシャルコンビが成立。

アクセル全開で戦えれば、

勝機がある。

相手に足の速い攻めを許すと

勝ち目が薄い。

緩やかに中終盤を迎えて、

攻めが間に合う態勢作りをしたい。



注目して頂きたいのは、

急戦なのに、終盤は緩やかにしたり、

ガンガン攻めたいけど、序盤は自玉に手をかけたりして、

一局を通じて、急いだり、緩やかだったりする事は、なかなか出来ないという事です。

(その点、スペシャルコンビが実現すると、方針が一定になるので楽は楽。)


ここら辺がわからず、

「攻め始まったら止まらないよ!」って感じで自玉を顧みない人や、

「自玉第一なんだ」って感じで踏み込み時を失っている人、

あるいは無意味に緩急をつけている人は、

大勢居ます(私の事です)。



大局観というと、

一人ひとりの持つ感性のようですが、

大筋では、形勢判断によって論理的に解明できるはずです。


もっとも、個々の能力は当然ありますから、

急ぐのが苦手だったり、逆に緩めるのが苦手だったりするでしょう。


そういう場合は、序盤から自分の得意な展開になりやすいものを選びましょう。


ちなみに私は、序盤から急ぐ展開があまり得意ではありません。

よって、振り飛車が自分に合っているという判断をしています。




長文だったので、読むのが大変だったと思いますが、

いかがだったでしょうか?


がむしゃらに今の局面を読むのではなく、

今何をする事が理想の将来に結び付くのか、

という考え方を常に出来るかどうかが大事だと思っています。


少なくとも、形勢判断は習慣化したいですね。

読むだけで精いっぱいという方は、もっと広い目で局面を見る癖をつけましょう。


・・・偉そうなことを言っている私も、全部こなすのは大変なんですけどね。