「Youtuber」が教える雁木 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。雁木師でございます。最近、将棋のプロ棋士の方が次々と「Youtuber」デビューされています。将棋で「Youtuber」と言いますと、以前もお話したアゲアゲさんこと折田翔吾四段を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私はプロ棋士も含めて将棋のYoutubeを見る機会は少ない方です。ちなみに、私がついつい見てしまう動画は音楽、野球、相撲、紙兎ロペなどです。将棋系Youtubeは、一時期この方の動画をよく見ていました(ちなみによく見ていたのは詰将棋の動画です)。

 

 

さて、今回紹介する書籍はプロ棋士Youtuberの先駆けともいえる「イトシンTV」の制作者、伊藤真吾五段が出された雁木の戦術書です。

 

「マイナビ将棋BOOKS

よく分かる雁木

をご紹介します。

マイナビ出版より、今年3月に発売されました。ここで伊藤真吾五段(将棋界は伊藤姓の棋士も引退した棋士中心に多いのでフルネームでご紹介させていただきます)についてご紹介します。

伊藤真吾五段は2007年に四段昇段。三段リーグで2度次点を獲得し、フリークラスに編入する形でプロ棋士デビューを果たしました。師匠は桜井昇八段で、同門に中田宏樹八段、飯島栄治七段、村山慈明七段などがいらっしゃいます。2011年に竜王戦5組昇級と同時に、順位戦の参加資格を獲得。朝日杯ではベスト4の実績もあります。

もともとは振り飛車党で、振り飛車関連の書籍も出されていましたが、最近は居飛車党としてご活躍中です。現在は竜王戦は4組、今期の順位戦はC級2組で戦います。

前述の「イトシンTV」は昨年3月に開設。将棋初心者の奥様に一から将棋を教える「嫁P企画」が好評を得ています。

 

 

 

では書籍の内容に入ります。本書は雁木に特化した構成で全10章から成り立っています。順に見ていきます。

第1章:先手矢倉VS後手雁木急戦…先手が矢倉囲いを狙い、後手が☖5四銀型雁木で速攻を仕掛けるという局面の解説です。先手はうかつに☗8八玉と入城すると危険に陥る筋が書かれています。

第2章:角換わり封じの☖4四歩止め雁木…最近大流行の角換わりを避けるために、後手が☖4四歩と角道を止めて雁木を目指す将棋の解説です。ここでも、先手が☗8八玉と入城した場合の変化が書かれています。

第3章:相雁木…お互いに「ツノ銀雁木」を狙った局面の解説です。後手が右玉に囲う変化も出てきます。

第4章:相雁木右玉…お互いが「ツノ銀雁木」の囲いの進行から、右玉に変化するという局面の解説です。未開拓の部分が多く、これからの面白い将棋として取り上げられています。

第5章:4手目☖4四歩型雁木…後手が4手目に☖4四歩と角道を止めてから雁木に囲う局面の解説です。先手は左美濃で対抗します。

第6章:☗5七銀型雁木VS☖後手腰掛け銀型雁木…先手が現在では「旧式雁木」と呼ばれる☗5七銀型雁木に構え、対する後手は☖5四銀の腰掛け銀から左美濃~雁木狙いの局面の解説です。後手が右四間飛車から積極的に動く筋を解説されています。

第7章:☗8八銀型ー☖4四歩型…先手は従来「悪形」とされていた☗8八銀型の囲いに対し、後手は☖4四歩と角道を止めて雁木に構える局面の解説です。なぜ、悪形が見直されたのかを手順を踏まえて分かりやすく解説されています。

第8章:☗5六銀型左美濃VS☖5三銀型雁木…先手が☗5六銀の腰掛け銀+左美濃に構え、対する後手が「旧式雁木」の☖5三銀型雁木で対抗した局面の解説です。先手が後手の☖8五歩と飛車先の歩を突いた手に対して、受けた場合と受けなかった場合の解説です。

第9章:実戦編…伊藤真吾五段の雁木に関する自戦譜の解説です。3局掲載されています。

第10章:次の一手問題…伊藤真吾五段の雁木にまつわる実戦から、次の一手問題が5題出題されています。

また、合間にはコラムとして、前述のYoutubeや散歩、Mリーグまで様々なコンテンツについて書かれています。

 

特徴としては、タイトルの通り雁木に特化しているので相雁木の将棋を除いて雁木側優勢かと思っていましたが、必ずしも雁木側が優勢のみの変化だけではなく、受けて立つ側にも有利になる変化が書かれています。また、昔の悪形が見直された背景にも簡単に触れられています。

変化に関しては、攻める変化を中心に書かれています。特に、いきなり踏み込んでいくとどうなるか、ついついやってしまう手からの変化も書かれてタイトルの通り分かりやすいです。

 

実際に盤に並べて読んでみた感想はというと…、将棋の基本や格言に沿った筋が多いと感じました。特に目立ったのは突き捨ての手筋でしょうか。ここにも「開戦は歩の突き捨てから」という格言が使われています。

文章の表現が分かりやすいこともタイトルを際立たせています。難しい変化がそんなに多くないことも影響しているでしょうか。章の数は多いですが、分岐が少ない章もあるので手軽に読めるかと思います。

実戦編では実戦の背景や対局者の心理が丁寧に書かれています。臨場感を感じる表現が多く、プロの将棋の面白さ、怖さが伝わってくる自戦記です。

 

 

何度も言いますが、本書は雁木に関する書籍です。居飛車党の方は特に読んでおきたい1冊かと思います。これまでに雁木に関する本は稲葉陽八段の「新型雁木のすべて」、小林裕士七段の「とっておきの雁木破り」の2冊をご紹介してきましたが、この2冊と比較して読んでみても面白いかもしれません。対策本としても有効に使えると思いますので、お手に取って、読んでみてください。

 

 

 

この本を読んで将棋が好きになった、将棋が強くなったというお声をいただければ、これほど嬉しいことはありません。読者の皆様が将棋の本を読んで将棋が好きになる、将棋の力が強くなることを祈念いたします。なお、次回の書籍紹介は7/3(金)を予定しています。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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