One Step 82 | 櫻葉妄想Story〜陽だまりの中で〜

櫻葉妄想Story〜陽だまりの中で〜

大好きな櫻葉ちゃんのお名前でお話を書いています。
個人で楽しむために書き始めたものなので
苦手な方は御遠慮下さいませ。




〖 side:S〗





バレンタインからひと月、ホワイトデーが近づいた。
去年のホワイトデーは、時間的に余裕がなくてサラッと済ませてしまった。
だから今年は…





「雅紀、週末泊まりで出かけるぞ。」





「え、泊まり?」





「少し息抜きも必要だろ。」





ふたりで久しぶりにプチ旅行に行こうと思った。
金曜の夕方に出て日曜の夜には戻ってくるから2泊しか出来ないけど、ふたりだけで違う土地で誰の目も気にせずに過ごしたい。





「2泊するからな。
金曜日、学校が終わったらすぐ出発な。
あと2日しかないから荷物の準備しとけよ。」





「どうして旅行?
それに、翔ちゃん仕事…」





「俺を誰だと思ってる?フフフッ。
んなもん、このひと月計画立てて動いてたんだ、キッチリ定時で帰るぞ。」





心配する言葉とは裏腹に、雅紀の表情が全てを語っていた。
やっぱり旅行にして良かった。
普段ふたりで外を歩くなんてなかなか出来ないから、俺たちのことを誰も知らないところなら雅紀も周りを気にせず過ごせるはず。
前に旅行に行った時も楽しかったって言ってたしな。





「でも翔ちゃん、旅行って?
それにどこに行くのか教えてくんないの?」





「内緒。」





雅紀にどこに行くのか教えろと言われながらも内緒で押し通した。
前に旅行に行った時は、少し大人の旅行になったから、今回はベタな場所に連れていきたい。





「ちゃんと準備しろよ?
さぁ!あと2日、楽しみだな♪」





旅行って決めた時から仕事は調整してきた。
急なものはその日のうちに済ませたし、先の分までちゃんと考えて動いてきた。
やり残したことは…





「翔ちゃん、ちょっといい?」





仕事部屋のドアの向こうから雅紀の声が聞こえた。





「入っていいぞ。」





ー ガチャっ





「どした?」





雅紀が何か言いたげな顔をしてる。
突然、旅行って言われて戸惑ってる?
どうして旅行に…なのかだけはちゃんと言っておかないと納得してくんないかもな。






「あのな、旅行に行きたいのは俺。
お前が喜ぶ顔がみたくて決めたんだから、お前は素直に喜んでくれていいんだって。
バレンタインのお返しだからさ。」





「ホワイトデーってこと?」





「そうだよ。
それと、お前頑張ってるから時間にゆとりがあるうちに少しでも一緒に過ごしたいなって。
4月からは3年になって、今よりもっと余裕なくなるからな…。
授業だけじゃなくて補講とか出てくるし、日曜は予備校に行ったり、休日もあって無いようなもんだし。」





来月からは本格的に勉強漬けの毎日になる。
雅紀の夢のため、俺はできる限りのサポートをしたいし、支えになってやりたい。





「俺もお前と一緒に未来に進んでいきたいからな。」





「翔…ちゃ…。」





「ほら、笑え!可愛い顔が台無しだぞ。」





涙でグチャグチャになって声も出ない雅紀を抱きしめる。
背中をゆっくり撫でてトントンと叩いた。





「お前のためならどんな事でもやってやりたいんだよ。
俺の気持ちだから受け取って。」





「ありがと、楽しみにしてる。」





腕の中からさっきより明るい声と、涙で濡れた雅紀の笑顔が見えた。