One Step 78 | 櫻葉妄想Story〜陽だまりの中で〜

櫻葉妄想Story〜陽だまりの中で〜

大好きな櫻葉ちゃんのお名前でお話を書いています。
個人で楽しむために書き始めたものなので
苦手な方は御遠慮下さいませ。




〖 side:S〗





一昨日、久しぶりに雅紀と喧嘩した。
俺なりに考えて言ったんだけど、雅紀にとっては違ったんだよな。
雅紀の気持ちを優先して俺が折れたけど、すぐに仲直りできてよかった。





今日は、喧嘩の原因になったバレンタイン。
昨日の夜は雅紀が楽しそうにチョコを作っていたから、キッチンを覗いてみようと近づいたら、「楽しみにしとけ」って怒られた。
仕方なくキッチンから離れてリビングから雅紀を見ていると、楽しそうに作っていたからそれだけで幸せな気持ちになった。





そして今朝はいつも通りに起床。
いつものように朝の支度をして、いつものように玄関でキスして家を出た。
「今夜帰ってからな」って、玄関のドアを開ける前に、ニコニコ笑う雅紀に言われた。
嬉しいんだけど、そこまでしなくてもいいんだよって気持ちもあって…。





車に乗って学校近くまで走らせる。
最近はこの時間に雅紀と話すのは勉強のことばかり。
今朝もそんな話をしていたら、あっという間にいつもの場所に到着した。





「それじゃ、行ってくる。」





「雅紀、今夜はなるべく早く帰るから。」





「わかった。
翔ちゃんも行ってらっしゃい。」





どこで誰に見られているか分からないから、車を降りる前は行ってきますのキスの代わりにお互いの手をギュッとするのが日課になった。
雅紀の手をギュッと握る。





「気をつけてな。」





手を離して車を降りた雅紀の後ろ姿を見つめて、今日も頑張ろうと思いながら学校に向かった。





学校に着いて日常が始まる。
予想はしていたけど、朝から何人かにチョコを貰った。
もちろん義理で…だけど。





「凄いね〜♪朝からモテモテ。」





その声に振り返る。





「そっちも貰ってるんじゃないの?」





「俺はカズ一筋だからね〜♪」





大野先生がポケットに手を入れながら通り過ぎていった。





「俺だって…」





「分かってるって。
で、そのチョコどこに持ってくの?」





どこに置いておこう。





「ねぇ、預かっててくれない?。」





「いいよ、保健室に置いとく?」






大野先生に預かってもらって授業に出た。
仕事をしながら空いた時間にふと雅紀のことを思い出す。
あと1年もすれば受験も終わっている。
俺たちはどんな未来を歩き出しているんだろう。
最近はそんなことを考えることが多くなってきた。
楽しみでもあり、不安でもある。





1日が終わる頃にはそれなりの量のチョコを貰っていた。
帰る前に保健室に寄って大野先生から受け取り、あまり持ち帰りたくないと思いながらも生徒からのものを捨てるわけにもいかず…。
紙袋に入れたチョコを持って家に帰りついた。





「ただいま。」





「おかえり。」





リビングの方からひょこっと顔を出した雅紀が出迎えてくれた。
チラッと紙袋の存在を確認するのがわかる。
それでも何も言わないんだよな。
それは去年も同じだった。





「翔ちゃん、風呂入ってくる?」





リビングに入るとキッチンに向かう雅紀の後ろ姿。
その背中を無性に抱きしめたくなって、何も言わず引き止めた。





「翔ちゃん、どうした?」





振り返ろうとするその背中に顔を埋めた。
いつもと同じ雅紀の匂い。
何度もその背中を抱きしめてきた。
どうしてだろう…また不安な気持ちになる。
この子が俺のところから去っていく日が来るのかな…。
そんなことばかり今日は考えてしまう。





「翔ちゃん、風呂は?」





「ん、入ってくる。」





「なんかあった?」





「いや、大丈夫。」





少しだけ…そう思っていたら、





「翔ちゃん、離して。」





雅紀に言われて手を離した。
すると…





「んっ、どうした?」





雅紀に正面から抱きしめられた。





「なんでもない。
俺がこうしたかっただけ。」




雅紀の髪が頬をくすぐる。
スリスリと押し付けてくる仕草が可愛くて仕方ない。
すると…





「翔ちゃんが何を考えてんのかよく分かってないけど、俺はずっと翔ちゃんの傍にいるからさ。」





その言葉に胸がギュっとして、涙が出てきそうになる。
奥歯を噛み締めて力強く抱きしめ返した。





「翔ちゃん、苦し…」





「ありがとな。」





「ふふふっ、どういたしまして。」





この先どんな未来が待ってるかなんてわからないけど、雅紀が大人になっていくのを隣でみていたいと、その気持ちはますます強くなっていった。