One Step 70 | 櫻葉妄想Story〜陽だまりの中で〜

櫻葉妄想Story〜陽だまりの中で〜

大好きな櫻葉ちゃんのお名前でお話を書いています。
個人で楽しむために書き始めたものなので
苦手な方は御遠慮下さいませ。



〖 side:S〗





お袋から連絡がきてから1週間。
実家に向かって車を走らせた。
せっかくの休みなのに雅紀と一緒に居られないなんてな…。





家を出る時、雅紀が笑って言ってくれた。
「待ってる」って。
その言葉を聞いて、穏やかな気持ちで実家に向かえたと思う。
やっぱり雅紀の存在って大きいんだな。
よし、俺も気持ちを全部話してこよう。





実家に着いて玄関に入った。
声をかけるけど返事が無い。
居ないはずはないんだけど…と思いながら中に入ってリビングへ向かいドアを開けた。





「あら、早かったのね。
今来たの?気が付かずにごめんね。」





俺がドアを開けてはじめて気づいたらしい。
そんな母親が普通に話す。





「父さんは?」





「書斎にいるわよ。」





自分の気持ちがふらつく前に早く話がしたい。
あの長い廊下を足早に抜けて書斎のドアを叩いた。





ー  コンコン…





「父さん、翔です。」





「入りなさい。」





親父の声を聞いてドアを開けた。
中に入り、奥の方に座る親父の背中を見つけた。
話したいことが何なのか分かってる。
でもその願いは俺には叶えられない。





「父さん、話があるって聞いて来たんですけど。」





「まあ、そこに座りなさい。」





俺がソファに座ると、正面に親父が座る。
目をそらさず親父を見つめた。
どう切り出してくるのか…。





「教師はどうだ、楽しいか。」





「楽しいとか楽しくないとかじゃありません。
やり甲斐を感じています。
だから今の仕事を辞めるつもりはありません。」





「そうか、辞めるつもりは無いのか…。」





親父が少し寂しそうに見えたのは思い違いか?
櫻井の事業を継ぐなんてこと、今まで考えたことなど無かった。
もちろん、誰かがいつかは継がなくてはいけないことも分かってる。
でも俺には出来ないことだと思ってるから。





いろんなことを考えていると、親父がゆっくり話し始めた。





「うちの事は気にしなくていい。
お前は自分の思った道を進んでいけばいい。」





その言葉に思考が止まってしまった。
…と言うか、どういうことなんだと考えがまとまらなくなってしまった。





「え…それって、家に戻らなくても…」





「あぁ、そうだ。」





ちょっ…と、待ってくれ。
あれだけ櫻井の家を継ぐんだと言われてきた幼少時代はなんだったんだ。
そんなに簡単に、あっさりと終われる話だった訳じゃないだろ?





「なんで急に…」





「急じゃない、ずっと考えていたことだ。
ただ、話をしようと思っても上手く伝えられなかったり、お前が話を聞こうとしなかったりしてここまで来てしまったんだ。」





「会社は…櫻井グループはどうするんだよ。」





「…心配はしてくれるんだな。」





小さな声でそう言った親父は、これからの会社のこと、まだまだ自分が元気なうちは頑張ることなどたくさん話した。
今の俺のこともそこそこ知っているようだったけど、特には言われることは無かった。





それからも親父に俺の思ってきた気持ちをきちんと伝えた。
親父も分かっていたようなことを言っていて、自分の気持ちを言えた俺はスッキリとした気持ちで家を後にすることができた。





帰りがけに母親に、





「お見合いの話も何件も来ていたのよ♪」





なんてニコニコしながら言われたことは、雅紀には黙っておくことにする。





「さ、雅紀のところに戻ろう…。」





車に乗ってアクセルを踏んだ俺は、俺たちの家に向かってスピードを上げた。