【Day77 Camino de Santiago】2025.11.19 巡礼者の影(1) | ちびタンクのひとりごと

ちびタンクのひとりごと

大好きな旅のこと、心理学・スピリチュアル・ヨーガのこと、日々の気づきなどをつぶやいています♪

長くなったので4話に分かれています

ーーー


【Day77 2025.11.19 ネグレイラ→サンティアゴ20km】


いよいよ最終日。

20kmではさほど早く出発する必要はないが、結局7時過ぎには歩き始めてしまった。

まだ暗いので天気はよくわからない。

雨は降っていないが道路は濡れている。

星が見えないということは、曇りだろうか。


町はずれに開いているバルを見つけると、早速カフェ・コン・レチェの休憩をした。

まだ疲れていないが、歩きの合間のバル休憩が取れるのもこれが最後だろう。

朝食をろくに取っていなかったので、小振りでもチュロスとパウンドケーキのおつまみがありがたかった。

これで1.3€だから本当に驚きだ。

支払いを済ませてバルを出る時、店主が”Buen Camino“と声を掛けてくれた。

言う方ではなく、言われる方だったことを思い出した。


私は山道を歩きながらluckyペンダントに話しかけた。

彼女はムーミンのミーみたいな性格で、何か話しかけても“知らないわよ”とか“どうせ〇〇でしょ”とか、そんなことしか答えない。

しかし、結局その答えはいつも的を得ていた。


私は新たに注文したCaminoペンダントのことを考えていた。

“i”のところにluckyペンダントと同じダイアを入れたいとお願いしていた。

“ホワイトダイアモンドをセレクトさせていただきますね”

ジュエリーデザイナーでもあり、スピリチュアルのメンターでもある彼女からは、そう返信が来ていた。


Luckyペンダントとおしゃべりしていると、”私もCaminoペンダントに会いたいんだけど”と珍しく彼女が自分の意向を言う。

“機会があればね“と今度は私がミーみたいな返事をした。


LuckyペンダントとCaminoペンダントが揃ったら、可愛いだろうな。

その姿を想像した。

金色のレターに輝く白いクリスタル。


そう思った時、何か違和感を感じた。


どちらも白?


二つはツガイで、補い合って成立する。


白と黒、、、


、、、ブラックダイア?


あああ。

もう本当に、こうやって浮かんできてしまうの止めてほしい。


私に黒は似合わないし、可愛さにも欠ける。

私の好きなブルーとか、カミーノなら矢印のイエローとか、他にも色はあるではないか。

理屈では拒否するものを、なぜ選択しなければならないのか。


しかし結局、降りてきた直感からは逃れられない。


私は歩きながら彼女に連絡を入れた。


“ブラックダイアモンドってありましたっけ?

Caminoペンダントに入れる石、それにしようかと。”


彼女からは“ありますよ”とすぐに返信が来た。


私は改めてLuckyペンダントとCaminoペンダントが揃う姿を想像した。

それはとても美しく輝き、特別なパワーを秘めているような気がした。

まるでアルケミストに出てくるウリムとトンミムみたいだなと思った。

YesとNo、どちらか一つでは成立しないのだ。


こうやって一人で歩いていると、昨日の感覚がまた蘇る。

この旅で出会った全ての人が、私の幻想なのではないか。

こんな人たちがいてくれたら。

こんな家族だったら。

その時、私はこんな風に振る舞えたら。


いや旅だけではない。

これまで出会ったすべての人々。

全ての出来事が幻想だとしたら。


何も存在しない。

私自身も。


しかしここに、意識だけはある。

その意味はわからない。

ただそれが事実ならば、ありたい自分でいるだけで良い。

ごちゃごちゃ考える意味すらない。


頭上には青空が広がっていた。

しかし向かう先は大きな雨雲が空を覆っている。

こちらは雨でも良いから、せめて今日だけはサイモンが歩く道を照らしてください。

そう祈った。

サラマンカの時とは違い、サイモンからはどこにいるとか、何時につくとか、なんの連絡もなかった。


私は、どうせサイモンは遅くに着くだろうし、運命が噛み合えば会えるだろうとタカをくくっていた。


途中、赤い傘に白いポツポツがついたキノコを見つけると、ジョンに写真を送った。

彼が好きそうなキノコである。

ジョンはすぐに返信してくれた。

その辺りはやたらとキノコが生えていて、見つける度に写真を送っていたら随分と時間を食ってしまった。

さらにフィステーラに向かう巡礼者が私に興味を示し、長い立ち話になってしまう。

これでは一向にサンティアゴに着かない。


あれだけ余裕に感じていたのに、私は急に焦りを感じた。

タイミングを逃したらサイモンに会えないのではないか。


最後だと言うのに、急に忙しなく歩き始めた。

それでも大聖堂が見えると興奮し、さらに街に入るとやはり嬉しさが込み上げて来た。

とうとう、やり遂げたのだ。

ーーー

つづく