フランスのおじさん、マルセルは御年80。
高身長に細い脚、薄黒い肌、短くかられた髪、ゆっくりと微笑む姿は、私にモーガンフリーマンを想起させた。
消防士と軍人を経て60歳でカミーノデビューし、以来11回目のカミーノを歩いているそうだ。
初めての歩き仲間は特別な存在だ。
それはカミーノでもvia Francigena でも変わらない。
これを言うと誰しもに“はああ?”と言われるが、私は自称、人見知りである。
気を遣いいなので、相手が何を求めているかが気になってしまう。
自分の都合でガンガンはいけず、拒絶もできず、ただただ距離感を窺ってしまう。
興味のある人とは距離を詰められず、ガンガンくる人には流されてしまう。
そんな人間だ。
そういったことは海外でも起こる。
“この人、今、これをしたくて私に付き合ってほしいんだろうな”とか。
“私はこの人と仲良くなりたいけど、一人でいたいのかな”とか。
勝手に感じ取ってしまい、勝手に答えてきた。
それでも、何度か旅を続ける中で、少しづつ自由になってきた。
昨日の夜、マルセルに
“何時に起きる?何時に出発する?”
と聞かれた。
今日は私のスーパーでの惣菜晩御飯に付き合ってくれた。
それまでの行動からもなんとなく一緒に歩きたいのかな?と思ったけど、
”わからない。起きたときに“
と答えた。
彼が嫌なわけじゃない。
ただ人と歩くのは気を遣う。
今はまだ、一人の時間を楽しみたい。
朝、私が支度していると彼も起きてきて、一緒に朝食を食べた。
先に支度を済ませた私は、彼に挨拶をして先に出発する。
数時間後に合流した。
一緒に歩いたり、追い越したり追い越されたり。
途中で景色のよい、休憩できそうな場所があったので、“休憩するね”というと、“私は先に行くよ”と応えるマルセル。
やがて街に到着する手間でまた合流した。
チェックインまで時間があったので、宿の近くのバルでビールで乾杯。
お腹が空いたから食事できるところに行くと言うマルセル。
食事はいらないのでここで飲んでるね。支払いしとくから明日は奢ってねという私。
なんだかよい距離感だった。
相手に合わせないからって、相手を嫌いな訳ではない。相手から嫌われる訳でもない。
自分を大切にしているだけ。
そしてお互いを尊重しこそすれ、できることなのだ。
それが本当の自由であり、強さでもあるのかなと思う。
マルセルとは明日も同じ宿だろう。
また明日会えるのが楽しみだ。
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