私は訳のわからない、必死の形相をしていたと思う。
途中、私を追い越した自転車のお兄さん2人が、
山頂から私が登るのを応援してくれた。
私は言葉も発せず、
表情と手を挙げるジェスチャーだけでそれに答え、
休みも取らずに、そのまま坂を下った。
遥か向こうに老人の姿が見えた。
一歩一歩、
本当に一歩一歩の末、
なんとか目的地のナヴァレッタに辿り着いた。
私はとにかく宿にたどり着きたくて、
バルで休んでいた巡礼者にめちゃくちゃな英語で話しかけた。
英語が通じない宿主には、もう日本語で話をしたが、なぜか通じた。
私の究極状態はみんなに伝わっていて、
笑いながらみんなが私を受け入れてくれた。
ああ、世の中そんなもんだ。
その時には、
これまで感じていた孤独やコンプレックスや劣等感が、
どうでもよくなっていた。
精神が肉体を蝕むことがあるということは心理学で学んだけど、
肉体が精神をも超越することがあるんだね。
身をもって、経験したわ。
そしてそう、
私たちは、一歩づつしか歩けないし、
一歩づつ進むしかない。
だから、
step by step
一歩づつ行こう。
どんなに辛くても、苦しくても、寂しくても。
一歩づつ、
一歩づつ、
前に進もう。
もちろんね。
本当に無理な時は、
立ち止まってもいい、
戻ったっていい。
でもさ、
まだ見たことのない世界は、一歩づつの先にしかないんだ。
"Step by step"
大丈夫。
その先に、新たなアナタが待ってるから。
ーENDー