蟻地獄の先(世界の旅~ラオス・ビエンチャン編~)第8話 | ちびタンクのひとりごと

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大好きな旅のこと、心理学・スピリチュアル・ヨーガのこと、日々の気づきなどをつぶやいています♪

こんにちは☆

結局,昨日は一日外出で更新できませんでした~(汗)

すみませんっ。


やっと続きです。


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電話口には,流暢ではあるが片言の日本語を話す男性が出た。

私の本名を確認すると,

電話口の男性はもう一度,

従兄弟の彼が話した内容を繰り返し,続けてこう言った。


「それでは手続きを行いますね。

手続きには,手数料として6ドルが必要になります。

支払いは,現金とクレジットカードがありますが,どうなさいますか?」


「現金でお願いします。」

私は迷わず答えた。

「わかりました。現金でお支払ですね。

現金の場合,現地の航空会社の事務所へ立ち寄って頂く必要がありますが,

・・・

お客様の場合,トランジットの時間がとても短いですね。

事務所は市内になりますので,往復している時間はありません。

その場合,クレジットカードでの支払いしか認められませんが,

どうされますか?」


今回のトランジットは,確かに1時間少々しか空いていない。

しかし,こんなことでクレジットカードを使うのも気が引けた。

私は,電話口を塞いで従兄弟の男性に話しかけた。


「手数料が必要らしいのだけれど,クレジットカードしかだめだって。

私は今,クレジットカードを持っていない・・・。」


勿論カードは持っていたが,そう言えば,

彼が支払ってくれるのではないかと期待したのだ。


「クレジットカード,持っていないの?」


予想外の反応に一瞬違和感を感じたが,それもすぐにどこかに消えた。


「宿に戻ればあるけれど・・・」


全く持っていないもの不自然だろうと,とっさにそう言った。

カードがないことで,このチャンスを逃すのも惜しかった。


「取りに戻れば?宿は遠いの?」


「ううん。すぐそこ。」

たまたま,宿は1ブロック先を曲がったところにあったのだ。


「待ってもらえるか聞いてみるよ。」


彼は携帯電話をもう一度手に取り,いくつかの言葉を交わし,電話を切った。


「仮予約してもらえたから,準備が出来たらもう一度電話をかければ大丈夫だよ。

取りに行っておいで。」


「うん。わかった。すぐに帰ってくるから待ってて。」


彼女が笑顔で私に手を振り,”行ってらっしゃい”と送り出した。


意味のない宿への往復の最中,

私は気持ちが高ぶっていることに気づいた。


「こんな面白いこと,めったにないよね~。」

一人になって,自分が置かれている状況を可笑しく思った。


初めは,”そうなったら嬉しいなあ”ぐらいの気持ちであったのに。


今では,何が何でもアップグレードしてもらおうとしている自分がいた。


そう言った巧妙な心理操作が行われていることに,全く気付いていなかった。


そう,

私は既に蟻地獄の砂の中に足を取られ,

もう抜け出すことができない状況になっていることに,

まだ,気づいていなかったのだ。



---つづく---