約束の場所(世界の旅~インド・ブッダガヤ編~)第8話 | ちびタンクのひとりごと

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大好きな旅のこと、心理学・スピリチュアル・ヨーガのこと、日々の気づきなどをつぶやいています♪

こんにちは☆ しずです。

祝日って嬉しいですね。


私も今日は昼間ブログ書いて,夜は遊ぶぞ(笑)


では,続きです。


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私は,どのくらいの間,そこで座っていたのであろう。


ただとにかく,その空間,その光景に惹きつけられ,

何時間もそこから動くことができなかった。


そしてその間ずっと,涙がこぼれっぱなしであった。



私だけでなく,多くの僧や観光客も,

そこらに座り込み,涼んだり,お経を唱えたり,ぼおっとしていたりしていた。



何人かの人が,私に話しかけた。


ある僧は,どこから持ってきたのか,リンゴと柿の入ったビニール袋を私に渡そうとした。

お坊さんに恵んでいただくなんて・・・

「もらえない」と断ると,いいからとっておきなさい,と私の手におさめ,彼は去って行った。


別の僧は,私の隣に座り,長いこと一緒にぼおっとしていた。

パンフレットに住所を書き込み,困ったらここに連絡しなさい,

と言って私に渡し,去って行った。


またある人は,落ちた菩提樹の葉を拾って私に渡した。

ここの菩提樹の葉は価値があるものとされ,葉が落ちると奪い合うように拾われる。

真偽は定かでないか,マハボディの菩提樹の葉と称し,お土産屋で売っているほどだ。

たまたま目の前に落ちた葉を拾い,彼は私にそれを譲ってくれた。



私はその度に,また涙を流さずにいられなかった、



日が落ちかけたころ,やっと重い腰を上げることにした。

東向きに座っていたため,場所を変えて,夕陽を見ようと思ったのだ。



入り口から階下へ降りるところへ戻ると,

ちょうどステューパのバックに落ちるであろう,大きな太陽が見えた。



なんて美しいんだろう。



光輝く時間から,斜光を下げ燃ゆる色に変化しようとしている太陽が,

園内のお経を一層激しく響かせているように感じられ,

日中の神秘的な雰囲気とはまた一味違う,美しい空間を作りだしていた。



私はまた涙があふれ,そこに腰を下ろした。



園の外側を何週もする修行者が,何人も私の目の前を通りすぎていった。



私は,構わず泣き続けた。



周回する修行者の中に,ひときわ目を引く,美しい尼僧がいた。


他の僧と同じオレンジの袈裟を肩にかけていて,頭も丸坊主であり,

一見,ほかの僧との違いはないのだが,体つきに女性性が感じられた。



年は,60過ぎであろうか。


身長は低く,まん丸い顔をしていた。


深い慈悲のあふれる微笑を湛えていたが,

その奥には,強い意志のようなものがあるように感じた。



何て表現すればいいのであろう。


丁寧な彫刻で作られた,美しい仏像のような,お顔であった。


私は,彼女から目が離せなかった。


生きている人に対して,こんな崇高な,かつ恐れ多い気持ちになるのは,初めてであった。


泣きながら,彼女を目で追っていた。



彼女も私の視線に気づくと,ぶつぶつとお経を唱えながらも,にっこりと,笑顔を返してくれた。



それは,この世の人間とは思えないくらい,美しかった。



何周か後,あまりに泣き続けている私が気になったのか,

彼女は私に,「着いてきなさい」と言うジェスチャーをした。



私は,無心で彼女の後をついていった。

自分の意志とは関係ない,何か大きな存在に操られるように。



日は,ちょうどステューパの向こうに落ちようとしていた。



---つづく---