第十六章 約1年ぶりの帰還 | GOLDSUN SILVERMOON

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西洋占星術 紫微斗数占星術を使って運勢を観てゆきます。

明け方…。

俺は目を覚ました。ショートスリーパーなので
どうしてもこの時間に目が覚める時がある。

眠れないかもと懸念したけど、あの穏やかな
寝顔を見ていたら俺もすっかり安心して珍しく
熟睡してしまった。


腕にはステラ。しかし後ろから抱きしめたのに
いつの間にかこちらを向いている。

まずい・・・。押し込んだ本能というか欲望が
顔を出す。彼女の夜着は少しはだけているが
身体が密着しているせいか見えない・・・けれどもそれも
別の意味でヤバい。

―抱きしめられるのは好きみたいだな。

昨晩のことをふと思い出す。
触られるのは嫌じゃない…でも恥ずかしい…と。
ホント生殺しで困るんだけど。

あれからこうしてるけれど、俺の腕が胸に中ったり
うっかり足を彼女の足の間に差し入れそうになると
びくっと動く。身体は欲しているのだろうか。

理性が強い方だと言えどもいつまで持つか。
しっかり彼女の身体の柔らかさを感じるこの体勢。

 
ステラの目が覚めた。
「あ・・・」
俺と目が合ってもまだ寝ぼけているせいか
ぼんやりしている。

「もう・・・時間・・?」
「いや・・・まだ明け方だ」
「そう…」

そして再びウトウト微睡みはじめた。

本日もう一泊して移動する。だから今日は
まるまる一日の休みだから問題ない。
昼過ぎまでは自由な時間。

寝かせておこう思ったが、
目が覚めてしまった俺。

どうしようか?
寝ているときはごまかせた劣情が顔を出す。
俺は急いで正面向けているステラの身体を後ろに向かせて抱きしめた。
・・・これで一安心。

無理やりっていうのは趣味じゃない。
約束も破ってしまうのも柄じゃない。


そうこうしているうちに一度は目が覚めたのに
珍しく俺は二度寝をしてしまったらしい。
ステラが温かいからなのか、いつも眠りが浅い俺でも
不思議とよく眠れた。



*               *                *




気が付いたら後ろから抱きしめられた状態で私は目を覚ました。
腹部にリーディの腕を感じる。


朝日が眩しい。
ふと自分の夜着の前が少しはだけているのに気が付き
そっと彼の腕から身を離す。


…今のうちに着替えよう。


私は徐に、夜着の紐を解いて脱いで、掛けてあるビスチェとドレスを
手に取ろうとしたら、むくりと影が動いた。
反射的にベッドの方を向くとリーディが起きたのだ。

「あー・・目覚めたか・・・」
「・・・!!」
私は手に持ったビスチェを胸の前に抱いて言った。
「ちょっと一回、部屋出て。」
「え?」
少し寝ぼけ眼が私の方を向いた時、完全に目が覚めたらしい。
何故なら・・・私は・・・かろうじてビスチェで前は隠していたけれど
ほぼ全裸だったからだ。

ヒュー!と口笛を吹かれて。
「いー眺め♪」と意地の悪いニヤケ顔。
前だったら向こうも赤面してたのに・・・悔しい。

「早く出て行って!着替えるから!」
「別にいいだろ?一度見てるんだし」
「全部は見せてない・・・」
「そうは言っても俺起きたばかりなんだけど。」
「じゃー後ろ向いていて。」



*               *                *




俺は仕方ないと思い後ろを向く
着替えているのか衣擦れの音がする。

いいよと言われて正面を向くと
ステラは昨日のドレスを身に着けていた。
きっちり胸の編み上げも結わいてある。

「お待たせ」


そして一緒に顔を洗いに行く。
たぶん本来なら夜着にガウンで洗面台に行くのだろうけど。
2度寝したと言えども、まだ早い時間だ。

俺たちは顔を洗った後、今度は俺の部屋へ向かう。
なぜなら、まだ俺はガウン姿だったからだ。

ちょっと待っててと言い、俺も着替えた。
帷子は今日は身に着けない。

着替えの間ステラは窓の外を見ていた。
俺の肌を見るのも恥ずかしいんだろうか。
構わず俺はコットンシャツを着てパンツを履く。

「いい天気だよ。これから冬だけど最後の秋晴れかも」
ステラがこちらを振り向き笑いかけた。
「朝ご飯食べに行こう?」



素泊まりの宿なので、ゲランの街のカフェに向かった。
最初の出会いの時にキャロルと3人で入ったカフェである。

「久しぶりだね・・・。」

カフェにて
普段着でこのように向かい合っていると、町の住民の様だ。
とても旅人には見えないだろう。

「そうだな、もうすぐここを出て9カ月になるから・・・」

暫くしてエッグ・ベネディクトが運ばれてくる。
明日からは当分こんな旨い朝食にはありつけないだろう。

「お城の食事もおいしかったけど、ここのご飯もおいしいわ。」
ステラが一口卵をほおばり、顔を綻ばせた。

「だろ?」

サーモンがオランデーズソースと絶妙にマッチしていて
旨いんだ。流石海沿いの街だ。
そう言えばステラは、海の魚に詳しくないと言っていた。ずっと内陸部に
住んでいたので、船に乗ったのもエストリア行きが初めてで、俺がたまに
魚を釣ったり網を仕掛けたものを手にしたりするとたいそう驚いていた。
そして無事にメインも終わって、コーヒーが運ばれてくる。
優雅な朝。本当に身も心も結ばれた後だったら
もっと違ったものだったのだろうか・・・。

「思うことがあるなら今きちんと言って」
昨夜彼女に問うた。
ステラは恥ずかしいからだと言ってくれたけど、もっと心の
奥底に俺には言えないことを秘めているような気がするのは気のせいだろうか?