酒席に学ぶ!マナーの違い・緩くて優しい日本文化の根源とは? | 医者ギライ・クスリギライのための1日10分!医食同源・自然食実践ブログ

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先日、昼夜勤の間に、

本部の方々が我が職場に挨拶に来られました。

明日が仕事納めなので、各現場を回っているとのこと。

私のいる現場は365日24時間休みなしなので、数々の品々で労をねぎらいたい。こうした旨を話されていたのです。

明日で仕事納めならば、その後は忘年会、慰労会なのでしょうね?そう私が尋ねると、今はそうしたことはやらないのだそう・・・。

それを聞き、昭和世代の私としてはなんとなく寂しい思いを抱かずにはいられなかった次第です。

若いころから、幹事かつ5時から男。さらには自称、宴会部長を歴任してきたこの私。飲めや歌えやの宴会騒ぎには

 

"血潮がたぎる!"

昔は何かにかこつけて、宴会ばかりやっていたな。日々のそれはもとより、社員旅行なんかも毎年の恒例行事。

 

その晩は無礼講の宴会花盛りで、破天荒に痛烈に飲み明かす。そんな頃のことを懐かしく思ってしまったのです。

コロナ前までは細々と続けられていたようなのですが、コロナでその風習は完全に断たれてしまったそうなのです。

それは私の勤め先に限らず、日本全国似たような傾向があるのではないかと思うのです。

欧米においては、会社で業務に従事している間は上下関係のタテの社会。

 

でもその日の仕事が終われば、その上下関係は翌朝まで一旦は断たれることになる。

でも日本においては、会社を終えても上下関係は断たれないまま継続していく。故に、

「どうだ一杯?」

こうした感じで飲み屋へと雪崩れ込みやすい。それまでのタテの関係は、ヨコの関係へとスライドしていく。

 

"今夜は無礼講!”とは、こうしたものではなかったかと思うのです。

そうした飲みにケーションの場においては理不尽なこともあるにはあったけど、総じて楽しいことが多かった。

上司、先輩から色んなことを教わったり、仕事ではほとんど見せることがない個人や私人、はたまた家庭人としての顔を垣間見たり。本当によく出向いたものでした。

以前、シンガーソングライターの吉田拓郎が、最近のバンドはライブを終えても、打ち上げもやらずに帰ってしまう・・・。そう嘆いていたのです。

こうした飲み会の場なども、この間何度か指摘してきた日本人の疑似家族思考、運命共同体思考。その表れなのではなかろうか。

※参考:『日本のココロ、その琴線にあるモノとは?根源に迫る!自然派歴史文化考

私に残る数々の経験。その感覚が、一抹の寂しさを感じさせた理由なのだろう。そんなことを思ってしまった次第です。

 


■心が栄える!
日本社会は稲作を中心とした村落共同体。武家も商家も、工業の分野においても、村落共同体の土台の上に築き上げられてきたのが経緯といえるのでしょう。

村落共同体において重要となるのは、「通過儀礼」と「年中行事」。

※参考:『人間はどこまでも人間らしくあれ!魂の伝承を考える・温故知新学!

儀礼と行事とを村落総出で協力し合い行うことで、タダの地縁関係に過ぎないものを疑似血縁関係へと昇華させてきた。

そしてお祭りは鎮守の神様こと、村々の神社を中心にして執り行われて来たのが経緯といえるのです。

「村の鎮守の神さまの 今日はめでたいお祭り日 ドンドンひゃららドンひゃらら~♪」

有名な村祭りの一節にある通りというわけです。

神社の祭りの際には、塩、米、野菜、魚、そして酒が「神饌(しんせん)」として神に供えられます。

そして祭りを終えると、参会者は神饌を皆で分け合ってお酒を飲んだり、会食したり。神饌を頂くことで祭りが終わり、元の日常へと戻っていく。

これをして、「直会(なおらい)」と呼んでいたのです。

祭りの際には神さまは向こうにいると考えられていたのですが、でも直会になると今度は神の方が人間の側に降りてくる。かくして神と人とが融合する。

「神人合一」

とは神と人との饗宴を意味したものであると考えられていたのです。

鎮守の神さまと一緒に飲み食いし、魂同士を交流させるといった儀式が直会。酒を飲むことではしゃいだり、騒いだり。

宴会の「宴」の字は”えらぎ"と読み、酒の語源は「栄(さかえ)」であって、元気ハツラツに心が栄える。

 

私たちの祖先はこの心がウキウキとして栄えた状態を、

「神が酒を通して体の中に入ってきた」

神の精神を体に受けるために酒を飲む。一種の神がかりに近いものようなものとして、考えられていたようなのです。

■事前合意を!
人と人とが会食し、そこでお酒を飲むことは世界共通の事がらであるといえるのでしょう。但し、イスラム教においてお酒は聖典で禁じられた禁忌事項に当たりますが。

それぞれの国や文化において、酒席上のマナーというものが存在している。欧米人は好きな量だけ勝手に飲む。

 

これが基本で互いに注ぎ合うことなど、あまりしない。でもお隣、中国においては「乾杯三原則」。

こうしたものがあるのです。

原則の1つ目は、お酒は誘い合って飲むものであること。自分の杯が空いているからといって、自ら手酌で注いでしまうといった振舞いはマナー違反。

酒は会席者同士が互いに注ぎ合って飲むもの。これが第一原則になるというわけです。

原則の2つ目は、日本で言うところの乾杯!

酒席で掛け声がかかったら、必ずその杯を完全に飲み干さなくてはならないこと。そして飲み干した暁には、杯の底を逆さに振って互いに見せ合うこと。

ゆえに中国では、乾杯ではなく「干杯(カンペイ)」であること。これが第二の原則です。

互いの杯を干し合うことで、連帯意識を確認し合うといった行為が干杯。酒宴の間は、「干杯!」の掛け声がかかったのなら、何度でも杯を空にして、底を逆さに振らなくてはならない。

飲み残しなどは、相手のメンツを潰してしまうといった重大なマナー違反に相当してしまうのです。

「オレの酒が飲めないとでもいうのか?」

ビジネスなどでは、こうした事態にも発展しかねないので注意が必要。この三原則は覚えておくと何かと便利、そんな風にいわれているのです。

これは君主と臣下との間のしきたりから生まれたものではないかと思うのですが、酒を薦める行為と薦められた酒をしっかり受けるといった行為。

このやり取りにこそ重大な意味を持たせていると説明されるのです。

もちろん酒が強い人もいれば、弱い人だっている。そこで大切になるのは、「事前の合意」。これが第三の原則。

その酒宴は、「干杯」であるのか?それとも「半杯」であるのか?はたまた「随意」なのか?

半杯ならば、半分飲めば後は飲み残してもOK。随意ならばグラスに少し口をつけるだけで良いことになる。

相手が酒席を誘ってきたら、干杯・半杯・随意のいずれなのか?を前もって事前に確認し合うことが大切。

 

相手が随意で誘い、こちらも随意で受けたのなら交渉成立。お互いの意向を事前に確かめ合っておくこと。

 

この3つが中国における「乾杯三原則」になるというわけです。

※参考:『中国でのお酒のマナー「三原則」

 



■日本の信仰は?
上記のように、中国の酒席はすこぶる厳格な面があるのですが・・・、でも我が日本はといえばそれに比べてかなり緩いのが伝統といえます。

酒に強い人がいる一方、すこぶる弱い人だっているもの。自然界とは白黒ハッキリした世界に非ずして、マダラ状であり、モザイク状であるのが常なる姿。

自然の摂理に逆らわない。あるがままに振舞えば良いだけ。ただ酒席を共にするといった行為。

それそのものに意味を持たせようとするのが日本の麗しき伝統。それを明確に示しているのが結婚式の

「三々九度」

三々九度においては、注がれた酒をガブ飲みする必要などは一切なく、ほんの少し口をつけるだけでOK。

それにより、新郎新婦。さらにはご列席の面々、そして地域の人々をお守り頂いている鎮守の氏神様や祖先たち。

酒席を共にすることで、これらとの連帯意識を相互に確認し合っていく行為にこそ意味がある。こんな風に説明されているのです。

少し口をつけただけでも酒を通して体に神が入っていき、心がウキウキと栄え、一種の神がかりの状態になる。

それは神の精神を体に受け取るための行為で、飲む量などは関係ない。どうだって良いこととして考えられている。

「三々九度」には、こうした日本人の自然観。優しくもあり、緩くもある。そんな精神が込められていると解説されるのです。

日本の神様は、一神教の神ような怒り厳しいものではなく、基本は楽しくて明るい神様ばかり。

人間を楽しく幸せに導いてくれる。ある種の気楽さすらも感じさせるような明るい信仰。こうした特徴があるのです。

もちろん時代が下って、こうした意味合いそのものは忘れ去られているのが現状なのでしょう。でも、行事に酒がつきものであることは今も昔も変わらない。

大晦日、お正月でお酒を飲む機会も増えるのではないかと思いますが、こうした先人たちの思いに心を馳せる。

それもこの時期の過ごし方のひとつではないかと思うのですが、いかがでしょう?

読者の皆さま、これで今年最後の投稿になります。一年間、おつき合い頂けましたことに深く感謝を申し上げます。

来年もよろしくお願い致します。良いお年をお迎えくださいね、拝。

 

 

■参考文献

 

 

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