サイドウェイズ | 空想俳人日記

サイドウェイズ

おいしいワイン イッツ オンリィ マイン



 ダニーこと上原大介(生瀬勝久)がクルマのトランクを閉める際に「ウ~~プス」という。いぶかしげに、彼の結婚式へ出席するため渡米した、かつての留学学生時代の相棒の斉藤道雄(小日向文世)は、運転する彼の手にペンを刺す。大介は「いたっ!」と言うのだ。「何する」というダニーに道雄は「アウチって言うかと思った」とね。あはは。
 万事急須、じゃないね、休す、でもなく、窮すって感じな、いやはや、英語と日本語がコメディックジャポネーゼなる何処の国か分からないみたいな感じで、このロードムービーのあちらこちらのポイントに飽きさせることなく戯言が配されている。
 知らないけどさ、この映画、もともとアカデミー賞の脚色賞をはじめ数多くの賞に輝いた2004年のアメリカ映画「サイドウェイ」を、日本人キャストでリメイクしたんだってねえ。ふうん。もと知らんから、比較文学論できんし、もともと比較文学なんて、ちゃらちゃらおかしい、もとい、ちゃんちゃらおかしい。拙操、いや節操ない行為と思うから、この映画だけ語るね。
 でも、語るっても、今更、どんなストーリーか語る気もない。カリフォルニアのワイナリーを巡る1週間のドライブ旅行へ出掛けた2人の中年男が繰り広げていく珍道中、それでいいじゃないか、ヤジさんキタさん。
 大介がアメリカで俳優になる夢を叶え、「合点だ」などと忍者ハットリに変身するTVのヒーローもので活躍するもその後は低迷、現在はロサンゼルスのレストランで雇われ店長となり、オーナーの娘との結婚を決めた、などとか、かつては連ドラの仕事にも携わっていたシナリオライターの斉藤も今ではシナリオスクールの講師にとどまり、冴えない人生を送っていた、などとか、どうでもいいじゃん。
 ワイナリー巡りの目的地ナパ・バレーに斉藤が留学時代に先生と生徒と言う関係でありながら片想いをした田中麻有子(鈴木京香)がいると知ったことから、2人はナパを目指すんだけど、一方、大介は麻有子の連れ、ミナ・パーカー(菊地凛子)と意気投合し、ワインを囲む男女4人の交流が始まるんね。そう、この今、現在だけを私たちもエンジョイすればいい。確かに過去もあるが、過去が今の自分に影響していると捉えるんじゃない。今の時点で過去を解釈しなおせばいいんよ。そうすれば選択肢はいくつもできる。ほら、麻有子が過去にこだわりすぎてることに対し、斉藤が言うじゃん。日本へ行くことを選択するというのは過去を選ぶんじゃなく未来を選ぶこと、だとかね。
 そうそう、ゴンドラの箱、もとい、誰だって、パンドラの箱を空けるのは怖いよね。でも、凛子が、もとい、役柄はミナ・パーカーだね。彼女が言う、ちょいと違うけど「割れ鍋に綴じ蓋」。「綴じ蓋になるなよ」分かってない。しかし、ここでの菊地凛子、いい! ピット・ブラッド、もとい、ブラッド・ピット主演の「バベル」で有名になったけど、ここでの凛子は最高だ。ダニーへ割れ鍋にフライパン!かませるとこなんて、最高だよん。
 そう、この映画、脳みそで考えちゃいけない。肌で感じなきゃいけない。洞察してはいけないな。感情で覚知すればいい。でないと、麻有子のように日本に帰ってはならないという選択肢のない固着状態になってしまう。
 じゃあ、大介はミナという選択肢もあったのに結局、オーナーの娘ハニーに対しダニーとして割り切ってしまうじゃん。否、それも彼の心の洗濯、もとい、選択なのだ。
 ちなみに、この映画を観た夜、私はワインを一本買った。あんなに一日中ワインを飲まれては、牛飲矢の如し! そして、独りで一本を空けてしまったぞ、ある人をちゃんちゃら想いながら。あとでボトルのラベルをよく見たらカリフォルニアワインではなかった。フランスワインだ。まあ、いいか。カリフォルニアワインでなければならないという、イラショナルなビリーフなぞクソ食らえ、だね。
 そうそう、監督のチェリン・グラックって、あのリドリー・スコット監督作「ブラックレイン」で助監督をやったんだってね。彼、大学で英語教授をしていた米国人の父と、日系米国人の母の長男として和歌山県で生まれたんだって。ふうん・・・、以上。


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