フィッシュストーリー | 空想俳人日記

フィッシュストーリー

魚の孤独 鯨も逃げる 正義かな


 いやあ、おもしろい。最高に痛快○齧りな映画じゃった。・・・なあんて、一応は最高の褒め言葉のつもりで、屁理屈抜きでおしまいにして、すぐ感想を書こうと思ったんよ。でも、書けへんかった。そんなんで済ませて、ええんの? ずっと、そう思ってた。
 まず、自分が生きてきた中で、あちこちでいい加減なことをしながら拡散していた自分の散漫な人生が、何故か、この映画で「一堂集まれ~」みたいな号令を掛けられた気がしたのである。
 受けないであろうバンド逆鱗の、誰にも届かない、そんな気持ちをいつも持ちながら、それでも平気で生きてきた。彼らよりは真剣じゃないけど。まあ、彼らも、最後の曲「フィッシュストーリー」が、どこかいい加減な真剣さであることに魅かれたんではあるけれど。
 音楽が世界を救う、なんかビートルズとか、さらにはジョン・レノン、オノ・ヨーコなら、メッセー
ジ性があるけれど、彼らの「ぼくの孤独が魚なら」が、どんなメッセージ性があるの。あはは、音楽はこの世で最高の発明であることが、ここでなんとなく、でも実証的に理解できたんだけどね。ビートルズやジョン・レノンじゃなくてもいいのよ。
 それと被る正義の味方。悪いけど、正義の味方とともに生きてきたのよ、私は。古くは鉄腕アトム。でも、あくまで空想であり、想像の世界、フィクションであり、正義の味方なんぞ、なあんて、思っては来たけど、信じて止まない人たちが連鎖して、こんな正義の味方のほら話を、鯨もたまげるほどの魚のような孤独に、私は驚きながら、共感し、さらには、単にほら話ではない、迂闊にも間違った翻訳でありながら、それを真に受けて音楽にした、それを真に受けて正義の味方の重要性を感じた、それを真に受けて実践し、感染させられながら、それこそが真の人間性として受け継がれ、最後には地球最後の日のアトムのような勇敢さを持って、世界の人々を救う。この空前絶後のほら話と、誰も偶像崇拝的にも憬れているわけではない、そんな日常の埋もれたところで、モグラ君のように継承されていた運命、その己感覚のDNAが、もう許せないほど最高に心地よく共感してしまったんよね。
 そういうことからすれば、これはまさしく類稀な最も捨て去りやすい人間の存在感覚のDNA的継承ではなかろうか。
 うん。ネタバレバカヤロって、昔みたいに言われたくないから役者名で言わさせていただくけど、かのセックスピストルズの1年前の逆燐なるバンドの「フュッシュ・ストーリー」の曲から濱田岳が合コン相手の高橋真唯の運命的言葉を通じて結婚することになるんやけど、その相手との子どもが森山未来が父親から言われた正義の味方を発揮できる場所に、なんとまあ東大進学当たり前の理数系高校生の多部未華子がいるのね。そして、彼女が、彗星で滅ぶはずの地球を救う5人組の一人になるのね。こりゃ、まさしくゴレンジャー。
 こういうと、ちょっとお粗末なプロット解説だけれど、もういいよ。だって、こりゃ観なければ損、そんな映画。で、四人組の逆鱗なるバンドのリーダーは、伊藤淳史。ちょっと聴いてみる、その世界を救うことになる音楽を。「ぼくの孤独が魚だったら巨大さと獰猛さに鯨でさえ逃げだす」ンよ。いや、まいるよ。

 音の積み木だけが世界を救う。ほんとかもしれない。音の積み木だけが正義の味方。いや、ほんとだと思う。最高だね。ボクも死んでないよん。リーダーの伊藤淳史を筆頭に高良健吾、渋川清彦、大川内利充。いいよねえ。で、時代を超えて、その世界を広げる胡散臭き石丸謙二郎を初めとする豪華(?)キャスト! 真の正義の味方を紐解くに値する登場人物たちだね。
 いやはや「アヒルと鴨のコインロッカー」の伊坂幸太郎原作×中村義洋監督。ステキなフュッシュストーリーをありがとう。けっして、これは、ボクにとってホラ話なんかじゃない。哺乳類の最高峰でもある鯨もたまげるほどの、魚の孤独の素晴らしい世界の話だ。晩くはない、今からでも正義の味方を恥ずかしげもなく目指そうと思う。