タロットカード殺人事件 | 空想俳人日記
2007-11-13 22:26:16

タロットカード殺人事件

テーマ:映画

スクープや 鍵に切り札 漫才コンビ 



 またひとつ、スカーレット・ヨハンソンの魅力を見つけたなり。前作「マッチポイント」と同様、殺人犯の相手役なんだろうけど、こちらは、死ななくてすむんだね。よかったよかった。
 今回、変わりに死んでくれたのは、監督兼出演のウディ・アレン。出演するからには、前作で死んじゃったスカーレットと同じように「今度は僕が死ぬから」、なあんてね、言ったかもしれないね。しかも、なんちゅう死に方ですか、ウディさん。物語の中身と関係なし、アメリカとイギリスの交通事情の違いが原因? ふんじゃあ、イギリスと日本は近いよお、おっほっほ。
 それはともかく、前作のスカーレットもよかったけど、それ以上の新しい魅力。眼球にレンズがくっつくのが嫌で眼鏡顔のスカーレット。もう、それだけでもウディのお眼鏡にかなっている。
 さて、日本版タイトルにもなっている「タロットカード殺人事件」(原題は「Scoop」だね。こっちのがいいけど)は、「切り裂きジャック」の再来とも言われる連続殺人鬼による、ブルネット(邦訳では黒いショートヘア)ばかりの美人娼婦殺人事件。遺体のそばには一枚のタロットカードが残されている。そんな事件の「特ダネ」を、死んだはずだよジョー・ストロンベル(イアン・マクシェーン)、敏腕新聞記者が三途の川の船上から、この世に持ち込んでくる。貴族のピーター・ライモン(ヒュー・ジャックマン)だ、とスカーレット演じるサンドラ・プランスキーに告げるんだね。たまたまそれが、ウディ演じる手品師スプレンディーニの舞台に観客参加での、人が消える箱チャイニーズ・ボックスの中。ジャーナリスト志望のサンドラはこのネタに飛びつき、嫌がるスプレンディーニも説き伏せピーターを探り始める。
 こうして、エセ父娘による漫才コンビが誕生し、イギリス上流社会を茶化しに行くことになるわけだね。もともと、ウディ演じる手品師スプレンディーニ、この名は芸名で、本名はシド・ウォータマン、サンドラと同じブルックリン出身のユダヤ人。そして、さらに、サンドラはエセ父娘を演じるがために、自分自身を女優の卵ジェイド・スペンスだと名乗る。
 サンドラは、ピーターの前に、前触れで映画の巨匠のインタビュー中に酔って目が覚めたら裸でベッドに寝ていた、なんて、あらま無節操な。巨匠は映画の仕事でタイランドへ。そんな映画に今度出るのよ、なあんてのジェイド・スペンス思いつき? で、父にもネーミングが。不動産屋じゃなく、油田開発が仕事。なんて名だっけ。ナンタラカンタラ・スペンス。シド自身も覚えられない。とにかく、凸凹漫才コンビのやりとりには、ウディ以上の軽妙かつ饒舌巧みな話芸を放つスカーレット。これぞ、彼女の新たな魅力。ウディ自身、そんな彼女をこう語っている。
「『マッチポイント』の撮影中、スカーレットがとても可笑しなユーモアセンスの持ち主だと直感的に感じて、彼女ともう一度、今度はコメディで一緒に仕事をしようと話をしたんだ。・・・スカーレットはひどいんだ(笑)。キャメラが回っていようがいなかろうが、いつでも彼女のペースだよ。僕がどんなにいい台詞を思いつこうと、ふたりで掛け合って、お互いをけなしあってみても、最後には必ず彼女に完璧に打ち負かされる。本当に尊敬に値するよ。僕は、自分がけっこう機知とウィットに富んでると自負しているけれど、そんな僕を上回るペースの俳優と組むと、ただ感嘆させられるばかりだ。演技の息もピッタリ合って、とても演りやすかった。僕と彼女はすごく相性がいいし、それは銀幕からも伝わってくると思う」
 うんうん、伝わってきたよ、ほんとに。しかも単なる話芸だけじゃなく、その裏の機知とウィット。人の名前だらけもそうだけど、モノの名前や番号や数や、そんな記憶の断片やイメージ付けで、よりコトバが無闇矢鱈に複雑化し暴走する。そんな手品師ウディならではの、もうひとつのマジックが仕掛けられているよね。
 事件そのものも「タロットカード殺人事件」で動き始めるけど、此処で活躍する人たち、みんな、その本編からズレていくんだね。だから邦題はインチキなんだね。タロットカード殺人事件便乗事件、とでも言いましょうか。
 しかも、証拠探しをする中で、それみよがしなネタが上がってくるものだから。黒のショートヘアをしていたピーターの母親、その母親に対するピーターの心の中。想像がむくむく膨らんで真相に迫ると思いきや、見事にスカン食らうあたり、殺人事件スタイルへの皮肉もあるんじゃないのかな。つまり、ひとえにスタンダードなミステリーの焼き直しだけを狙った作品ではないのだよね。
 イギリス式庭園の中で、ウディの機知やウィットは、水墨画的というか枯山水庭園のような渋みを見るようでもないか。さすが、キリスト教からナルシスト教への信仰の移行を進められるだけの達観境地の人でもある。ううん、なんか、だんだん、ここの論点までがズレてきたかな。
 ズレついでに、次回作は何? 「Cassandra's Dream」? ユアン・マクレガーとコリン・ファレル演じる兄弟の悲劇ですって。あ、そう。お願いだから、ウディとスカーレットに、かつてのダイアンも迎えての、マンハッタンとロンドンを行ったり来たりの三角関係ミステリアス・コメディなぞ、作ってくだしゃんせ。えっ、さらに、スカーレット・ヨハンソン主演の新作コメディがスペインのバルセロナで撮影ですって。あ、そう。それでいいから、助監督やらせてよ。
 そうそう、それにしても、戻るけど、死んだはずだよジョー・ストロンベルさん、この世に寝た持ち込むのなら、やはり死んだはずの連続殺人の被害者を探して取材した方が早いんじゃないの。まあ、そんなことすれば、お話がつまんなくなるけどね。
 ああ、それと、ピーターさんよ、サンドラが近づいたきっかけ溺れワザ、これも嘘と、疑わないかねえ、お坊ちゃま。まあ、でも、いろいろなスカーレットのセクシー・キュート場面の中でも、この湖から上がったばかりのびしょ濡れのスカーレットが一番ぞぞけたから、いいよ。
 そんなシーンを、自分が三途の川行きと引きかえに、お話作りの当初から用意していたとすれば、ウディよ、あんたは偉い! ボギー以上の男だ!




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