スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
スキヤキに マカロニ入れても 旨かろう
なんで、こんな映画を作ったのかなと思って、「わははわはは」と笑いながら最後まで観てしまって、分かりましたぞ。父親なくして声を失い、母親の死に目に目を閉ざした息子の平八が、自分がずっと、この映画のタイトルにもなっているジャンゴであることを疑わずに主役を演じながら、ただのガンマンに過ぎなかった伊藤英明の励ましにより、目も開き声も戻り、この顛末の後イタリアに渡り、ジャンゴを名乗ったとのこと。おいおい。
そのイタリアでのジャンゴの活躍を描いた作品、知る人ぞ知る、マカロニ・ウエスタンの名作の一つ、邦題は「続・荒野の用心棒」、原題はまさに「Django」ですな。そのマカロニ・ウエスタンの名作の主題曲が、この映画のエンディングに北島サブちゃん熱唱で使われていて、「おおおおお」と驚愕したしだいですよ。この映画じたいが紅白合戦からすれば、サブちゃん、この歌、年末の紅白で、もう歌うしかないんじゃありませんか(この曲、マカロニで聞いたときから私、好きですし)。
マカロニ・ウエスタン、懐かしいですなあ。本場アメリカの西部劇からしたら、なんじゃ、その軽薄短小で、バンバン撃ち合いだけの西部劇、とか、イタリアにもともと西部開拓もあらへんから西部劇なんてオカシイやおまへんか、などと当時は卑怯家、いや間違え批評家たちから酷評だらけ。
でも売れちゃったんですね。「ジャンゴ」の主演はフランコ・ネロ。もっと有名なのは、ジュリアーノ・ジェンマに、あの昨今は素晴らしい監督でもあられまするクリント・イーストウッド。彼、アメリカでは役者として泣かず飛ばずだったところ、イタリアへ飛んで、このマカロニ・ウエスタンで有名になったんでしたね。その出世作が「荒野の用心棒」。なんと、有名なお話、日本の黒澤明の作品「用心棒」のリメイクでもある、と。蛇足ですが、イタリア式ウエスタンをマカロニ・ウエスタンって名づけたのは、「さいならさいなら」のヨドチョーさんですね。
さて、お話は、源平の壇ノ浦の戦いから数百年。と言いながら、紅組は佐藤浩市演じる平清盛を筆頭の平家落ち武者軍、重盛に宗盛もいます。白組は伊勢谷友介演じる源義経に、牛若丸とくれば弁慶、那須与一もいます。荒唐無稽でありながら、部下を盾にする清盛や、義経と弁慶、特に弁慶が保毛尾田保毛男くんになるあたりの人間関係は、なるほどと思わせ面白いです。そういえば、ダンスの得意な平八の母の木村佳乃が演じる静さんも、これは恐らく源義経の愛妾の静御前から来ているんでしょうね。
そんな源平の争いにおける平家の栄華と没落を描いた平家物語の有名な出だしをクエンティン・タランティーノが冒頭に突如読み上げる(もちろん英語で)からビックリ。そして、そのタランティーノ演じるビリンゴと桃井かおり演じるルリ子の関係。ルリ子は凄腕の二丁拳銃の達人「血まみれの弁天」としての素性が解き明かされるんですね。
その修行時代の凄まじさ。スキヤキに「砂糖を入れすぎるな。白菜で甘みを出せ」とか「豆腐は絹ごしでなく焼き豆腐」とかね。忘れつつある日本の心を叩き込みますね。そして、静の旦那のアキラの素性も仄めかされますね。アキラの名に対し、ジャパニーズアニメ好き、なんてジョークでごまかす始末。しかも「あっ、そう」ですか。ちなみに、生卵溶いてスキヤキ食べるの苦手な人、増えてるみたいですね。「卵はきちんと茹でるなり焼くなり、しっかり調理しろ。チュウチュウジュルジュルする半熟なんてもってのほか」という。
ルリ子が「血まみれの弁天」とばれてからのアクションがかっこいいですよ、さすが桃井かおりはウコンの力。ちなみに、このルリ子という名、墓にアキラと並んでいたのを見て、私は浅丘ルリ子とともに小林旭を思い出していた。小林旭の渡り鳥シリーズ、ガンマンっぽい。
香川照之の味のあるコウモリ保安官、どっしり身を据えることもできずの二人一脚、挙句の果てに「なんじゃ~こりゃあ」の叫び。これこそ、この映画なのかもしれませんね。そんな中、ぬるい時代に生まれてきちゃった平八がいてくれるからこそ、彼に私らは唯一安心して寄り添える映画なのかもしれませんね。 二年前の三池崇史脚本監督の「妖怪大戦争」に出てた神木隆之介くん役と思い比べちゃいましたね。あ、そういやあ、監督はちゃいますが、平八くん、「ゲゲゲの鬼太郎」にも出てたの思い出しました。
和製西部劇なるスキヤキ・ウエスタン、みなさんは美味しくいただけましたでしょうか。次なるスキヤキ・ウエスタン、「ジョニー飛雄馬」とか「One Silver Yen」とかなる続編は誕生するのでしょうか。あっ、いや、いつまでもマカロニからネタを拾うよりも、和製にこだわるなら、ジャパニーズものからネタ拾いしたほうが良いかもしれませんね。「三匹の用心棒」シリーズとか、モンジローガンマン主演の「木枯らしの用心棒」とか。
それかあ、例えば今回、モチーフが平家物語だから、もっと時代遡って、卑弥呼が登場する大和朝廷と西部でもある熊襲との攻防をモチーフにするってのは・・・。