ブルース・スプリングスティーン、ロッド・スチュワート、ビリー・ジョエル、アンタッチャブル、アメリカ・メジャーリーグ、シカゴ・ホワイトソックス、シンシナティ・レッズ、ブラックソックス・スキャンダル、ワールドシリーズ、ケビン・コスナー、映画音楽、ロック、ジャズ、洋楽。
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歴音147. アンタッチャブル(ドリームソング.3)
今回のコラムは、連載「ドリームソング」の第3回です。
「ドリーム(夢)」をテーマにした新旧の洋楽曲を、数回に分けてご紹介しています。
以前のコラムを加筆修正して掲載させていただきます。
「ドーリム(夢)」の音楽曲を聴いていると、心の中に小さな希望が生まれてきて、何か 夢見心地(ゆめみごこち)になりませんか?
洋楽曲でも、日本の楽曲でも、「ドリーム(夢)」をテーマにした楽曲が膨大にありますね。
選ぶのに迷うほど存在します。
今回の連載では、新旧の「ドリーム」の洋楽曲を、私の好みで100曲あまり選んでみました。
連載「ドリームソング」から、新たな夢や希望をどうぞ見つけてみてください!
◇不正まみれのワールドシリーズ
前回コラムで、米国メジャーリーグの「ワールドシリーズ」で起きた「ブラックソックス・スキャンダル」の概要と、舞台となった都市シカゴのことを書きました。
1919年(大正8)の、シカゴ・ホワイトソックスと、シンシナティ・レッズが対戦した「ワールドシリーズ」は、いわゆる「八百長」試合でしたね。
この八百長試合の首謀者は、シカゴの犯罪組織です。
いわゆる、悪名高い「ギャング」です。
強力な犯罪組織と、その配下の多くの賭博師たちが、この「ブラックソックス・スキャンダル」に絡んでいました。
シンシナティ・レッズの球団関係者については、よくわかりません。
賭博を含む利益、金銭的なやり取り、恐喝など、多くの陰謀が隠れていました。
前回コラムでは、当時の都市シカゴが、巨大な「犯罪都市」となっており、シカゴの行政・司法・警察がギャングなどの犯罪組織に買収され、もはや健全で安全な都市機能を持っていなかったことを書きました。
犯罪に染まった都市シカゴでは、もはや、巨大な不正が、いつ起きてもおかしくなかったのかもしれません。
よりによって、そんな都市で、メジャーリーグの「ワールドシリーズ」が行われることになりました。
不正のない「ワールドシリーズ」や、関連したギャンブルなど考えにくい状況でしたね。
◇仕組まれた敗北
前評判では、圧倒的な強さのシカゴ・ホワイトソックスでした。
この年のワールドシリーズは、先に5勝したほうが優勝となります。
最大で9試合の可能性がありました。
選手層や実力からみると、ホワイトソックスが5勝0敗で勝つ可能性もあるとみられていました。
その「ワールドシリーズ」では、対戦相手のシンシナティ・レッズが、最終的にシリーズ制覇をするように計画されます。
毎試合の勝敗はもちろん、シリーズ全体の勝利を賭けることで、がっぽり儲かる仕組みです。
* * *
不正(八百長)で、野球の試合に勝利するのは簡単ではありません。
試合に勝利するのには、さまざま要因が絡みますので、たいへん難しいですね。
ただ、一方的にわざと負ける手段は、いくらでも考えられます。
勝利するよりは、はるかに やりやすいですね。
つまり、ホワイトソックス側がわざと負ければ、自動的にレッズが勝つということです。
野球の不正の場合、相手打者に、いくら打ちやすいボールを投げても、その打者が打ってくれなければ結果に結びつきません。
そのワールドシリーズでは、そんな不確実な手段はとりませんでした。
確実に、試合に負ける手法をとりました。
それも、ちょうどいいタイミングで失点し、逆転などないような方法です。
* * *
その時の不正の基本的な仕方は…
相手打者にボールをぶつけて、次々にデッドボールの走者を塁上に送り出します。
あるいは、フォアボールを連発して、走者を累上に送り出します。
ですが、相手打者が、タイムリーヒットを確実に打ってくれるとは限りません。
ランナー(走者)の押し出しの得点では、失点数が少なく、かなり怪しまれます。
走者がたまったところで、打ちごろのボールを打者に向けて投げ、外野フライや内野ゴロを打たせます。
必ずしも、ヒットである必要はありません。
そのボールを捕球した選手は、別の味方選手にボールを投げる際に、わざと暴投を投げます。
あるいは、ボールを受ける選手が、そのボールを捕球しそこないます。
あるいは、返球の途中でカット(中継)に入ります。
あるいは、ダブルプレーをエラーします。
基本的には、このようなかたちで、確実に相手に点を与えていくのです。
点を与えすぎても、怪しまれます。
微妙な ”さじ加減” で、相手に得点を与えていきます。
そんな芸当ができるのは、実績のある、大ベテランの超一流選手たちでないとできないかもしれません。
レギュラーシーズン中には、まず しないであろう、デッドボールの連発…、フォアボールの連発…、信じられないエラーの続出…、意味不明の判断ミス…、それも突然に、ある時に集中して起きました。
すべて、計算ずくの八百長プレーでした。
* * *
とはいえ、今も昔も、野球の試合では、八百長でなくとも、そのような失敗プレーが、時折 起こります。
ですが、シーズン20勝超の投手たちや、ホームラン王、首位打者争いをするような選手、鉄壁の守備を誇る選手たちが集まっている常勝軍団が、よりによって、ワールドシリーズで、これだけの頻度で起こすでしょうか…。
この不正を行うには、少なくとも、数人の主力投手と、野手の選手たちを買収しておく必要があります。
それから、ホワイトソックスの強力な主力打者たちにも、打たないようにさせなければなりません。
仮に、監督が、この不正を知らなかったとしても、実行することはできます。
ちょうど、ホワイトソックス内の主力選手の中には、球団の運営や、自身の扱いに不満を持っている選手が、相当にそろっていました。
悪質とまでは言えなくとも、球団経営自体が招いた、選手たちの集団不正といってもいいのかもしれません。
◇アンタッチャブル
さて、賭け事という意味で、賭博の胴元としては、試合数ができる限り多く、試合の勝敗が読みやすいほうが、利益が上がります。
そのワールドシリーズでは、8試合が行われ、シンシナティ・レッズが5勝3敗で勝利しました。
最大9試合ですので、ほぼ最大試合数に近い状態でした。
犯罪組織の計画通りだったでしょう。
「選手たちが、本気で戦えば、その試合は、ホワイトソックスが勝利するに違いない」
犯罪組織による、巧妙な人心掌握術が行われたのかもしれません。
ただ、このシリーズでは、新聞記者たちが、すぐに、その怪しさに気づき、騒ぎ始めます。
実は、シリーズが始まる前から、今回のシリーズは不穏な雰囲気がただよい、不正の噂が、世間に流れていました。
それよりなにより、第1戦から、ホワイトソックスの首脳陣や、他の選手たちが、何かの異変に気づき始めていました。
とはいえ、キャッチャー以外の、ほぼグラウンド上の全員が絡むような こんな多人数での不正(八百長)までは想像していなかったでしょう。
* * *
犯罪都市シカゴに暮らす方々は、ある意味、ギャンブルの不正を見抜くチカラを相当に持っていたのかもしれません。
この不正の裏に誰がいるかも、すぐに理解していたことでしょう。
当時のシカゴは、行政も、司法も、警察も、犯罪組織に買収され、手も足も出せない状況でした。
何があっても、犯罪組織に関わった関係者に、「逮捕」や「起訴」、まして「有罪」の判決など起こるはずがないだろうと、多くの市民は感じていたのかもしれません。
まして、疑惑を糾弾して、何か ”みせしめ” の逆襲でもされてしまっては、命が幾つあっても足りません。
1919年(大正8)のワールドシリーズ終了後は、一時的に、不正疑惑だと騒がれましたが、そのまま、何もなかったように時が過ぎ去っていきました。
「アンタッチャブル(ふれてはいけない者、手足が出せない者)」が、シカゴの街を支配していましたね。
まさに、犯罪都市・暗黒街のシカゴは、アンタッチャブル!
◇エリオット・ネス
その不正の「ワールドシリーズ」は、1919年(大正8)です。
この時には、まだ、あの男がシカゴで、その役職に就いていませんでした。
* * *
このようなシカゴの現状を打破するには、シカゴ自身のチカラでは、もはや無理です。
それを行えるのは、アメリカという「国」のチカラしかありません。
シカゴの街を浄化できるのは、国しか いませんでした。
そして、フーヴァー大統領は、シカゴの犯罪組織の壊滅を目指しました。
1927年(昭和2)、エリオット・ネスは、アメリカ合衆国の財務省(後の司法省)の酒類取締局に入局します。
ここは、警察組織に属する機関です。
彼の義兄は、連邦捜査局(今のFBI)の職員です。
1930年(昭和5)、彼は「特別捜査官」として、シカゴにやって来ます。
犯罪組織の収入源である酒類の取り締まりと、犯罪行為の摘発が仕事です。
買収まみれで、緩み切った シカゴの公務員たちの中から、優秀な者を選抜し、特別捜査班が作られます。
最終的に、エリオット・ネスら捜査班は、FBIがずっと逮捕できなかったアル・カポネを、見事に逮捕しました。
英雄となったネスは、後に、米国内の各地の暗躍犯罪都市で、同様の仕事を行いました。
ですが、特に出世することなく、公務員を定年後、借金生活を送ります。
「アルコール依存症」と「ワーカホリック(仕事中毒)」が、彼の負の一面でもあったため、彼の生涯には、多くの困難が続きました。
多くの転職を行い、彼の私生活は、徐々に荒れていきました。
そうした中、1956年(昭和31)、外部の者から、シカゴでの活躍を中心に自伝本を残さないかと言われ、別の作家に執筆を依頼しました。
それが「アンタッチャブル(The Untouchables)」という本です。
「アンタッチャブル」という言葉は、1920年当時のマスコミがつくった、犯罪組織を示す名称です。
* * *
シカゴ出身の、実際のネスは、映画のような、派手な撃ち合いをするような人間ではなかったようです。
ただ、シカゴ時代は、頑固一徹、正義感の強い、孤高の役人であったようです。
内面には、豪傑さをしっかり持っていたのだろうと思います。
彼は、翌年の1957年(昭和32)、本が出版される直前に、心臓発作で54歳で亡くなりました。
* * *
1919年(大正8)のシカゴでの不正の「ワールシリーズ」は、エリオット・ネスがシカゴで活躍する8年前の出来事です。
その1919年(大正8)は、後にシカゴの暗黒街の”ボス”となる、別名「スカーフェイス」の、アル・カポネが、ちょうど シカゴにやって来た頃でした。
◇映画「アンタッチャブル」
1987年(昭和62)の米国映画「アンタッチャブル」は、名作の誉れ高い作品ですね。
エリオット・ネスと、暗黒街のボスのアル・カポネとの、壮絶な戦いを描いた、素晴らしい作品でした。
エリオット・ネスを演じたのは、俳優のケビン・コスナーさん。
アル・カポネを演じたのは、俳優のロバート・デ・ニーロさん。
二人とも、役柄を演じているのではなく、本人たちではと錯覚するような、はまり役!
この映画では、いわゆる「デニーロ・アプローチ」と呼ばれる、デ・ニーロの「役づくり」の凄さを、感じさせてくれましたね。
映画では、派手な脚色がされていますので、本もののエリオット・ネスの姿ではないかもしれませんが、果たした仕事の結果は同じです。
1957年(昭和32)に、心臓発作により 54歳で亡くなったネス本人にも、この映画を見せてあげたかった!
ご存命なら、84歳で見ることができましたね。
2022年のブレーレイの宣伝用映像
* * *
この映画には、シカゴ警察のベテラン警察官(演:ショーン・コネリー)が登場します。
007映画では、不死身のジェームス・ボンドでしたが、この映画では、まさか 007が…。
いつの時代も、正義感のある勇敢な警察官が、警察署内にたくさん存在していてほしいものです。
エンニオ・モリコーネ作曲
♪死のテーマ
* * *
本連載「ドリームソング」の第一回は、1989年(平成元)の米国映画「フィールド・オブ・ドリームス」のお話しから始まりましたが、その映画の主演も、俳優のケビン・コスナーさんでしたね。
彼は、シカゴにつながる、二つの映画に主演されました。
何か不思議な ”つながり” を感じる、その二つの映画に、同じ俳優さんが主演をされたことに、私は、うれしい気持ちになりました。
二つの映画の主人公…
「それを作れば、彼は来る」とは、そういうことだったの…?
エンニオ・モリコーネ作曲
♪「アンタッチャブル」テーマ
◇八百長シリーズの8試合の概要
さて、ここからは、1919年(大正8))の、シカゴ・ホワイトソックスと、シンシナティ・レッズが対戦した「ワールドシリーズ」の、いわゆる「八百長」試合の概要を書きます。
まずは、八百長に加担した8選手です。
(1)エディ・シーコット(投手)
1919年(大正8)のシーズンは、防御率1.82で、29勝で最多勝。
シーズン中にデッドボールは2回だけ。
とんでもない好成績!
(2)レフティ・ウィリアムズ(投手)
1919年(大正8)のシーズンは、防御率2.64で、23勝しました。
エディには及びませんが、今のメジャーリーグで考えてみても、とんでもない好成績!
実は、彼は、犯罪組織から、八百長に加担しないと、妻に危害を加えると脅迫されていたようです。
(3)チック・ガンディル(一塁)
(4)フレッド・マクマリン(二塁)
(5)スウィード・リスバーグ(ショート)
(6)バック・ウィーバー(三塁)
(7)ハッピー・フェルシュ(外野手)
(8)ジョー・ジャクソン(外野手)
1919年(大正8)のシーズンは、打率3割5分1厘、181安打、96打点、7本塁打。
彼は、1911年に、「4割打者」としてシーズンを終えています。
とにかく、メジャーリーグを代表するスーパースター選手のひとりでした。
ベーブ・ルースも、彼の打撃にあこがれ、かなり技術を学んだようです。
* * *
実は、この8人は、球団オーナーに、煙たがられていた選手たちだったのです。
ケチなオーナーであったことは、前回コラムで書きました。
彼は、一部の嫌いな選手に、高い成績を残しても、難癖をつけては、給料の額を下げようとしたようです。
オーナーと関係性のよい、好待遇の選手たちは、この陰謀に加担しませんでしたが、オーナーに反感を持つ選手たちが、今回の不正(八百長)に加担することになりました。
犯罪組織は、こうした球団内部の亀裂に目をつけたのかもしれません。
「これは、この不仲を利用すれば、がっぽり いけるぞ!」
* * *
さて、1919年(大正8)の「ワールドシリーズ」の試合内容です。
〔第1戦〕
シーズン中に2回しかデッドボールを与えていない、29勝の最多勝投手エディ・シーコットが、先頭打者にデッドボールをぶつけました。
これは、犯罪組織に不正(八百長)を実行するという合図だったとされています。
試合の4回になり、エディは捕手(キャッチャー)のサインを無視し、5連打を浴びます。
4回を投げきることができず6失点。
1対9でレッズが大勝。
監督は、この時に、球団オーナーに「何か おかしい」と伝えました。
この試合の前に、エディは犯罪組織から前金を受け取っていました。
〔第2戦〕
シーズン23勝の投手レフティ・ウィリアムズは、3回に、フォアボールを三連続で与え、その後にヒットを二本。4失点で完投負け。
完投すれば、すべての投球を自身でコントロールできますね。
必要なら、彼の行動いかんで、さらに失点できたでしょう。
微妙な得点差の、2対4でレッズが勝利。
犯罪組織から、レフティやチック・ガンディルらに報酬が支払われました。
〔第3戦〕
今回の不正(八百長)に加担しなかったディッキー・カー投手が、なんと完封勝利。
0対3で、ホワイトソックスが勝利しました。
投手が八百長メンバーに入っておらず、相手チームも打てず、得点しないので、どうにもなりません。
この試合は、ホワイトソックスの勝ちでいいと、犯罪組織が判断したのかもしれません。
実は、このディッキー・カー投手は、八百長をした「アンラッキーエイト」のひとりではありませんでしたが、あまりの給料の低さに、ケチなオーナーの元で働くことを嫌い、後に、勝手にセミプロ球団に移籍してしまいました。
彼は、それを理由に球界を永久追放になりました。
彼が、今回の不正(八百長)のメンバーに参加していなかったのかは、わかりません。
ですが、彼が、キレて、身勝手な単独行動を起こす性格だということを、犯罪組織は事前に知っていたのかもしれません。
そんな気まぐれで奔放な彼に、八百長の誘いを、あえて しなかったのかもしれません。
〔第4戦〕
第1戦の先発投手エディ・シーコットが、再登板。
5回に、ピッチャーゴロを一塁手に悪送球し、ランナーを出します。
その後に、二連打を浴び、外野手のジョー・ジャクソンの返球をエディが途中で意味もなくカットしたことで2失点します。
この2失点だけで、2対0で、レッズが勝利。
ある意味、絶妙な八百長の連携です。
チック・ガンディル、スウィード・リスバーグ、ハッピー・フェルシュ、ジョー・ジャクソン、レフティ・ウィリアムズに報酬が支払われました。
〔第5戦〕
第2戦の先発投手レフティ・ウィリアムズが、再登板。
6回に4失点。
5対0で、レッズが勝利。
ようするに、八百長に加担した打者たちは、打つ試合は相当に打ちまくり、打たない試合は、完全に打たなかったといっていいのだろうと思います。
何でもないダブルプレーで、エラーの連続。
〔第6戦〕
第3戦で好投したディッキー・カー投手が先発し、4回に4失点。
5対4で、ホワイトソックスの勝利。
なんとなく接戦のように思われますが、第6戦と第7戦は、犯罪組織から、約束した報酬額が8選手にしっかり支払われないため、8選手は、八百長を行うことをやめ、本来のチームの強さが出たようです。
〔第7戦〕
第1戦と第3戦に投げたエディ・シーコットが、1失点のみの完投勝利。
1919年(大正8)のレギュラーシーズンの彼の成績を考えれば、本気で投げれば、このような結果になるのは想像できます。
ジョー・ジャクソンやハッピー・フェルシュの適時打で、4対1で、ホワイトソックスの勝利。
ようするに、第6戦と第7戦は、八百長が行われずに、ホワイトソックスが自力で勝利したということです。
これは、犯罪組織による、8選手への心理的な操作だったのかもしれません。
実力通りに、2試合を勝たせよう…。
ここまでで、レッズの4勝3敗です。
あと1勝で、レッズが ワールドシリーズ制覇ですね。
問題は、第8戦です。
〔第8戦〕
先発は、第2戦と第5戦の両戦で負けた レフティ・ウィリアムズ投手です。
妻に危害を加えると脅された投手です。
犯罪組織は、彼には、シリーズで3敗を確実にさせようとした可能性が高いです。
彼は、1回に3失点して、すぐに降板しました。
ホワイトソックスの監督は、すぐに察知したのかもしれません。
これによって、レッズの打線が勢いづいてしまいました。
ホワイトソックスのジョー・ジャクソンが、3回にソロ・ホームラン。
ジョー・ジャクソンやチック・ガンディルの適時打で点を加えていきますが、10対5でレッズが大勝し、レッズがワールドシリーズを制覇しました。
ですから、第8戦は、八百長を行った選手と、八百長をしなかった選手が、混合しているような試合なのでしょう。
* * *
1戦、2戦、4戦、5戦、8戦は、少なくとも負けるための不正(八百長)が行われたようです。
どうも、シリーズの途中の段階で、不正の見返りの報酬が、選手たちに しっかり支払われることがなかったようです。
おそらくは、犯罪組織側の意図的な支払い操作でしょう。
賭博という意味で、あえて、ホワイトソックスにも数試合を勝たせて、シリーズでの試合数を増やすことが目的だったでしょうか…。
レッズが、5勝3敗で、ワールドシリーズを制覇しました。
不正(八百長)をした8選手は、球団に対して、普段から、待遇の低さに不満を持っていたともいわれています。
8選手は、メジャー球界全体の中で、特別に低い年俸であったわけではなかったようですが、ホワイトソックスのオーナーから好かれていない選手たちであったのは間違いなさそうです。
結局、そうした一部の選手たちの不満を、犯罪組織に、上手に利用された可能性が高いですね。
犯罪組織は、がっぽり儲けたことでしょう。
◇「悪」から、離れろ! 近づくな!
これほどの規模の八百長プレーですから、同じチームの別の選手たちが気が付かないはずはないと思います。
監督からすれば、選手たちを、怪しいと思う気持ちと、信じたいと思う気持ちが混在し、迷いの采配にも感じます。
* * *
実は、ホワイトソックスには、生涯通算254勝をあげることになるレッド・フェイバーという大投手が1914年(大正3)から在籍していたのですが、彼は1918年(大正7)の第一次大戦で従軍し、ケガをし、さらにスペイン風邪の後遺症もあり、1919年(大正8)のレギュラーシーズンは、11勝で終わっています。
とはいえ、彼は、11勝もした、チームの大黒柱のエース投手で、チームの精神的支柱でした。
今のロサンゼルス・ドジャースでいえば、大谷投手やカーショー投手のような存在を想像します。
彼は、1919年(大正8)の翌年の1920年から1923年まで、毎年20勝以上します。
ですが、彼は、1919年のワールドシリーズに出場するメンバーから はずれています。
そのため、そのワールドシリーズでは、エディ・シーコットを大黒柱のエース投手として戦うしかありませんでした。
今の時代のスポーツでも、ビジネスでも、政治でも、国際外交でも、「不正に加担してくれなくてもいいですが、試合に参加しないで、棄権だけしてくれれば、それでいい」という黒い取り引きがあったりします。
1919年(大正8)のこの時に、犯罪組織から、フェーバー投手に、何らかのアプローチがあったのか、なかったのかは、わかっていません。
ただ、彼がまったく何も知らなかったのかという疑問は残ります。
* * *
そのワールドシリーズでは、シリーズ前から、不正が行われる可能性があるという黒い噂が、世間に流れていました。
あくまで私の想像ですが、本来の大黒柱であるレッド・フェイバー投手は、不正の可能性の高いワールドシリーズに、参加することを、あえて避けたのではないだろうかと感じます。
家族や、周囲の仲間からの助言などもあり、シリーズの試合への出場を避けたのかもしれません。
体調を理由に不参加とし、自身のそれまでの偉大なキャリアに傷がつくようなことを避けたのかもしれません。
あくまで、想像の話ですが、レッド・フェイバーが、このシリーズに参加していたら、ホワイトソックスが簡単にシリーズで敗北したかは、私は、はなはだ疑問です。
フェイバー投手が、悪の道に走りそうなチームメイトを止めようとした可能性も考えられますが、それをも阻止できる犯罪組織のチカラだったろうと思います。
* * *
個々の選手の周囲に、適格な助言ができる人がいるか、いないかでも、状況は相当に違ったでしょうね。
目先の金に目がくらんだ家族が、間違った言葉などを選手本人に言おうものなら、たいへんですね。
8選手の中には、犯罪組織に弱みを握られていたり、レフティ投手の他にも、脅迫を受けた者もいた可能性があります。
とにかく、犯罪都市の当時のシカゴで、ワールドシリーズが行われたこと自体が、アンラッキーでしたね。
◇夢ゆめ…
さて、当時のシカゴの行政も、司法も、警察も、犯罪組織に買収されていたことで、不正をした8選手は、逮捕や有罪はもちろん、不正が表沙汰になることなど、到底 思っていなかったでしょう。
まして、野球界から追放されるなどとは、夢ゆめ…。
「そのうちに、妙な噂など消え去り、元の状況に戻るだろう。ずっと野球をし続けることができるだろう」と安易に考えていたのかもしれません。
1919年(大正8)のワールドシリーズの後、この八百長疑惑問題は、うやむやのまま、月日が経っていきました。
ですが、1921年(大正10)になってから、この問題が再燃!
そして、事態は大きく変化します。
メジャーリーグの決意!
アメリカの決意!
まさに、大ナタが、振り下ろされました。
そのお話しは、次回コラムで書きます。
◇You must not!やっちゃいかん!
ここからは、前回コラムに引き続き、悲運の8選手「アンラッキー・エイト」に向けて、ドリームソングを!
* * *
ホワイトソックスの、そこの8人!
You must not do that!
絶対に、そんなこと、やっちゃいかん!
* * *
そこの8人!
大切なものを、川に流してしまっては、いけないよ!
失ってはいけないものが、人にはある!
ビリー・ジョエル
♪ザ・リバー・オブ・ドリームス(1993・平成5)
* * *
そこの8人!
暗闇に堕ちたのは、自分自身のせい…。
実際に現実にしてはいけない夢もある…。
夢は、想像もしていない姿になることもある…。
クランベリーズ
♪ドリームス(1992・平成4)
* * *
そこの8人!
あんたらの夢は、悪夢に変わるぞ!
毎晩、ひどい夢に うなされることになるぞ!
サラ・ボーン&カウント・ベイシー・オーケストラ
♪ダーン・ザット・ドリーム(いやな夢 / 1958・昭和33)
デクスター・ゴードン
♪ダーン・ザット・ドリーム(いやな夢 / 1964・昭和39)
◇ドリームソング
今回も、ドリームの洋楽曲を一気に!
パット・ベネター
♪ワイド・アウェイク・イン・ドリームランド(1988・昭和63)
オジー・オズボーン
♪ドリーマー(2001・平成13)
レインボー
♪ストリート・オブ・ドリームス(1983・昭和58)
リッチー・ブラックモアは、夫妻でも…
ブラックモアズ・ナイト
♪ストリート・オブ・ドリームス(2006・平成18)
ガンズ・アンド・ローゼズの1999年(平成11)の楽曲「ザ・ブルース」は、2008年(平成20)に、楽曲「ストリート・オブ・ドリームス」として生まれかわりました。
2006年(平成18)のライブ演奏です。
ガンズ・アンド・ローゼズ
♪ザ・ブルース(ストリート・オブ・ドリームス)
デヴィッド・ボウイ
♪ムーンエイジ・デイドリーム(月世界の白日夢)
(1971・昭和46)
* * *
ロッド・スチュワートは、1972年(昭和47)の自身の楽曲を、1992年(平成4)に、デヴィッド・ギルモア、ジョン・ポール・ジョーンズとともに演奏しました。
ロッド・スチュワート、デヴィッド・ギルモア、ジョン・ポール・ジョーンズ
♪イン・ア・ブロークン・ドリーム(1992・平成4)
ロッド・スチュワート
♪ネバー・ギブ・アップ・オン・ア・ドリーム(1981・昭和56)
アート・ガーファンクル
♪ドリームランド(1997・平成9)
マーク・ノップラー
♪ドリーム・オブ・ザ・ドラウンド・サブマリナー(2012・平成24)
* * *
下記の原曲は、パンクロック・デュオ「スーサイド」の1979年(昭和54)の同曲です。
2008年(平成20)に、ロック界の ”ボス” が歌い、すごいドリーム曲に!
同じ”ボス”でも、暗黒街ではなく、ロック界のほうは、Nice Dream(ナイス・ドリーム)!
皆さま… どうぞ、今夜も、
ベイビ~! Sweet dreams(スウィート・ドリームス)!
ブルース・スプリングスティーン
♪ドリーム・ベイビー・ドリーム(2008・平成20)
次回コラム「ドリームソング.4」につづく…
2025.7.25 天乃みそ汁
第2回
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