イギリス民謡「グリーンスリーブス」。ビートルズ「愛こそはすべて」。リック・ウェイクマン「ヘンリー八世と6人の妻」。前エジンバラ公フィリップ殿下の御葬儀。キャサリン妃の存在感。英国王室とパールチョーカー。松山英樹選手のグリーンジャケット。ヘンリー8世とエリザベス女王。世界をリードする国。コロナワクチン争奪戦。女性たちの序列争い。ブラックモアズ・ナイト。リッチー・ブラックモアさん。ファイザー。


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各コラムで紹介した曲目リストは、「目次」で…

  

あの曲や動画はどこ… 音楽家別作品

 

*今後の予定曲

 

音路(27)緑色の魔力 ~ グリーンスリーブス

 

 

◇フィリップ殿下(前エディンバラ公)、御葬儀

前回コラム「音路(26)より暗い夜…でも希望と栄光、そして威風堂々」では、英国王室のエリザベス女王の夫の「エジンバラ公 フィリップ殿下」の御逝去について書きました。

その後、2021年4月17日、ロンドン近郊にあるウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂で、近親者のみで葬儀が行われました。
私は、長く中継テレビ映像を見る時間がとれず、ニュース番組でハイライト映像を見て、あとはインターネット上の写真や動画、情報を見ました。

世界的なコロナ禍でなければ、各国王室の代表者、各国政府の代表者、英国内の多くの貴族や財界人、法曹界、芸術分野などの方々が葬儀に参列し、多くの市民が見守るのでしょうが、さすがにそれは行われませんでした。
無理に大人数を集めることをしませんでした。

今のコロナ禍の中で、無理に大人数を集め、もしコロナ感染の発信元にでもなったら、国際問題にもなりますし、なにより英国王室と英国自体に大きなダメージを与えてしまいます。
「世界をリードする国として君臨する」には、自国だけでなく相手国への配慮もしっかり行う為政者が、そこにいるのかどうかということかもしれませんね。


◇世界をリードする国

今、一部の「世界をリードする国」でしか製造できない「コロナ・ワクチン」が、これから世界にどのようなかたちで配分されていくのか注目されていますね。
それら一部のチカラのある国の行動が、世界のコロナ感染状況に大きな影響を与えそうです。

今、英国のアストラゼネカ社製のワクチンの他国での使用は、非常に微妙な段階ではありますが、ある意味、英国は、犠牲はあっても結果を出しました。
参考になることは多いとも感じます。

* * *

日本は、ワクチン入手という点では、まだまだ世界の周回遅れで、今後の提供について、米国のあの製薬会社ファイザーと単に合意をしただけで、ファイザー社のトップと直に会えてもいないようです。
首相が渡米したのに、握手する映像すらありません。

ワクチン開発情報が世界を飛び交っていた頃に、日本は「ファイザー詣(もうで)」に出遅れてはいなかったでしょうか…。
聞くところ、イスラエルは数十回に渡って出向いた模様…?

日本はまさに今、正念場ですね。
ワクチンは、注射を2回打てばそれでいいという話しでもありません。
合意ではなく、何本をいくらで買うという実際の契約を交わした外国が多い中、不安は残ります。

まだ日本には、蓄積した財力や、アジアの中の米軍の重要度という切り札もありますが、五輪交渉も絡めて、今は相当な外交交渉が行われているのでしょうね…。

本来、技術的に日本が国内で独自にワクチン製造できないとは思えません。
今回は、国際的な外交戦争、情報入手戦争、ワクチン争奪競争に遅れをとったのかもしれません。
情報収集能力と状況分析は、いつの時代も日本の大きな課題ですね。

* * *

サンマ、サケ、ウナギ、カニ、コーヒー豆、トウモロコシなど、すでに一部の食糧の分野でも、世界では争奪戦が繰り広げられています。
争奪戦は、石油、半導体、レアアース、宇宙分野、労働者集めだけではありません。
気候変動とともに、争奪戦になる食糧の種類の範囲はますます拡大するでしょう。

日本国内でも、お米、お茶、果物の産地が、急速に北上しています。
日本は、北海道より北に領土はありません。
日本アルプスなど高山帯でも、温暖化の影響は絶大です。
そのうち、食糧の大半は、国内の冷暖房付き工場で生産する時代が来るのかもしれませんね。
電力は足りるのか…?

世界をリードするような国であれば、おそらく争奪戦に負けることはないのでしょう。
争奪戦に弱点を持つのなら、着実に自国でつくる…、さまざまな分野での日本の巻き返しを期待しています。
製造産業を手放してはいけないと感じます。
日本企業なのに、国内に製造工場がまったくない企業が増えてきたとは…、昭和世代としては悲しすぎます。


◇歴史絵巻のような映像

さて、英国でのその葬儀では、さまざまな映像がテレビに映されました。

葬儀の模様のお話しは置いておくとして、英国王室の方々の衣装は注目の的でした。
英国を代表する多くの高級自動車も、自動車ファンには、見ただけでうならされるような映像でしたね。
あの馬車も話題でした。
何か荘厳な歴史絵巻を見ているような気持ちにもなりました。
英国の歴史の底力を、率直に感じました。


◇パールチョーカー

私は、ジュエリーなどの宝飾品に詳しくはないのですが、ネット上では、キャサリン妃が首につけておられた真珠の「パールチョーカー」が日本製だと話題になっていましたね。
真偽はよくわかりませんが、どうもかつて日本政府が英国王室に贈ったものを、つくり変えたもののようです。
写真を見ただけで、宝飾品の素人の私でも、これは見事な品だと実感します。

* * *

私は英国王室の宝飾品にまったく詳しくありませんが、どうも、このパールチョーカーのデザインは何か伝統があるようです。

エリザベス女王をはじめ、各女性が同じデザインのパールチョーカーをお持ちで、大事な行事の際に身につけられているようです。
ひょっとして、一つの品が受け継がれているのでしょうか…。
ネット検索すれば、各方々のパールチョーカーを身につけた写真を見ることができます。

日本の葬儀でも、女性は真珠を身につけますが、これは紛れもない英国からの伝承だと思います。
それにしても、今回の葬儀で、王室の女性の方々の美しい「いで立ち」には感服しました。
もはや喪服の範疇(はんちゅう)を越えているようにも感じます。


◇王室ファミリー

有力な人物の葬儀では、どこの国でも、「弔問外交(ちょうもんがいこう)」が行われます。
普段、出会うことが到底できないような人物どうしでも、さまざまな事情を越えて、その機会に出会えるからです。
前述しましたとおり、今回は、国際的な弔問外交は難しい状況ではありましたが、王室ファミリー内の弔問外交はしっかり行われたように感じます。

今回の、マスコミの注目点のひとつに、あのヘンリー王子(チャールズ王太子の次男)の存在がありました。
王室公務からはずれたとはいえ、王位継承順位の中には残っています。
今後、今の状況は変わっていくかもしれません。
このままで終わるとも思えません。

* * *

キャサリン妃は、次期王位につくチャールズ王太子の長男である、ケンブリッジ公ウィリアム王子の奥様ですね。

ウィリアム王子の王位継承順位は、現在、チャールズ王太子に次ぐ、第2位です。
ようするに次々期国王です。
ウィリアム王子とキャサリン妃の間の子供たち三人が、継承順位の第3位から第5位までとなり、そのあとにヘンリー王子以下、60位ほどまで続きます。

* * *

エリザベス女王は、もちろん王室のトップではありますが、女性陣のトップでもあります。
今は、キャサリン妃が、女性陣の中での序列3位ということかもしれません。
ひょっとしたら、形式的には別の人物が第2位でいたとしても、実質的には、高齢の女王を除く女性陣の中で、圧倒的なトップの存在なのかもしれません。

前回コラムでも書きましたが、どこの国の王室も、さまざまなリスクを抱え、国民からの支持がなければ、その存在が危うくなりかねません。
今回の葬儀では、さまざまな問題を抱える、ヘンリー王子と、その他の王室メンバーとの間を、キャサリン妃が上手くとりもったような映像が、世界中に配信されました。
まさに全世界に見えるかたちで披露しました。

王位継承という意味では、日本の皇室よりも、継承権利者の人数が多く、安定度が高いのかもしれません。
ただ、人数が多いことは、勢力争いが起きやすくはなります。
今回の葬儀では、キャサリン妃という女性の存在感を、マスコミを使って強烈に見せつけられた気もします。

* * *

次期国王になるチャールズ王太子の奥様は、後妻のカミラ夫人ですが、この二人の間には子供がいません。
皆さまご存じのとおり、ダイアナ前妃の事故死を含め、一連のいきさつは非常に複雑でベールに包まれています。
ウィリアム王子とヘンリー王子の生母は、今は亡き前妻のダイアナ前妃です。
ウィリアム王子とヘンリー王子の子供たちにとって、祖母はダイアナ前妃です。


◇女性たちの序列争い

いつの時代も、どこの国でも、王室内の一部の女性は非常にチカラを持つもので、歴史を見ると、その序列順位争いは、男性陣よりも熾烈であったりします。

日本の豊臣家でも、徳川将軍家でも、まったく同じでしたね。
秀吉や、代々の徳川将軍でさえ、その順位を簡単には決められません。

秀吉による、京都の醍醐寺(だいごじ)での有名な「醍醐の花見」の席で、最終的な豊臣家内の女性の順番が決まりましたね。
茶々(本名:菊子 / 後の淀君)は、最大のライバルの京極竜子(きょうごく たつこ)をおさえ、おね(北政所 / 秀吉の正室)に次ぐ、二番目の地位を得て、着々と準備を始めますね。
あくまで個人的な印象では、もし竜子が女性陣トップとなり、いずれ豊臣家の事実上の最高権力者になっていたら、豊臣家の滅亡はなかったかもしれないとも感じます。

徳川家康は、織田信長の血縁であり、二代将軍 秀忠の正妻でもある「お江(おごう)」のチカラをおさえ、明智光秀の最重要家臣であった斎藤利三の娘の「春日局(かすがのつぼね)」を女性陣のトップにすえ、後の江戸城内の女性組織「大奥」の基礎を作らせます。
織田家つながりの「お江」と、明智家つながりの「春日局」の、因縁の関係は江戸幕府内でも、熾烈な争いになりましたね。
最終的には、三代将軍の乳母の春日局の勝利でした。

乳母が生母に勝った特殊な例ですが、家康による、女性陣の統率のための巧みな戦略でしたね。
家康は、この女性戦略を、皇室戦略にも上手に絡めて利用しました。
さすが、ある時期から正室(正妻)をつくらず、大勢の側室をつくった、「後家殺し(ごけごろし)」と呼ばれた家康です。


◇キャサリン妃の存在感

英国に話しを戻します。

その国の国王の生母という、圧倒的な地位は、ある意味、国王をもしのぐチカラを持ちます。
江戸幕府内でもそうでしたが、代々の将軍の生母は絶対的なチカラを持ちます。
将軍の正室(正妻)よりも、実質的には上と考えていいと思います。
江戸時代の大奥の騒動の半分は、この関係から生まれます。

* * *

予定では、エリザベス女王の後は、しばらくは男性国王が続くはずですが、キャサリン妃は、自身の3人の子供の誰が国王になっても、ほぼ間違いなく国王の生母になります。

いずれ、国王夫人(カミラ妃)と、次期国王夫人であり かつ次々期国王の生母(キャサリン妃)では、どちらが実質的に女性陣のトップとなるのでしょうか。
世界史を見ても、日本史を見ても、とりまきの臣下の者たちや、他国の政府が、どちらの女性に注目するかは明らかです。
キャサリン妃のファッションの好みをつかむことは、周囲の最重要課題のひとつになりますね。

* * *

実は、歴史では、重要な儀礼で身につけた衣装や宝飾品に、意味が込められていることは少なくありません。
あのパールチョーカーには、何かの意味でもあるのでしょうか…?

英国王室の宝飾品研究者たちは、何かに気づいているのかも…。
今回の葬儀では、何かを見せつけられたのかもしれませんね。

* * *

今回のキャサリン妃の行動は、エリザベス女王の指示だったのかどうかは知りませんが、各国王室の一般的な慣習や、これまでの英国王室の行動を考えれば、その行動が、王室ファミリーのごく限られた人物だけの判断で行われたものとは、到底思えません。

それに、一般的に考えれば、あの位置に報道ヘリコプターがカメラを持って飛行しているとは考えにくいですね。
通常なら、あの位置で飛行させないかもしれません。
ある程度の範囲の人間たちが、その出来事を事前に知っていたのは間違いないと思います。

日本史の中でも、葬儀が、政治的な行動の機会に使われたことは山ほどあります。

* * *

この映像を見て、これからも王室の女性陣が重要な役割を果たしていくと世界は感じたと思います。
次の時代も英国王室には、控えめではあっても、しっかりとした女性陣のトップが君臨するのだろうと感じました。

キャサリン妃が、周囲の男性たちの軽率な言動に動じずに、きっちりと話し合いで解決する度胸を備え、負けない人物であることは、皆が知るところです。
エリザベス女王から見ても、信頼が厚いのかもしれませんね。

王室の運命は、これからも数名の女性たちが握っていくのかもしれませんね。


◇誰かがいてこそ…

どこの国の王室の歴史でもそうですが、去る方がいれば、新たにやって来る方もいます。
細かな配慮のできる、優れた王や、為政者がいればこそ、その国は安定するのかもしれません。

わが家も「かみさん」あっての、わが家…、なんて一般家庭も少なくないかもしれませんね。
お局様への、「詣(もうで)」と「おうかがい」は、いつの場面でも大切ですね。

* * *

報道の情報では、「エリザベス2世」女王は、亡くなられたフィリップ殿下に宛てて、最後の手紙をしたためられたそうです。
もちろん内容は非公開ですが、文末のサインには、女王に対して、特定の王室の人物しか使えない、女王のニックネームがつけられているようです。
使用できる人物の中には、もちろん故フィリップ殿下もおられます。

おそらく数代先の数百年後でなければ、その内容が公開されることはないでしょう。
その中に、夫婦の間柄のわかる内容があるのだろうと思います。
後世の人々に、その内容はお任せします。


◇緑色の衣装といえば…

さて、キャサリン妃といえば、私は、あの鮮やかな緑色一色のあのドレス衣装の映像が、どうしても頭から離れません。
緑色系のドレスや衣装はたくさんありましたが、いつのことだったか…、衝撃的な緑色のドレスの記憶が私の中にあります。

王室や皇室では、単色の衣装も多く用いられますが、見事なデザインと着こなしにはいつも感服させられます。
そして、そこには色に意味があったりもしますね。

* * *

一般的に、緑色の服を想像すると、一見、派手ではないようにも感じますが、意外と集団の中で目立つ色です。
赤色や青色、黒色、白色、黄色は、使用する人も多く、ワンポイントなどでも多く使用されますので、意外と集団の中に散らばって見えたりもします。
その中に、緑一色の洋服があったりすると、結構 目立ちますね。


◇マスターズの「グリーン・ジャケット」

緑色の衣装といえば、先頃、米国のゴルフ界の四大メジャー選手権のひとつである「マスターズ・トーナメント」で見事に優勝した松山英樹選手が袖(そで)を通した「グリーン・ジャケット」を思い出します。

この緑色のジャケットの発端は、多くの人々の中で、主要な人物たちがすぐにわかるように、緑色の「グリーン・ジャケット」を着用させたとのことです。
私はかつて、ゴルフだけに「グリーン」にかけた、どこかのオヤジのだじゃれかと思っていましたが、それだけでもなさそうです。
今は、歴代の優勝者に与えられる名誉ある、緑色のジャケットですね。
世界の男性プロゴルファーたちが皆、この「緑色」を目指しています。

* * *

男性にとって、Tシャツやユニフォーム、ジャンパーなどならまだしも、よほどのことがないと、緑色一色のスーツのようなジャケットを、普段に着るのは勇気が入ります。

「なにそれ…松山選手のつもり…下手くそなのに、服だけは立派だ」と言われてしまいそうです。
一層、着にくい緑色のジャケットにはなりました。
まして、ゴルフ場には着ていけませんね。

とはいえ、こんなことで、男性たちは緑色のシャツやジャンパー、靴などを、新しく買ったりするものですね。
松山選手にあやかりたい…?

* * *

「グリーン・ジャケット」を着た松山選手が、両腕を上げる映像シーンは、これからも繰り返し放映されることでしょう。
まさに、念願の最高位を手にした者だけが着ることのできる、最高の「緑色」です。

何年くらい前だったでしょうか…、もう少しでマスターズで優勝できそうな時に負けてしまった松山選手が涙を流しました。
あの強気の彼の涙は、衝撃的なシーンでした。
今回の大会を前に、彼は、スポーツ選手としての方向性を変えたようです。

どちらかというと、それまでの彼は孤高の選手で、すべてを自力で考え練習し、せいぜい参考程度の専属コーチをつけるくらいだったようですが、今回は強力なチーム体制を組んだようです。

日本では、強いスポーツ選手には、有能な監督やコーチがおり、師弟関係が勝利を呼び込むということが多くありますね。
実は、世界のスポーツ界の個人競技のトップ選手たちは、テニスでも、スケートでも、水泳でも、もはや優れた師弟関係だけでは勝てなくなってきています。
テニスの大坂選手も、特定の数人によるチームが作られており、ひとりの選手にそのチカラが集結して試合結果にあらわれてきます。
近年、メジャーの野球選手にも、個人サポートのチームをつくる選手もいます。

その種目の技術指導、精神面でのサポート、身体や技術の科学分析、試合の戦術専門、栄養管理、疲労回復、用具管理、報道対応など、選手の周辺にあるさまざまな分野に、それぞれの専門家がつき、彼らが連動して動いているのです。

ゴルフも、いつの頃からか、テクニックと頭脳だけでは勝てなくなり、強力なパワーも必要になり、高度な分析と戦術、メンタル指導、コンディション管理のできるチーム体制が必要になってきました。

テレビなどでのスポーツ中継でも、昔よりは、科学分析やデータ分析の結果が紹介されるようになってきましたが、それでも実際のデータ解析内容の氷山の一角です。

米国や欧州のようなスポーツ文化先進国では、科学やデータ分析による戦術に基づいた方向だけではスポーツ自体の面白さが失われてしまう場合もあるため、選手の持続的な健康を考えながら、それでも人間どうしの肉体のぶつかり合い、精神的な戦いを上手にミックスさせる試行をさまざまに行い、ルール変更を行っていますね。

いわゆるゲームである「eスポーツ」も生まれ、次の次のオリンピックにはダンス要素の強い競技も登場します。
「スポーツ」の範囲や概念が、かなり拡大変化してきていますね。
各種目に、「グリーン・ジャケット」のような存在が生まれてくるのかもしれません。
テニスのウィンブルドン大会では、今も、選手が白色系の服を着る伝統が残っていますが、そのうち色の争奪戦でも起きてくるかもしれませんね。


◇グリーンスリーブス

さて、英国の「緑色」の音楽として、世界的に超有名な楽曲があります。
名曲「グリーンスリーブス」です。

題名を直訳すれば「緑色の袖(そで)」です。

この楽曲は、古くからのイギリス民謡で、作曲者や作詞者はわかっていません。
イングランドとスコットランドの境の地域のあたりから生まれたともいわれているようです。
英国女王「エリザベス1世」の治世時代(1558年 - 1603年)に広まった人気の楽曲だったようです。

* * *

英国の古い史料では、1580年のロンドン書籍出版業組合の記録の中に、その時代の流行歌として、「レイディ・グリーン・スリーヴスの新北方小曲(A New Northern Dittye of the Lady Greene Sleeves)」としてタイトルが残っているようです。

さらに、この楽曲は、古い文献の中で「レイディ・グリーン・スリーヴスの新宮廷風ソネット(A New Courtly Sonnet of the Lady Green Sleeves)」と表現されているそうです。
正確な歌詞やメロディはわかっていないようです。

* * *

この「グリーンスリーブス」とは、実は緑色の洋服の袖(そで)だけを指し示すものではありません。
「グリーンスリーブス」という言葉の別の意味は、コラムの最後に書きます。

この楽曲の歌詞の中の「グリーンスリーブス」とは、緑色の袖という意味だけではなく、特定のある女性のことを意味しています。
実は、どの人物のことを語っているのかは、わかっていません。
誰から誰に語られている歌詞なのかも、はっきりしません。

この楽曲の中で、「グリーンスリーブス」とは、ある特定の女性のことを指し示しているのです。
もしかしたら、その女性は、本当に緑色の服を好んで着ていたのかもしれません。
あるいは、緑色の服は着ていなかったのかもしれません。
楽曲「グリーンスリーブス」の、大きな謎です。
ただ、この言葉は、この楽曲にとって、たいへん重要なキーワードなのです。

グリーンスリーブスの歌詞和訳


◇歌に込められた想い

ひょっとしたら、当時の庶民はみな、その女性が誰のことか知っていたのかもしれません。
でも、それを公言したり、書き残すことは、死罪を意味していたのかもしれません。

当時、大活躍した劇作家シェイクスピアでさえ、明確には残していませんが、なんとなく思い起こさせる雰囲気をやっと残せたのかもしれません。
この楽曲は、シェイクスピアの劇場で演奏された可能性もあるといわれています。

彼の喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』(The Merry Wives of Windsor) 第2幕の第1場と、第5幕の第5場で、この歌のことが台詞として出てくるようです。
明確なかたちではなくても、後世の者たちに、その人物の存在感だけを残してくれたのかもしれません。

* * *

この女性は、歴史に残っているような有名な女性ではないのかもしれません。
あるいは、もしこれが、英国王ヘンリー8世の二番目の王妃で、後に処刑されたアン・ブーリンのことであったなら、なおさら禁句の内容かもしれません。

アン・ブーリンの娘でもある「エリザベス1世」は、生母の生きた証を、それとなく残すことを考えたのかどうか…まったくわかりません。
「エリザベス1世」という女王の存在がなかったら、ひょっとしたら歴史の中に消えていった楽曲だったのかもしれませんね。
またまた大きな謎です。

日本史の中でも、このようなギリギリの内容は、短歌や俳句、伝説や民話に変えて残ったり、今の民謡に残ったりします。
日本には「ほめ殺し」という表現がありますが、江戸時代の高札では、そのような逆表現がされたりもしました。

いずれにしても、その女性のことは、この歌詞を語る人物にも、庶民たちにも、忘れられない存在だったのは間違いないと感じます。
庶民は、酒場で、この楽曲を歌い、奏で、ある女性の運命に想いを寄せたのかもしれませんね。
同じような感情を抱く男性庶民も少なくなかったのかもしれません。


◇ヘンリー8世

女王「エリザベス1世(1533~1603)」の父は、あのヘンリー8世(1491~1547)、そして生母は、二番目の王妃で、後に処刑されたアン・ブーリンです。

ヘンリー8世は、男子の王位継承者を切望していたため、6人の妻を持ちます。
順番に、
キャサリン・オブ・アラゴン、
アン・ブーリン、
ジェーン・シーモア、
アン・オブ・クレーヴズ、
キャサリン・ハワード、
キャサリン・パーです。
今現代でも、引き継がれている貴族の女性名が並んでいますね。

* * *

ヘンリー8世には、多くの妻たちとの間に、結局、後継者の男子が長生きできなかったことが、この時代の複雑さと多くの悲劇を生みました。

ヘンリー8世は、当時のヨーロッパの激動期を、その高い教養とカリスマ性で一気に突き進んだような印象を持ちます。
芸術も好んだようで、作詞や作曲も行ったといわれていますが、正確にはわかりません。
まさか「グリーンスリーブス」ほどの曲を作れたとも思えませんが…。

そして、好色で利己的、終盤はかなり冷酷な一面もあったようです。
日本の同時期の豊臣秀吉をイメージさせますね。
なかなか男子の後継者が生まれないことも似ています。

いつの時代も、どこの国でも、王の男子後継者問題は難儀なものです。
この時代にも、たいへんな「ヘンリー様」がおられました。

* * *

「エリザベス1世」が女王になるいきさつは、ここでは書きませんが、この時代は、日本でいえば豊臣秀吉が天下を統一していく時期で、淀君が最高権力者に登っていく時代です。
日本でも、多くの女性を巻き込んだ戦いがあり、悲劇が起こり、争乱の時代は収れんに向かいます。

そんな「エリザベス1世」の時代に、庶民の間で人気のあった楽曲が「グリーンスリーブス」だったようです。


◇ヘンリー八世と6人の妻

その昔、70年代に、プログレッシブ・ロック界の名バンド「イエス」のキーボード奏者でもあったリック・ウェイクマンさんのソロのヒット名盤に「ヘンリー八世と6人の妻」という作品がありました。

彼は、もともとクラシック畑の音楽家でしたが、ポピュラー音楽界に転身しました。
今でも、この曲の演奏を含め、活発に音楽活動をされています。

ヘンリー8世の6人の妻をイメージした6曲の楽曲の入った「ヘンリー八世と6人の妻」(1973)です。
クラシック音楽好きの方にも、受け入れられそうな楽曲だと思いまず。

 

その中から…

♪アラゴンのキャサリン

 

♪キャサリン・ハワード

 

下記のユーチューブ動画ページから6曲が連続して再生されます。
♪ヘンリー八世と6人の妻

 


◇ビートルズ作品の中の「グリーンスリーブス」

ビートルズの名曲に「All You Need Is Love (愛こそはすべて)」があります。
ジョン・レノンさん色の非常に強い楽曲です。

この曲の冒頭は、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」で始まります。
エンディングには、J.S.バッハの「2声のインヴェンション8番(BWV779)」、グレン・ミラー楽団の「イン・ザ・ムード」、そして、このイギリス民謡「グリーンスリーブス」、ビートルズ自身の「シー・ラヴズ・ユー」が盛り込まれています。
「イエスタデイ」という言葉も聴こえます。

* * *

J.S.バッハはドイツ人、グレン・ミラーはドイツ系アメリカ人でアメリカを代表するミュージシャン、「2声のインヴェンション8番(BWV779)」は後にイタリア協奏曲へと進化したとも…。
フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」は、ロシアの一時期の国歌でもありました。
ようするに、この楽曲には、英国、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、ロシアが盛り込んであるということですね。

「All You Need Is Love(愛こそはすべて)」の歌詞は短いですが、非常に印象的な言い回しの表現がされています。
欧州と北アメリカ大陸の軍事主要国をイメージさせるメロディも登場します。
そして、イエスタディ…シー・ラヴズ・ユー。
こうした謎めいた凝った手法を、ジョン・レノンさんは大好きでしたね。

 

この曲は、もともと世界各国に向けた国際衛星中継放送を意識したものでしたが、彼は、宣伝コマーシャルや、伝えること、聴いてもらえる手法などのツボをしっかり心得ていましたね。

あなた(皆)が求めているもの…、必要なもの…、それは…愛。
あなた方が成し遂げることで、できないことは何もないよね…。
そんな国家間の平和を祈る名曲です。

♪オール・ユー・ニード・イズ・ラブ


前述のヘンリー8世は、それまでになかった大軍艦を建造し、大海軍を整備し、フランスに何度か攻め込みました。
今現代でも、英国、フランス、ドイツ、イタリア、ロシアは、欧州の覇権争いを行っていますが、当時はより激烈でした。

ビートルズ研究者なら知っているのかもしれませんが、私は以前から、英国をイメージさせるのに、どうして「グリーンスリーブス」を使ったのか、疑問に感じています。
世界の誰もが知る英国の歌ということもあったのかもしれませんが、それだけでしょうか…?

もし、ヘンリー8世とアン・ブーリンのイメージもだぶらせてあったのなら、何となく納得できるような気もしないではありません。
「シー・ラヴズ・ユー」の「シー」と「ユー」は…。
絶大な軍事力を持ち、強権的なカリスマ王のヘンリー8世のイメージを、ここに持ってきたのかもしれません。
ジョン・レノンさんは、「グリーンスリーブスの謎」を、あえて、またひとつ増やしたのかもしれませんね。

今現在、英国王室の女性たちの緑色の衣装を見るたび、私はこの楽曲を思い出します。
また、この楽曲を耳にするたび、英国王室を思い出します。

この楽曲って…?

もちろん両者です。


◇グリーンスリーブスによる幻想曲

近代の作曲家、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズは、シェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」をオペラ化した時に書いた間奏曲に、この英国民謡を盛り込んだそうです。

後に、ラルフ・グリーヴスという作曲家が、前述の編曲された民謡「グリーンスリーブス」と、別の民謡「美しきジョーン」を、ひとつの曲として抒情的に編曲し、「グリーンスリーヴスによる幻想曲」が1934年に誕生します。

音楽だけ…
♪グリーンスリーブスによる幻想曲

 

歌唱付き…
♪グリーンスリーブスによる幻想曲

 

この楽曲は、ハープ奏者が活躍する曲でもありますね。
歌とハープ付き…
♪グリーンスリーブスによる幻想曲

 


◇ブラックモアズ・ナイトの「グリーンスリーブス」

前回コラム「音路(26)より暗い夜…でも希望と栄光、そして威風堂々」では、英国出身で、70年代、80年代を代表するハードロックバンドの「ディープ・パープル」と「レインボー」の中心人物として、ロック音楽界をけん引したギタリストのリッチー・ブラックモアさんが夫婦で活動している「ブラックモアズ・ナイト」の楽曲のことを書きました。

ここで、彼らの「グリーンスリーブス」演奏をご紹介します。
この楽曲でも、中世の雰囲気と、ブラックモア夫妻の男女愛を届けてくれています。

♪グリーンスリーブス

 


◇「グリーンスリーブス」のもうひとつの意味

今回のコラムは、さまざまな「緑色」について書いてみました。

隣国の中国では、緑色の帽子と、白色の帽子は、特別な意味があるそうで、その使用には気をつけたほうがよいと聞きます。
緑色の帽子は「不倫」を意味するようです。

* * *

実は、かつて、英国には「グリーンスリーブス(緑色の袖)」という言葉には「不倫」という意味あいが込められていたという話しがあります。
緑色の「布地」には、性的なものをイメージさせるものがあったようです。

昭和時代の日本では、「ピンク」や「桃色」という色を示す言葉に、同じような意味あいがありましたね。

中世の頃、不倫の密会の場所は、郊外にある森林や草原…、ようするに衣服に緑色が付着するのです。
衣服が緑色に汚れていたら…それは…。

「グリーンスリーブス(緑色のそで)」という言葉の裏には、実は、このような意味も込められていたようです。

* * *

今現代でも、職業や仕事によっては、特定の色が衣服や手に付着し、なかなかとれないことも多くあります。
農家にとって、「茶色(土色)」に染まるのは誇らしいことですね。

東洋では、漢字の「青(あお)」を使う熟語は、特別な意味を持ちます。
青春、青天…、「青」は若さであったり、希望であったりします。

「緑色」がかつて、こんな意味合いに使用されたことは、「緑のおばさん」たちになりかわり…「遺憾に存じます」。
今の通学路の学童擁護員の方々は、別の呼び方かもしれません。

* * *

英国王室の女性の方々が、緑色の衣装をまとう時…、ひょっとしてそれは、何か重要な意思表示を行っているのかもしれませんね。

…うちの亭主が!
…を知っているよ!
…覚悟しろ!

男性たちが、「グリーン・ジャケット」とか言って浮かれている場合ではありませんね。
英国の歴史をよく知る女性たちの服の袖(そで)の色…、男性諸氏は注意しましょう。

家庭内で突然、中世の英国王室の話しをしたり、この楽曲「グリーンスリーブス」が流されたら、それはまさに「最後通告」…?
そうなったら男性は、庭木の手入れにでもしに、庭に逃げ出しますか…。

ほら、緑色が服についてるよ…。

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コラム「音路(28)ホームは人がつくるもの」につづく