レッド・ツェッペリン「カシミール」。ラヴェル「ボレロ」。NHK「英雄たちの選択」。音楽のオンライン・レッスン。カシミール紛争と世界の火薬庫。ヒンデンブルク号事故。音楽動画。ジミー・ペイジさん。ロバート・プラントさん。ジョン・ボーナムさん。ジョン・ポール・ジョーンズさん。デイヴィッド・ギャレットさん。

 

にほんブログ村 音楽ブログ 洋楽へ 

 

各コラムで紹介した曲目リストは、「目次」で…

  

あの曲や動画はどこ… 音楽家別作品

 

*今後の予定曲

 

音路(16) オンラインでツェッペリン

【前編】 英雄たちの選択

 


◇レッド・ツェッペリン

「音路シリーズ」は今回で16回目となりました。
いよいよロック音楽のあのバンド…、レッド・ツェッペリンの登場です。

ひょっとしたら、世界的には、ビートルズよりも、このロックバンドのレッド・ツェッペリンのほうが、現在の今でも老若男女、信奉者は多い気もします。
今のビジネス界のベテラン経営陣の中にも、その信奉者が相当にいますね。

私が学生時代でも、おそらくクラスの4分の1近くは、ツェッペリンを聴いていたようにも感じます。
ビートルズよりも多かった印象があります。

ツェッペリンファンのほうが、自己アピールが強かったからかも…、たいてい名前入りやマーク入りのTシャツやキーホルダー、シールなどを持っていましたね。

「オレはツェッペリン派だ!」の大主張でしたね。

今でも年に1回か2回、街なかで例のあのTシャツを着る中年男性を見かけることがあります。


今回とりあげる楽曲は、そのレッド・ツェッペリンの曲「カシミール」ですが、今現代でも、この曲をカバーするミュージシャンやオーケストラは非常に多く、おそらくはクラシック音楽界の人々のほうが、ロック界の人よりも演奏や楽曲カバーが多い気がします。

どうしてなのか…、少しずつ書いていきたいと思います。
ここから、ミュージシャン個人名の敬称は、便宜上、略させていただきます。


◇ようこそ、オンライン音楽レッスンへ

さて、今のコロナ禍で、楽器や歌などの音楽教室を経営されている方々は、否応(いやおう)なしに、オンラインレッスンをすることになったという方も多いと思います。

今回のコラムは、この楽曲「カシミール」に関する、ネット上にあるオンラインレッスンを、歌唱も含め楽器ごとにご紹介します。
楽器ごとに存在するくらい、この曲の演奏は魅力があります。

* * *

今回のコラムテーマは、前編と後編の2回に分けて連載しますが、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム、バイオリン、チェロなど、それぞれの楽器のオンラインレッスンを受講するような気持ちで、どうぞご覧になってみてください。
音楽教室の経営者の方々にも、何か参考になる内容もあるかもしれません。

楽器演奏をしたことがない方でも、 なるほど楽器はこうやって練習するのかと実感していただけると思います。
そして、きっと演奏してみたくなると思います。

「カシミール」の一曲が、自身で演奏できるようになっただけでも、人生に何か楽しみがひとつ加わるかもしれませんよ。
特に、楽器演奏をしたことがない「歴史ファン」の方…、この楽曲だけでも演奏できたら、一生満足できると思います。

ここでひとつだけ…、楽器練習は、オンラインだけでもできるかもしれませんが、実際に音楽講師のミュージシャンと対面し、楽器演奏を一緒に演ることで、「ひと皮むける」ものです。
対面でないとわからない、自身の欠点を指摘してくれる場合も多くあります。
オンラインレッスンと、対面授業は、それぞれメリットがあると思いますので、その点はご自身で考えてみてください。
音楽は、ひとりで演奏するのもいいですが、仲間と一緒に行うという別の醍醐味(だいごみ)もありますね。


◇クラシック音楽界でも認められる

さて、この楽曲「カシミール」を、ロック音楽の範ちゅうに入れたほうがいいのか、クラシック音楽界の範ちゅうに、すでに入れたほうがいいのか、私は悩んでしまいます。
おそらく数十年後には、クラシック音楽の中で、さらに加筆・編曲され、作曲家ラヴェルのバレエ音楽作品「ボレロ」や、パガニーニの楽曲に似た存在になるような気もしています。

ラヴェルの「ボレロ」は、 クラシック音楽の中でも、何か不思議な感覚、違和感のようなものを感じてしまいますが、その作品の迫力はすさまじいものですね。
一般の方でも、クラシック音楽はそれほど聴かないけれど、この「ボレロ」だけは好きという方が少なくありません。

この「ボレロ」も、「カシミール」も、主題の繰り返し、二つの主旋律の交錯など、かなり変わった作り方がされています。
それに、両曲とも、異国情緒たっぷり…。

下記はローリン・マゼール指揮のフランス国立管弦楽団の演奏の「ボレロ」です。

♪ラヴェル「ボレロ」

 

* * *

楽曲「カシミール」は、ロックやポップスなどのような、いかにも売れそうな音楽様式とは少し違ったかたちで作られています。
歌唱部分はあっても、イントロ、主要部分、間奏などの区分がはっきりしておらず、むしろ70年代のプログレッシブ・ロックや、ジャズ、クラシック音楽に近いかたちにも感じます。
異様な殺気立つ雰囲気の迫力も、ヒットする音楽などとは、かなり違いを感じます。

それだけに、クラシック音楽分野のミュージシャンの心を揺さぶったとも感じます。
レッド・ツェッペリンは、こうした雰囲気を持った楽曲が非常に多く、クラシック界の人たちから見ても、このバンドは、他のロック界のミュージシャンとは違うと認識されたのかもしれません。

クラシック音楽のような演奏スタイルの場合は、ボーカル歌唱はなく、その部分をバイオリンやチェロなど、他の楽器が演奏を行います。
ようするに、インストルメンタル(歌詞や歌唱のない演奏のみの音楽)での演奏です。
おいおい、さまざまな かたちでの「カシミール」演奏をご紹介していきます。


◇音楽オタク集団

ロックファンたちから見ても、ロック音楽界の中で、ツェッペリンだけは、他と何かが違うと理解している人が多いと思います。
プレスリーやビートルズらとは別の世界にいる、ポピュラー音楽界を引っ張った主導的存在が、このバンドでしたね、

1970年代は、それまでの他の音楽分野をある意味で蹴散らし、ロック音楽が「時代の人気音楽」の主流に向かう時代でした。
音楽の人気バンドでは、エレキギター、エレキベース、ピアノやキーボード、ドラム、ボーカルが、基本構成になっていきますね。

70~80年代、音楽は、より多様化していきますが、世界の人気音楽のヒットチャート上位は、ロック音楽のミュージシャンで多くを占めるようになっていきます。
ヒップホップやダンスミュージックなどがヒットチャート上位になる近年からは、想像もできないかもしれませんね。

そのうち、また新しいスタイルの音楽が生まれて、世の中を席捲していくのでしょう…。

* * *

このレッド・ツェッペリンは、ジミー・ペイジという特異な才能を持つミュージシャンによるところが大きいのですが、ジミー・ペイジは自身の作る音楽を実現させるため、自身のギター演奏を、しっかり支えることのできるミュージシャンたち3人とともに、このバンドを作りました。
ここに、奇跡の4人がそろいます。

単なる仲良しグループが、音楽を楽しく演ろうというバンドではありませんでした。
ある意味、各楽器と歌唱のプロ職人が、4人そろったといえます。
それも、上手なだけの、ただの職人たちではありません。
「何これ!」という芸術職人たちでした。

スーパースターになるロックバンドの中には、必ず最低ひとりは、とんでもない「音楽オタク」がいます。
彼らは、とてつもなく研究熱心で、実験的な音楽的試みを繰り返します。
そのためなら、自身の身体のことや、ビジネスのことなど考えない者もいます。
レッド・ツェッペリンのメンバー4人は、全員がそのタイプだったような気もします。

* * *

ロック音楽とクラシック音楽を融合させたのが、「プログレッシブ・ロック」とよく評されることがありますが、この分野の楽曲は、まさに芸術的な建築物を組み立てるような手法で、音楽をまさに理論的に構築して作っていきます。
理論や感覚、思想や芸術性などが上手に混在し、ひとつの世界観を構築していきます。

レッド・ツェッペリンの音楽も、そうしたタイプの音楽で、それらの要素が非常につまっているのが、この「カシミール」という楽曲です。

ヒット曲でもないのに、どうして、世界中にこの曲を愛する人がこれほどいるのか…、不思議なようであり、当然のようにも感じます。


◇英雄たちの選択

日本では、ZEPファン(一般的に、この「ZEP」の英字3文字で世界中で通用します)はもちろんですが、古い洋楽ロック音楽ファンで、この「カシミール」を知らない人は、ほぼいないと思いますが、近年の日本で、急激に音楽ファンではない方々のあいだにも、この曲が認知されてきました。

あのテレビ番組の影響です。
歴史ファン、戦国武将ファン、城ファンが大好きなあの番組…NHKテレビ番組「英雄たちの選択」です。

この番組は、実験的に番組を作ってみたら大成功!
レギュラー化されました。
この番組は、磯田道史(いそだ みちふみ)さんや、千田嘉博(せんだ よしひろ)さん、中野信子(なかの のぶこ)さん、呉座勇一(ござ ゆういち)さんなどの「人気スター学者」を誕生させましたね。

私は個人的に、この番組内容の素晴らしさもさることながら、この番組のオープニング曲の選択が、相当に効いた気がします。
まさに、番組タイトルと同様に、NHKのベスト選択!
それが、この楽曲「カシミール」なのです。

* * *

初めて、この番組のテーマ曲として耳にしたときは、「いったいどうして…この曲?」と驚きましたが、そのインパクトは絶大でした。
先ほど、この曲を「異様な殺気立つ雰囲気の迫力」と表現しましたが、まさにこの番組の見せ場は、「絶対的に追い込まれた時の人間の究極の選択」の場面なのです。

その選択の瞬間は、生死をかけた息詰まるような緊迫の瞬間です。
この鬼気迫る雰囲気の楽曲「カシミール」はぴったりですね。

おそらく、制作スタッフの中に、ZEPファンがいたのでしょう。
「あの飛行船のように、堕ちてたまるか…」。
この番組の成功は、ここで決まったのかもしれません。

* * *

この大ヒットテレビ番組により、この楽曲「カシミール」が、テレビの前の歴史ファンの多くの方々が知ることになりました。

もはや、日本も世界各国の「ZEPのカシミール」認識国の仲間入りをしたのかもしれません。
これで、「日本人は、カシミールという曲を知らないのか」とは言われなくなると思います。

まさに、東京・渋谷の英雄たちの選択は、素晴らしいものでしたね。

* * *

この番組で使用されている「カシミール」は、レッド・ツェッペリンの演奏ではなく、世界的人気バイオリニストである、デイヴィッド・ギャレットの演奏です。
本家のレッド・ツェッペリとは、かなり異なる雰囲気で、まさにクラシック音楽風の優雅な仕上がりです。

♪カシミール(デイヴィッド・ギャレット)【公式】

 

デイヴィッド・ギャレットさんのライブ演奏です。

♪カシミール

 


◇ ZEP

前述しました「ZEP」は、「ゼップ」と読みます。
日本では「レッド・ツェッペリン」とカナ表記・音読みされますが、これはドイツ語発音に近いもので、実際に英語圏では「レッド・ゼッペェリン」のほうが近いかもしれません。
だから一般的には、「ゼッペェリン」と「ツェッペリン」が日本では共存しています。

このバンドは英国出身ですので本来は英語発音の「ゼッペェリン」ですが、でも「Zeppelin」は本来ドイツ語の「ツェッペリン」…、第三国の日本は一応「三国同盟」の過去もありますし、ドイツ語を優先…?

英国を「イギリス」と言う国も日本くらいですし、どこまで日本人は義理がたい…。

英国人に「イギリス」と言っても、まず通じませんね。
日本における江戸時代からの「イギリス」名の歴史話しは確かに面白く、定着したものを なかなか変えたがらない日本ですが、そろそろ考えた方がいい気もしますね…。

「ツェッペリン(ゼッペェリン)」の呼称は、どちらがいいか微妙です…。


◇「ツェッペリン」と「ヒンデンブルク号事故」

1920年代、ドイツは、航空機時代の前の空の乗り物「飛行船」を開発し、ヨーロッパとアメリカのあいだを行き来しました。
さすが技術力のドイツです。
日本の東京にもやって来ました。
今の日本の「新幹線の成功」を思い起こさせますね。

多くの飛行船が作られた中、ドイツ人のツェッペリン伯爵の会社が開発したものが非常に性能がよく、「ツェッペリン」という言葉は飛行船そのものを意味するようになります。
まさに、ツェッペリン伯爵の強い執念がなかったら、この飛行船は誕生していなかったと思います。
その後1930年代には、ヒトラーのナチスドイツが、この飛行船を独占します。

* * *

この飛行船の全体は、今の航空機ジャンボジェットの14~15機分の大きさです。
客室部分は、小さなスペースですが、それ以外が、すべて水素ガスの気球と燃料です。
巨大なガスボンベにつかまって、空を飛んでいるようなものですね。
いくら技術力があるとはいえ、相当に危険性をはらんだ乗り物です。

戦時中には、戦闘機の格好の標的にもなり、ある大事故をきっかけに、その開発と運用が終わります。

その大事故こそが、1937年5月、アメリカでの「ヒンデンブルク号」の大爆発事故です。
これは着陸時での大惨事で、かなりの犠牲者を出します。
乗員乗客97名中、35名が死亡し、地上作業員1名も死亡しました。
原因は、静電気とも、陰謀ともいわれており、よくわかりません。

ちょうど旋回から着陸時の様子を、映像撮影しており、この事故の状況を映像で知ることができますが、それは恐ろしい光景です。
男性アナウンサーが絶叫、泣きながら中継していますね。
ネット上に、その映像がたくさんありますので、いろいろな角度から見ることができます。
映画やドラマにもなりましたね。

ここでは、その実映像ではなく、2011年の映画「ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀」のハイライトシーンを下記にご紹介します。

映画「ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀」

 

この衝撃的事故は、すぐに世界中に伝えれられました。
1937年は昭和12年です。
青函連絡船「洞爺丸(とうやまる)」の海難事故は、1954年(昭和29年)ですので、それよりも前です。

世界の歴史には、さまざまな乗り物の事故の記憶があります。
このヒンデンブルク号の事故、タイタニック号の事故、スペースシャトル「チャレンジャー号」の事故、日本でも御巣鷹山への日航機墜落事故、福知山線脱線事故、信楽高原鉄道事故などをはじめ、多くの交通関連の大惨事がありました。
それらの惨事の光景を映像で見た時の衝撃は、生涯 忘れることはできません。

「ツェッペリン」という言葉を耳にしただけで、ロックバンドと、このヒンデンブルク号の大惨事の映像を思い出すという方も少なくないと思います。


◇「レッド・ツェッペリン」の命名

さて、このバンド「レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)」の中心人物のギタリストのジミー・ペイジは、このバンドの前に「ヤードバーズ」というバンドに在籍していました。

このヤードバーズも、60年代の英国の人気バンドで、なんと2代目リードギタリストは、エリック・クラプトンです。
3代目がジェフ・ベックで、4代目がジミー・ペイジです。
この三人は、70~80年代にロック界の「三大ギタリスト」と呼ばれた人たちです。
三人とも、ヤードバーズで実績を積み、その後に、それぞれの音楽世界を確立させていきました。

三人とも、あまりにも世界観の異なる強烈なロックミュージシャンですね。
みな、個性的なギター職人であっただけでなく、強烈なアーティストたちでした。

* * *

当時ヤードバーズのジミー・ペイジや、ジョン・ポール・ジョーンズ(後にツェッペリンのメンバー)、数々の有名バンドのサポート演奏をしていたニッキー・ホプキンス、ザ・フーのキース・ムーンらが、ジェフ・ベックの新アルバムのサポートで集まった際の話しです。

次の新たな音楽活動を模索していたジミー・ペイジが、さまざまな構想を話していた際に、誰かが「そんなバンドは失敗する」という話しをしたようです。
その会話の中で、「go down like a lead balloon」という一般的な英語表現があったそうです。
直訳すると、「鉛の風船のように堕ちていく」です。
ようするに「明らかに失敗する」という英語表現です。

この話しの真相は、はっきりとはわかりません。
集まった実力あるミュージシャンたちが、もし自身たちがいなかったら、それぞれのバンドや音楽活動は存続できないという主旨の話しをしたという説もあります。
その中で、前述の失敗の英語表現があったともいわれています。
こんな微妙な内容ですから、真相は闇の中です。

真偽はどうでもいいですが、問題はこの会話の中で、「lead balloon(リード・バルーン)」という言葉があり、それが2年後に「Led Zeppelin」という名称のもとになるのです。

ジミー・ペイジは、この時の「lead balloon」という言葉を、ずっと忘れていなかったのかもしれません。

* * *

「lead balloon(リード・バルーン)」とは、「鉛の風船(気球)」という意味です。
空を飛ぶはずのない気球です。

日本で言えば「絵にかいた餅」、「砂上の楼閣」、「机上の空論」、「畳の上の水練」のようなものに近い表現かもしれません。
でも、あのオリンピック選手は子供の頃に、畳の上で水泳の練習をしていたようですね。

ジミー・ペイジと彼のマネージャーは、飛行船(気球)のヒンデンブルク号の大事故にかけて、この「lead balloon(リード・バルーン)」の「lead」を「Led(レッド)」に、「balloon(バルーン / 気球の意味)」をあの飛行船の意味の用語「ツェッペリン」に変え、「レッド・ツェッペリン」という名称が生まれます。

「lead」は鉛の意味だけでなく、日本的な言葉の使い方で言えば「リードする」、「リーダーとして先頭に立つ」という意味もあります。
この「lead」を、過去形表現にすると「led(レッド)」です。
これは、鉛の意味を打ち消す狙いもあったと思います。

ようするに「レッド・ツェッペリン」とは、「リードした飛行船」、「先頭に立って引っ張った飛行船」というような意味です。
ヒンデンブルク号とは異なる「堕ちない飛行船」という意味だとも思います。

このバンドが、もし「リード・バルーン」名だったら、ここまで売れたでしょうか…。

その名のとおり、このバンドは、ロック音楽の先頭に立って引っ張りましたね。

後に、あのツェッペリン伯爵の名家と、その名称の使用について争いますが、そこは「金持ちケンカせず」だったようです。
この問題で、両者とも、堕ちるはずなどありませんね。
むしろ、このバンド名のおかげで、名家の名前が、事故から好転し、世界中に刻れました。


◇衝撃の船出

バンド名が、堕ちる「鉛」ではなく、過去形の表現の「リードした」と、飛行船の意味となり、ファースト・アルバムのジャケットデザインは、ヒンデンブルク号の大惨事の爆発の瞬間の写真となります。

1969年のファースト・アルバムは、大惨事の事故の衝撃の時と同様に、世界中にとてつもない衝撃を与えました。
1970年に消滅したビートルズにかわって、ポピュラー音楽界のトップにたったのが、レッド・ツェッペリンでした。
本格的なハードロックの時代がやってきました。

まさに、偉大な飛行船の衝撃の「船出(ふなで)」です。

最初の頃に反発していた他のロックスタイルのミュージシャンたちも、その後の彼らの音楽性の高さを認めざるを得なくなり、クラシック音楽界の多くのミュージシャンたちも、その音楽世界のとりこになっていきます。

今回とりあげた楽曲「カシミール」は、1975年の彼らの6枚目のアルバム「フィジカル・グラフィティ」の中におさめられた一曲です。
ボーカルのロバート・プラントいわく、「この曲は、私たちレッド・ツェッペリンの誇りだ」と言わしめた作品です。


◇緊迫のカシミール

今回のコラムでは、特に歌詞については書きませんが、ロバート・プラントさんがこの曲の歌詞を書いた際は、実はアフリカのサハラ砂漠を旅していた時期で、この曲の荒涼としたイメージの大元は、インドのカシミールの風景ではなく、アフリカのサハラ砂漠の風景です。

これを、インドのカシミール地域に結びつけたあたりが、レッド・ツェッペリンのすごさですね。

* * *

「カシミール」とは、あの高級織物「カシミア」の故郷の「カシミール」地域のことです。
日本の商品表示では、「カシミヤ」という表示名で統一されていますね。

私は、「カシミール」という文字を見ただけで、何か背筋にゾクゾクと走るものがあります。
ここで、文字で書くだけでも、少し怖さを感じるような名称です。

でも、少しだけ書きます。

* * *

世界中の人たちが、「パレスチナ」という言葉を見聞きしただけでイメージする恐ろしさや根深さというものがありますね。
まさに、今の「世界の火薬庫」という地域紛争の意味です。

そこには、領土争い、宗教争い、覇権争い、古くからの怨念などが絡んでいますね。
世界の有力国が絡み、ちょっとやそっとで解決できる問題ではありません。

かつて、ヨーロッパとトルコに挟まれたバルカン地域も「世界の火薬庫」でした。
イスラム教勢力とキリスト教勢力の境にあり、ロシアのすぐ近くです。
激しい戦乱の地域で、今は落ち着いていますが、いろいろな問題を今も抱えています。

* * *

インドの北方にある「カシミール」地域は、今は、三つの勢力が分かれて支配しています。
まずはインド、そしてパキスタン、そして中国です。
核保有国の三か国が、その覇権を争う地域です。

お隣には、中国の巨大なチベット自治区、そしてあのアフガニスタンがあります。
この地域には、ヒンズー教、イスラム教、チベット仏教が混在しています。
この状況を聞いただけで、背筋に冷たいものを感じてしまいますね。

1971年に、インドとパキスタンによる「第三次・印パ戦争」が起こり、パキスタンが敗北し、インドの東側にあった「東パキスタン」は「バングラデシュ」という独立国となります。

1974年にインドは核保有国となり、不利になったパキスタンに中国が全面支援し、パキスタンは1998年に核保有国になりました。
カシミールは、これら有力な三か国の思惑が交錯する地域となります。
そこには、根深い宗教争いも絡んでいて、ちょっとやそっとで解決できる話しではありません。
日本が、この問題に、どうか巻き込まれませんようにと、さすがに思ってしまいます。

カシミールの地域は、地震続発のあの荒涼とした山岳風景がそこにあります。
日本人が「カシミヤ」のマフラーで喜んでいる場合ではありませんね。
間違いなく、カシミールも「世界の火薬庫」です。

* * *

レッド・ツェッペリンの楽曲「カシミール」を聴くたびに、どうしても、この問題が頭をよぎります。
もしこの楽曲が、「サハラ」とかのタイトルであったなら、これほどまでの緊張感をこの曲に抱かなかったかもしれません。

さらに、この楽曲には、インド風の雰囲気がたっぷり盛り込まれています。
後で、インドの古くからの楽器のことも書きますが、このようなインド風の音楽サウンドを、好奇心いっぱい、研究熱心の「音楽オタク」のジミー・ペイジが気に入らないはずはないと感じます。

この曲の中に、インド風のサウンドや、カシミール問題の連想を持ち込んだことが、この曲が特別な存在になる要因になったことは確かだろうと感じます。


◇ドラマー、ジョン・ボーナムの存在

先ほど、この楽曲は、ロックやポップスなどのような、いかにも売れそうな音楽様式とは少し違うかたちで作られていると書きました。
歌唱部分はあっても、イントロ、主要部分、間奏などの区分がはっきりしておらず、むしろ70年代のプログレッシブ・ロックや、ジャズ、クラシック音楽に近いかたちにも感じます。
異様な殺気立つ雰囲気の迫力も、ヒットする音楽などとは、かなり違いを感じます。
だいたい、「カシミール」などという、微妙な文言のタイトルを、ヒットさせたい曲にはつけません。

この曲の持つ、その複雑な音楽構造については、ここでは書きませんが、後で、ドラムのお話しの時に、ギターとドラムの関係性を解説した動画をご紹介します。
作曲術にご興味のある方は、面白く感じていただけると思います。

ただ、このギターとドラムの関係性が、レッド・ツェッペリンの音楽の中核を為している内容であるのは確かだと思います。

* * *

このバンドのドラマーは、ジョン・ボーナムですが、1980年に不慮の事故で亡くなります。

レッド・ツェッペリンは、このドラマーを失ったことで、もう二度と新しいツェッペリン・サウンドを生み出せなくなり、解散という判断を下します。
ジミー・ペイジのギターにぴったりはまる、これほどの才能を持ったドラマーが、他に見つけられなかったともいえます。
後でまた書きます。


◇ZEPの「カシミール」

下記に、レッド・ツェッペリンの二つの「カシミール」演奏をご紹介します。

まずは、1979年のライブ映像です。
ドラム演奏は、前述のジョン・ボーナムです。

この曲が発表されてから3年後の演奏になります。
まさに、4人のミュージシャンが息を合わせて演奏しているのではなく、4人の芸術家が、何かを戦わせ合っているような この迫力は、このバンドならではのように感じます。

ちなみに、ジミー・ペイジは35歳、ロバート・プラントは31歳の頃です。

♪カシミール演奏(1979年)【公式】

 

* * *

次に、2007年の一時的な復活ライブ映像です。
ジミー・ペイジは63歳、ロバート・プラントは59歳の頃です。

この時にドラマーのジョン・ボーナムはすでに亡くなっており、このライブでドラムを演奏するのは、ジョン・ボーナムの息子の、ジェイソン・ボーナムです。
ドラマーが変わると、ここまで音楽が変わるのかと感じます。

古くからのZEPファンからしたら、ジミー・ペイジが、ロバート・プラントが、ジョン・ポール・ジョーンズがそこにいても、これはあの時のツェッペリンではない気がしてしまいます。
楽器演奏は、テクニックだけではないということが、よくわかります。

とはいえ、この年齢で、これだけ復活演奏してくれたら、もう十分に満足です。
30年以上経過した後でも、演奏の迫力と緊迫感は失われていません。

天国のジョン・ボーナムも、息子のドラム演奏には満足だったかもしれませんね。

♪カシミール演奏(2007年)【公式】

 


◇ドラムでカシミール

さて、いよいよ、この「カシミール」の「オンライン音楽レッスン」に入ります。

ネット上には、さまざまな楽器演奏レッスン動画がありますが、その中のほんの一部を紹介します。
英語がわからなくとも、何を伝えているのか、おそらく想像できると思います。
それが音楽のチカラ…。

まずは、先ほどから書いています、ドラム演奏からです。

下記は、このバンドのギターとドラムの関係性を解説した動画です。
「カシミール」の解説は、5分経過したあたりからです。
♪カシミール(ドラム解説)

 

ドラムのパーツごとに表記されているレッスン動画です。
♪カシミール(ドラム・レッスン)

 

下記は、ジョン・ボーナムの「フット・テクニック解説動画」です。
♪フット・テクニック

 

下記はドラム音だけの動画です。
楽器演奏をしたことがない方、ドラム演奏をしたことがない方でも、どうぞ「おはし」を2本、手に持って、この動画を見てください。
ドラマ―になった気分を味わえますよ。
叩くパーツが動くので、よく見てください。
♪カシミール(ドラムのみ)

 

* * *
 
ここで、ドラマーのジョン・ボーナムのすごさを感じる演奏を、ひとつだけ…
下記の演奏のドラムソロは、単なるソロ演奏披露ではなく、もはやドラム音だけで作られた楽曲です。
ドラムソロで、ここまで魅了されるとは…。
やはり、ジミー・ペイジが、こんなドラマーを放っておくはずがありませんね。
 

 


◇ボーカルでカシミール

次は、ボーカルです。
70~80年代のロック分野の多くのボーカリストたちは、レッド・ツェッペリンのボーカルのロバート・プラントの歌唱をよく練習していました。
歌唱法や発声などをマネていましたね。
今も昔も、モノマネから入るのは基本ですね。

♪カシミール(ボーカル)

 

♪ロバート・プラント風 歌唱レッスン

 

♪カシミール(歌詞と和訳)

 


◇エレキベースでカシミール

エレキベースですが、楽器演奏経験があれば、この曲はすぐに弾けそうな気もします。
お父さん方も、ベースを買ってきて、その日のうちに結構満足感を得られるかも…。

♪カシミール(ベースタブと楽譜、かすかな音で主音)

 


◇弦楽器類でカシミール

「バイオリン」や「チェロ」、「コントラバス(ダブルベース、ウッドベース)」などの弦楽器も、この曲には欠かせません。

下記は素晴らしい弦楽器での「カシミール」演奏動画です。
もはや、ツェッペリンの枠を越え、この楽曲「カシミール」はどんどん進化しています。

日本人楽団の「ヤマト・ストリング・カルテット」による、素晴らしい演奏です…
♪カシミール(弦楽四重奏)【公式】

 

バイオリンは、ロック音楽のための楽器でもあるのは間違いありませんね…
Laurent Bernadacさんの演奏です。
♪カシミール(バイオリン)【公式】

 

演奏もすごいですが、表情もものすごい…
Lucia Micarelliさんの演奏です。
♪カシミール(バイオリン)

 

こちらの女性も、演奏でも、形相でも負けてない…
Chrisbottiさんの演奏です。
♪カシミール(バイオリン)

 

チェロも負けてない…
♪カシミール(チェロ)

 

こちらの女性は何か別の独自の世界に入り込んで…
Maya Beiserさんのチェロ演奏です。
♪カシミール(チェロ)

 

女性二人で息ぴったり…
Du'Orin Celloさんのチェロ演奏です。
♪カシミール(チェロ奏者二人)

 

* * *


下記はレッスン用動画です。

♪カシミール(四重奏 楽譜)

 

♪カシミール(バイオリン・レッスン)

 

♪カシミール(バイオリン・レッスン)

 

♪カシミール(ダブルベース・レッスン)

 

♪カシミール(チェロ・レッスン)

 

* * *

今回は、前編としてここまでにします。

次回コラムは、ギター、ピアノ、キーボードのレッスン動画です。
ジミー・ペイジも講師として登場する…?
他にも、インド楽器での「カシミール」をご紹介しますが、身体と心にビンビン響いてきます。

この楽曲は、インドやカシミールと結びつけたことで大成功したのは間違いないと思います。

* * *

レッド・ツェッペリンの多くの楽曲の中でも、「カシミール」のような多様な進化をとげている曲は、他にはない気がします。
クラシック音楽のような進化を考えると、まだまだその進化は始まったばかりのようにも感じます。
今も昔も、ミュージシャンの心を刺激する楽曲「カシミール」ですね。

テレビ番組「英雄たちの選択」を見ている、楽器演奏をしたことのない歴史ファンの方々…、楽器演奏をやってみますか…?
世の中にいる多くの英雄たちに、選択の時が来た…。

* * *

コラム「音路(17)オンラインでツェッペリン【後編】容赦なしの破壊力」につづく

2021.2.21 天乃みそ汁

Copyright © KEROKEROnet.Co.,Ltd, All rights reserved.

 

にほんブログ村 音楽ブログ 洋楽へ 

 

各コラムで紹介した曲目リストは、「目次」で…

  

あの曲や動画はどこ… 音楽家別作品

 

*今後の予定曲