「ブルーベリーの基礎知識 接木の手法」に続いて、「ブルーベリーの基礎知識 接木挿しの手法」を加筆修正しました。
挿し木で接木苗を作るのを接木挿し(挿し木接ぎ)と言いますが、今回はその挿し穂作りの紹介です。
大量に作るときは接木挿しがお勧めです。
当然のことながら、成長は根がしっかりしている苗を台木に使う接木の方が速いです。
接木挿しの挿し穂
接木挿しして1年後
接木挿しして2年後
1年目は水平方向に枝が出て太さも細く、2年目は垂直方向にいい枝が出ることが多い。
1月下旬に挿し穂を台木下部の切り返しまで行い冷蔵庫野菜室に保管し、3月に用土に挿します。
この方法は、東京農業大学石川一憲先生、馬場正先生の論文「ブルーベリーの挿し木接ぎにおける台木系統・接木時期の違いが活着、発根及び生育に及ぼす影響」を参考にしました。
この論文では、
1月20日、2月20日、3月20日に台木と接穂を接合し、作った挿し穂を冷蔵庫に保管し、3月25日に同時に挿し比較しました。
台木の基部(下部)の切り返しも、接合時行うものと、挿す日(3月25日)に行ってみて違いを検証しました。
結果は、接合時期が早いほど萌芽がはやく、1次伸長停止時期はほぼ同じことから、接合が早いほど新梢が成長する期間が長いので伸長には有利であり、台木の切り返しも早く行ったほうがカルス発生量が多かった。
論文の摘要では1月台木と接穂を接合し、台木の切り返しまで行い貯蔵することにより活着率を高めると述べています。
挿し穂作りです。
1、穂木
穂木の芽の下を1cmくらいの長さで、その反対側もV字に小刀で同じくらいの長さにカット。
穂木は芽が立っているようなものを選んで使い、芽の上を剪定バサミで切る。
穂木の芽の数ですが、フクベリーの福田俊さんや石川先生の論文は1芽です。
自分も福田さんに教えてもらったので1芽でやっていました。
最近接木挿しはやっていないんですが、今だったら「ブルーベリーの基礎知識 接木の手法」で紹介した2芽もやってみたいですね。
穂木
2、台木
台木はラビットアイを使うのですが、ホームベルがいいという声を多く聞きます。
自分はホームベル以外にも、地植えでいい枝が入手しやすいティフブルーやオースチンも使っています。
福田さんはたくさん手に入るので台木はフクベリーです。
台木の長さは10cmくらいがいいです。
福田さんによると、5cmもテストしたが、10cmがお勧めとのことです。
養分量の関係でしょうか。
台木
3、台木の芽を全てそぎ落とす。
台木の芽は全て取りますが、穂作りの途中で台木の上下が分からなくなる時があります。
数種類の接木挿しを作る時は色違いのテープを台木に貼るので、その位置で上下を判別します。
下部の芽を残し、最後に台木下部をV字に切る段階で取る方法もお勧めです。
台木は芽を全てそぎ落とす
4、台木に切り込みを入れる
台木固定器を使い、接木小刀で枝先側に1cm位切り込みを入れます。
台木固定器を使うとしっかり持て、手を切る心配がありません。
接木小刀は刃が薄くて、使いやすいです。
上下に刃をゆするように切り込んでいきます。
5、接合
台木、穂木片側のそれぞれの形成層を合わせる。両者の太さが同じで両側があわせられれば言うことなし。
穂木は出来るだけしっかり奥までさし込んだ方が形成層の接地面積が大きくなり成功率が上がる。
6、ニューメデールで巻く
テープは5cm位に切ったものを使う。
台木と接穂の接合部は動かないように下から4~5重にテープを伸ばしながらしっかり巻き、残りのテープで接穂の部分へ伸ばしながら軽く巻き上げる。
芽の部分は1〜2重が良く、3重以上になると発芽が遅れる。
テープを断面が乾かないように接穂の頭まで完全に密封するように巻きつけるのがポイント。
下からテープを巻き始める
テープを巻き終わる
芽はニューメデールを破って出てきます。
テープ自体は自然になくなりますので、将来テープを外したりは必要なく、このまま放っておいてOKです。
7、台木の基部を切り返す
台木の基部(下部)をV字に、片側は長めに切り返す。
1本づつ、接穂作り、台木切り込み、接合、台木切り返しまで行い、次の挿し穂作りにとりかかります。
挿し穂完成
8、保管
ビニール袋に入れ、密封し、上下を間違えないように冷蔵庫野菜室に立てて保管。
石川先生の論文を参考に、挿し穂の基部を水分を含ませたミズゴケで巻いてビニール袋に入れました。
3月に挿します。
ここ2シーズン、苗を増やしても保管場所に困るので挿し木や接木挿しはやっていませんが、挿し木に比べ技術的に難易度が高い接木挿しは面白いです。
さすがに挿し木のように100%近くとはいきませんが、コツをつかめば80%くらいの活着率は期待できます。
愛好家の方も一度やってみてはいかがでしょうか。