ミュージカル「マリー・キュリー」を観ました。

天王洲アイル銀河劇場にて。

りんかい線の電車が遅延していて大変でした。

ちょっと早めに出たものの、着いたのはギリギリ・・・

この辺り、有明とかお台場とか不便だし、劇場以外はうろうろできるところがないので注意が必要です。

 

「キュリー夫人」は幼い頃、偉人伝で何度も読みました。

小学校時代は偉人伝を読むのが大好きで、子供用に書かれていた「偉人伝シリーズ」は大体読んでました。

しかし、圧倒的に男性が多く、女性は「キュリー夫人」、「ナイチンゲール」「卑弥呼」くらいでしょうか。

高学年くらいになってから「与謝野晶子」なども読みましたが。

 

女性は能力があっても表に出るのを「社会が許さなかった」(今でも?)ということを知ったのは大分後です。

 

そう考えるとキュリー夫人はただでさえ男社会の「科学の世界」で世に出たのだからすごい。

今でもかなり男性社会なのではなかろうか。

私の学生の頃でも「女子は文系」みたいな括りがうっすらありました。

まあ、女子校だったんでそこまで感じずに済んだかもですが。

 

しかし、偉人伝を何回も読んだ私でも「どんな人だったのか?」というようなことはあんまり記憶にないです。

「貧困の中でもあきらめずに頑張った努力の人」くらいのイメージでしょうか。

偉人伝ではことさら「女性」だから差別を受けた、みたいなところはあまり書かれてなかったように思います。

そして、夫のピエールさんがものすごく理解のある人だった、というところ。

当時にもこういう人がいたんだ、ということはすごく励まされます。

 

ミュージカルでは最初の方の場面で「あ、この人(マリー)は生粋の元素オタクなんだ・・・」察し、ということが分かります。

早口で元素の素晴らしさなどをまくしたてる感じ。

「女性の地位の向上」とかそれほど考えてなくて、ソルボンヌ大学に行ったのも、ただただ「もっと恵まれた環境」で研究がしたかったんだろうなあ、と。

大学で人種、性別でものすごい差別を受けたことが描かれてますが、「差別に打ち勝つぞ」というより「いいから、好きなことやらせろ」みたいなパワーがすごい。

「私が誰かではなく、私が何をしたかを見てください」というセリフ。

良いですね!

 

因みに本日のキャストです(主要キャストはダブルキャスト)

星風まどかさん、かなり太い声でも歌っておられて説得力がありました。

 

アンヌ役の石田ニコルさん、放射線学科に入学されてたんですね。

このミュージカルに出ることを宿命づけられているようです。

この方のマリー役も見てみたいです。

 

このミュージカルでは「科学の功罪」に向き合おうとしているところがすごい挑戦的でいいなあ、と感じ入りました。

ラジウムの放射線は癌治療に役立つ一方で(私もお世話になりました。本当に痛みもなく一瞬で終わる)、放射線障害、原子兵器にも繋がります。

当時はまだ放射線の悪影響が知られておらず、「ラジウム水」「化粧品」などが販売されていたそうです。

また、ミュージカルに出てくるように、ラジウム塗料を使った工場で多くの労働者が被ばくしてしまったこともあったとのこと。

 

ラジウムの悪影響をひた隠しにしようとする資本家。

真実を突き止めようとするマリーや医者。

 

確かに、悪影響の方が世に広まってしまったら、ラジウムもなかったことにされ癌も未だに「不治の病」だったかもしれません。いや、結局労働者たちを犠牲にした資本家を擁護する気は全然起きないですが。

 

マリー、ピエールが自らの体を使って命がけで実験する覚悟は泣けるものがありました。

結局、マリー自身も放射線被ばくが原因の病気で亡くなっているとのこと。

 

しかし、自分の発見したものによって、自分の友達を含む多くの人が被害にあってしまったことはマリーはどんな思いだったのか。

そして、その悲しみを乗り越えて研究を続ける覚悟、「研究者」としてあり続ける覚悟、そういったところがもう少し描かれていればな、という気はしました。

 

また、研究に没頭するあまりほったらかしにしてた娘との確執と和解。

中盤に全然出てこなかったので、最後ちょっと唐突感がありました。

 

ラジウムのダンスや実験用マウスたちが踊るのはあまりオシャレじゃないなあ、と思いましたが・・・

ネズミの尻尾とかもうちょっと・・・なあ・・・

 

実業家ルーベンの手下(山口将太朗さん)がラジウムが広がる象徴?(うろ覚え)として急に現代舞踊的なダンスを踊りだすのはすごいかっこよかったです。

この方、ダンサーなんですね。

ずっと、ルーベンの後を不気味についていただけなのに、ふわっと踊りだした時は「おお!」となりました。

ダンスシーンもこういう抽象的な感じにすれば良かったのに。

 

見ごたえのある作品だったのは間違いないです。

あらためて子供の頃に尊敬してやまなかった「キュリー夫人」と向き合う時間ができたのは良かったです。

ただただ真っすぐ信じる道に向かって情熱を燃やす、そういう生き方をしたいものです。