琴美は戸惑っていた

 

先ほどほんの少しだけ微睡んだ

 

塾から帰って遅めの夕食終えて

 

わたしの部屋のベッドにダイブして

 

あっと言う間に冬のあのカシミヤみたいな

 

なんか寒い春 

 

籠の中のハリネズミ

 

みたいな なんか

 

手触りの夜の時間に沈み込んでた

 

気が付くと部屋の天井をぼうっと見上げてて

 

曇った意識が戻るのに

 

どれくらい掛かったかな?

 

今のわたしを認識し始めると

 

慌てて飛び起きベッドの右脇にある机に行って

 

取り敢えず椅子に座って机に突っ伏し

 

今の自分を思い出そうと無理やり思い出そうと

 

もがいてみる

 

視界が次第に鮮明になり始めると

 

未だ白紙のノートが眼前に広がってる

 

参考書の虫の羅列みたいな文字

 

何か全然さらさらちらっとも見る気がしない

 

つい

 

ドラえもんの引き出しに

 

入ってる画面に漫画を取り出す

 

まるで温室みたいな座敷牢

 

わたしは、でくの坊のサボテンか?

 

普段ならちょっと気まずくて

 

目をそらしたくなるそんな本なんだけど

 

どうしてかな?

 

その時はついページを開く

 

思わず赤面しそうな

 

画面が眼に飛び込んじゃって

 

何故かその時は

 

目が離せなくて

 

思わず脳みそ溶けそうな

 

そんな感触に入っちゃった

 

そう

 

魔が差したとしか言えないような

 

突拍子もない自分に激しくうろたえる

 

でもね

 

何か体が熱くて眼も潤んじゃって

 

指先だけが妙に冷たくて

 

その凍えた指先だけが、生々しくて

 

何かそんな風邪を引いたみたいな感覚に

 

少しためらい少しだけ安堵したりして

 

わたしはわたしの

 

心と体をなだめて安心させたくなった

 

みたい

 

小さな鏡を机の上に置いてみる

 

小さな鏡に鏡の中に

 

わたしは自身を入れてみる

 

わたしの頬すこし赤いや

 

両眼も薄っすらと充血してるみたい

 

鏡の中の世界が手招きしてる

 

いいよね

 

口実かな?

 

いいよね

 

少しだけ、少しぐらい、いいよね今日ぐらい

 

明日からはずっと忙しく

 

時間に追い立てられるんだろうし

 

いいよね

 

今だけ目覚めて夢を見ても

 

わたしは机の小さな鏡に向かって

 

鏡の中に入っていく

 

ことにする

 

わたしはわたしをそっと抱きしめる

 

もてあそぶ手のひら

 

指先に次第に力が込められる

 

抱きしめている

 

わたしが

 

段々

 

ソフトクリームみたいに溶けてくようだな

 

お口の中でソフトクリームが溶けていく

 

喉を冷ややかに落ちていく

 

わたしの時間は案外と甘いんだな

 

何て思ったりして

 

儚い時間しか

 

生きられないソフトクリーム人生が

 

舌に纏わり付く

 

それが

 

思考力ゼロになるみたい

 

に夢心地に誘ってくれてる

 

今だけだから

 

今しか見れない夢に束の間ためらい忘れて

 

淫する事にする

 

目の前の視界がぼやける中に進んで入る

 

今だけだから、琴美は思う。


そうだ

 

きょうはエイプリルフールだったね。