「あのね、佐和子の事なんだけれどさ、
12月の27日までは、仕事を休めそうも無いんだって。
だからね、こっちに来るのは、28日に成るんだって!」
「うん、それでどうしたの?」
「だからさ~、前にも言ったでしょ!
佐和子とは、久し振りだから、温泉旅行に行きたいって」
「うん、イイんじゃ無いの?
佐和子さんも、一人で頑張って来たんだからさ」
「あのね~、東京に来るのが、12月28日に成るのなら、
まさか、その日に出発する訳には、行かないよね。
だとしたら早くても、12月29日の出発に成るでしょ。
それってさ、完全に、年末年始料金に成っちゃうじゃない?
ねえ、のり君は、どう思う?」
「ああ、そんな事か?
今の時期なら、そんなに慌てる事は無いんじゃ無いの?」
「何よ、それ?
どう言う事なの?」
「まあ、人それぞれなんだけれどね。
ポイントは、2点なんだと思うよ」
「んっ?}
「1点目はさ、小さな温泉旅館が良いのか?
大きな旅館でも、良いのかって、点だよね。
オレはさ、温泉旅館って、小さなところが好きなんだ。
だから、いつも小さな旅館に泊まっている。
小さな旅館に、何度も泊まっていると、
自然と、顔見知りに成るでしょ?
そう成るとさ、何かと融通が効くんだよね。
そう言う事を期待しているのかどうかって事が最初の問題」
「えっ、そうなの?」
「温泉好きの人間って、オレみたいなのが多いんだよね。
だから、小さな旅館だったら、もう、かなり難しいと思う。
でも、大型の旅館だったら、まだ全然、大丈夫だよ。
年末でも年始でも、まだ十分、取れると思うよ」
「へ~、そう言うモノなんだ?
で、2点目のポイントって、何なの?」
「2点目のポイントは、料理の内容なんだよね。
せっかく高いお金を払って、旅館に泊まるんだから、
お料理に期待するのは、誰でも一緒だと思うんだ。
宿に寄って、得意料理って違うでしょ?
年末年始に限っては、日本料理が断然人気に成るの。
フランス料理だとか、イタリア料理が自慢の宿は、
年末年始は、逆に、なかなか客が付かなく成る。
日本料理が良いのか、西洋料理でも良いのか?
って言うところが、第2のポイントなんだよ」
「へ~、そうなんだ?
わたし、全然、知らなかったよ」
「フレンチや、イタリアンが好きなら、
逆に、普段よりも、安く上がる事も有るくらいだよ。
これ、けっこう重要な点だと思うんだよね。
まあ、いずれにしても、
今からでも、年末年始の宿は、予約出来るよ。
何だったら、12月29日の宿を予約して置こうか?」
「う~ん、ちょっと待って。
ちょっとさ、考えて見るからさ…」
「お金の事なら、オレが払うから、心配しなくてもイイよ」
「う~ん、それも有るんだけれどさ、
ちょっと、予想して居なかった事を聞いちゃったからさ、
自分の中で、整理したいのよ」
「解かった。
由香さんの気持ちも、佐和子さんの気持ちも、
ちゃんと、考えてね」
「…あのさ、のり君の買ってくれた石油ストーブ、凄くイイわ。
暖かいしさ、綺麗だしさ、わたし大好きだよ。
凄く、ありがたいと思っています」
「ねえ、イイでしょ!
オレもさ、アレ好きなんだよね」
「のり君、また後で、電話するかも知れない。
イイよね?」
「電話したく成ったら、いつでも電話して来て」
「じゃあさ、いったん切るね…」
「由香さん、元気出して!
愛してるよ」